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ファイブ・セコンド(Five Seconds)  作者: 中矢良一
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第1話「追突炎上」

「火! 火が出てる、ぶつかって燃えてる!」


 浅田一樹が叫んだ。


「何だって?」


 ハンドルを握っていた藤本真一が、前方にあるかもしれない火の手か事故らしい様子を確認するため、シートに貼り付いていた背中を起こし、そのハンドルに顎を乗せるようにした。


「何も無いようだが?」


「違うって・・・今ぶつかって火が出たの見たろ?もう通り過ぎちまった」

 藤本は再び背中を元の位置に戻してルームミラーに眼をやった。


「おお! 燃えてる燃えてる。事故だな」


 車は見かけが360ccの軽自動車、しかしエンジンは夢の無限回転エンジンといわれるミラクルローテリー。藤本はその開発責任者であり、燃費効率テストで東名高速道路を、沼津から東京に向かって平均速度80キロを遵守しながら、備え付けられた数多くの計器類の動きに終始目を凝らしていた。


 真一は幼い頃からカメラ、時計など分解・組み立ての得意な男で、浅田一樹とは生まれた時から隣同士、高校までは同じ学校に通い、その後一樹は私大の法学部、真一は国立の工学部に進んだが就職は同じ会社を選んだ。


 真一の家は時計屋。姉が二人いて時計屋も繁盛していた。



 一樹は営業、真一はメカニックとして同じ会社に就職したのだが、酒の席になると、


「・・・しかしなあ、勤めまでも同じなんてな~・・・・ついてねえ」


 一樹のその一言でお開きになるのだった。が、無二の親友である。



 車は左にウインカーを出し、徐々に速度を落としながら路側帯に入って止まった。


 その間、真一は計器の秒針をちらちらと見ていたが、車を止めると、


「12秒ぴったりか・・・・・・」


 と独り言を言った。


 一樹は車から飛び出し、現場に向けて走り始めた。


 真一は、一樹が叫んでから、車が止まるまでの正確な時間を手帳に書きとめた。



 現場では事故車2台から激しく火の手が上がっていたが、


 幸い運転手や同乗者は車からそれぞれ離れて無事のようだった。


 真一も車を降りて現場に向かった。


 その途中、考えていた。


(オレには見えなかった・・・・・ぶつかった車も火も)


 区間ごとにある非常電話から、真一は炎上事故を公団に知らせた。

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