5.
どうやら、先輩を好きになってしまったらしい。
そう気がついたのは、いつだったのかな?
いつになく幸せそうな先輩の視線の先を見ると、そこにはいつも同じ、わたしの親友陽菜の笑顔があった。
それが、たとえ、恋人の叶太くんによってもたらされた笑顔でも、先輩はかまわないらしい。
陽菜を自分のものにしたいとは思わないのだろうか?
「先輩、なんで、叶太くんと陽菜の仲を取り持ったんですか?」
先輩の横顔を見ていると不思議になって、気がつくと、そう聞いていた。
図書館のカウンター当番。その日は珍しく、先輩と一緒だった。
先輩は細い目を大きく見開いた。
「……なんでって、寺本さんが聞くかな?」
呆れたような先輩の声。
そりゃそうだ。
だって、先輩を頼って、先輩に二人の仲を取り持たせたのは、他ならぬわたしだったのだから。
「うーん。だって、先輩、まだ陽菜のこと、好きでしょう?」
先輩、絶句。
あ。そうか。
そんな話、したことないんだ。
先輩は、わたしが先輩の陽菜への恋心に気づいているとは、知らないはずだ。
絶句する先輩に頭を下げた。
「すみません! 失言でした」
そう言うと、先輩はぷっと吹き出した。
「ホント、寺本さんは面白いね」




