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12年目の恋物語  作者: 真矢すみれ
番外編2 規格外の恋物語
33/38

4.

 先輩が陽菜を好きなのだと気づいた時、わたしにとって、先輩の存在は、特別でも何でもなかった。

 だから、幼なじみの叶太かなたくんとの関係がこじれて、陽菜が悩んでいた時にも、二人を結びつけるために先輩に手を貸してもらうことに、何の葛藤もなかった。

 先輩は陽菜のために、陽菜には一言も想いを告げないまま叶太くんに手を貸し、二人を恋人同士に仕立て上げた。

 潔い人だなと思った。

 胡散臭いなんて思って、何考えてるか分からないなんて思って、ごめんなさいって思った。

 でも相変わらず、陽菜への気持ち以外には何も読めないから、やっぱり何考えてるか分からない人だった。



「先輩って、何考えて生きてるんですか?」

 試験期間で部活が休みのその日、たまたま駅で一緒になった。

 端正なその顔を見ていて、思わず口をついて出た言葉。

 唐突に飛び出した、あまりに率直なその問いに、さすがの先輩も面食らったらしい。

 先輩は爆笑した。

「寺本さんは、本当に面白いよね!」

 本気で笑う先輩の顔を見て、そう言えば、わたしは、いつもこんな風に笑われている気がする……って思った。

「で? 何考えてるんですか?」

「しかも、引かない。押しも強い」

「先輩?」

「キミこそ、何を考えているの?」

「え? わたしですか? 今は、先輩が何を考えて生きてるんだろうって考えてますよ?」

 当たり前じゃないですかと言うと、先輩はこらえきれないという様子でお腹を抱えて笑い出した。

「ちょっと、先輩、失礼ですよ」

 先輩に笑われる。

 先輩がこの素の笑顔を見せることはほとんどないと気がついたのは、いつだっただろう?



 包み込むような優しい微笑は、陽菜のために。

 この爆笑は、わたしのために。


 なんか違うと思いつつも、気がついたら、わたしの目はいつも先輩を追っていた。

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