3.
先輩と初めて会ったのは、高等部に上がって、くじで負けてなった図書委員の初会合。
隣に座った先輩は文句なしに頭が良さそうで、眼鏡の向こうの切れ長の目は一見冷酷そうに見えた。
だけど、間違いなく、この人、人気あるだろうなってくらい整った顔をしていて、文句なしにカッコよかった。
わたしのぶしつけな視線を感じたのか、先輩はわたしの方を見た。
「あ、すみません!! あんまり先輩がカッコいいんで、思わず見とれてました」
超絶率直な言いわけをしたら、先輩は目を丸くして、それからくすりと笑った。
笑うと、表情が一気に軟らかくなる。
ああ、本当にカッコいい。
この笑顔に夢中になる女の子、たくさんいるだろうな。そう思った。
「はじめまして。2の1の羽鳥です」
「あ! はじめまして。1の8の寺本志穂です!」
いかにも体育会系って感じで気合いを入れてフルネームを名乗ると、先輩はまた笑った。
感じがいい人だと思いながらも、どこか目の奥が、本気で笑っていない気がして、得体が知れない人だとも思った。
「1の8か。……図書委員は、牧村さんだと思ってたよ」
先輩が言った。
……牧村さん?
1の8には、牧村さんは一人しかいない。
牧村陽菜。わたしの親友。
わたしはどうやら怪訝な顔をしていたらしい。
先輩は笑顔で付け足した。
「中等部で、一緒に図書委員をしていたことがあってね」
本好き同士、かなり気があっていたらしい。
残念ながら、わたしは本などまるで読まない。くじで負けて図書委員になったと言うと、先輩は笑った。
そして、くじ引きをしたその日、陽菜が体調を崩して休みだったというと、残念だったなと言った。
そんな、どこにでもありそうなわたしたちの出会い。
その時から、もうわたしと先輩の間には、陽菜の存在があった。




