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12年目の恋物語  作者: 真矢すみれ
番外編2 規格外の恋物語
30/38

1.

 自分の中のほのかな恋心に、気がついた日。

 わたしは、先輩の姿を思い浮かべながら首をひねった。

 なんで、わざわざ、まったく自分の方を見ていない人を好きになったんだろう、わたし。


 まさか、この人を好きになるとは思いもしなかったから……。

 想像すらしたことがなかったから、自分の気持ちに気がついて、わたしはちょっと混乱していた。



 去年、中三の夏。

 初めて男の子から告白された。

 夏の大会で負けてこれで部活は引退だって……、悔しくて泣いたあの日。

 バスケ部の男子から、告白された。


 みんなで泣いただけじゃスッキリできなくて、体育館の外の水飲み場で、顔を洗うフリをして、涙を洗い流そうとしていた、あの時。

 男バスみんなで応援に来てくれていた、その内の一人。結局、中学三年間で、一度も同じクラスにならなかった、男の子。

 同じバスケ部だったから、部活で話すことはあっても、色っぽい雰囲気になんて、一度だって、なったことはなかった。

「残念だったな」

「……うん」

 涙を見られたくなかった。

 だから、長々と、顔を洗い続けた。

 心の中で、早くどっか、行ってよって、ひそかに思いながら。

 まさか、この後に、あんな台詞が飛び出すなんて、思ってもいなかった。

 流れる水音をBGMに、背中ごしに聞こえた言葉。

「ずっと、好きだった」

 その言葉を耳にして、わたしの涙は一瞬で止まった。

「……え?」

 いきなりの事態に、言葉をなくすほどに驚いた。

 失礼ながら、彼のこと、まったく、そんな目で見ていなくて。

「ずっと、寺本のこと、見てた」

 でも、うれしいとか思うよりも、


 今、なに言ってんの!?

 そんな時じゃないでしょう?


 って、そんな風に思ってた。

 わたしの頭の中は、負け試合の中身ばかりが、渦巻いていた。

 あの時、こうすればよかった、もっと、ああすればよかった……って。

 だから、驚いた後に来たのは、嬉しさではなく、失礼ながら鬱陶しさ。

 ……で、

「ありがとう。でも、ごめん。今は、考えられない」

 そう、即答していた。

 水に濡れた顔をタオルで拭きながらした、色気のかけらもない答え。


 子どもだったなって、思う。

 でもあれから、少しだけわたし、女の子になったと思う。


 自分が女の子なんだって、あの時から、ようやく意識しはじめた。

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