エピローグ
月曜日のお昼休み。
すっかり、定着した、しーちゃんたちとのランチタイムに、カナが乗り込んできた。
「今日、一緒に食べていい?」
ってカナが言うと、みんな、「どーぞ、どーぞ」って大喜びで席を作ってくれた。
……わたしたち、珍獣じゃないんだけど。
しーちゃんたちはともかく、校内ではわりとそんな風に扱われている気がする。
ただでさえ、そんな視線が痛いのに、お弁当を食べながらカナは言った。
「あのね。ハルのこと、あんまりからかわないで」
「ん? なに?」
しーちゃんが、不思議そうな顔でカナのことを見た。
カナが土曜日のことを話し出して、三人ともが興味津々の様子で耳を傾けた。
わたしが電車に乗ったことがなかったことを気にして……って、そんなことをカナが言い出す。
……やだ、カナ。
恥ずかしいよ。そんな話、しないで。
カナの腕をツンツンと突いたけど、カナは無視。
結局、電車の話だけじゃなくて、カナは亜矢ちゃん、梨乃ちゃんに聞かれるまま、土曜日のことをぜんぶ話してしまった。
話を最後まで聞いてから、しーちゃんはぼそりと言った。
「で、なに? のろけ?」
「え!? そうじゃなくて!」
だから、ハルのことからかうのやめてって……とか、カナは慌てて言ったけど、誰もそんなこと聞いてなくて、しーちゃんも、梨乃ちゃんも、亜矢ちゃんもにやにや笑って、カナを……わたしたちを見ていた。
「叶太くん、過保護!!」
「いや、でも」
「いーよ、じゃあ、陽菜、今度、わたしともデートしよ!」
全然、脈絡なく飛び出したしーちゃんの言葉に、思わず、
「うん!」
って答えたら、カナが驚いた顔をして慌てて言った。
「それ!! 行くなら、オレも連れてって!!」
しーちゃんも梨乃ちゃんも亜矢ちゃんも、カナの反応に大笑いした。
わたしが「もう」って、赤くなってうつむくと、カナが小声で「ごめん」って言いながら、わたしの手をそっとにぎった。
それを見たしーちゃんたちがまた何か言う。
7月の空気は暖かくてとても幸せで、恥ずかしいって思っていたはずが、いつしか、わたしはクスクス笑い出していた。
《 完 》




