黒の章 旅立ち
(くそ。どうしてこうなった。)
対面する男4人から距離をとり剣を構える。
女神の教会の総本山がある隣国アーノルドへ向かっている途中だった。
城から紹介された業者の馬車に乗り2日。
アーノルドに荷を運ぶ馬車に同乗させてもらっていた。
同乗していたのは馬車の持ち主の業者が2名と冒険者風の男が2人。
途中抜けるのに3日ほどかかるという森に入ってすぐのことだった。
ー(馬車が停まった?)
「信さん。今日はこの辺で休もうと思います。」
体格のいい黒い髭をはやした業者のおじさんが顔を出す。
「もう大分、日が落ちてますね。もうすぐ真っ暗だ。じゃあ、自分のテントを張ります。」
それぞれ野営の準備を始める。業者のおじさん達は馬車で寝ている。
自分も寝ていいと言われたがせっかく購入したテントがあるので使いたい。
プライベートな空間も欲しい。
テントを張り終えると冒険者の2人が火を起こし終わっていた。
「カツさん、ネルさん、ありがとうございます。いつも火の番を任せて申し訳ありません。」
「うちらは慣れてんだから気にすんな。」
2人は長年コンビを組んでる冒険者らしい。
主に護衛等の依頼を受け街から街へ移動しているとのことだ。
「では、食事は我々に任せて下さい。」
業者のおじさんの作ったシチューと黒パンを晩ご飯に頂き、みんな明日に備えて寝床につく。
ネルさんだけは見張りとしてカツさんとの交代の時間まで起きている。
(自分だけ何もしてないな。)
お城からの好意で旅費をかなり多めに業者に渡しているらしく、旅の間の雑務の心配はないとのこと。
かといって、何から何まで任せるのはどこか気が疲れる。
ーいつのまにか眠りに落ちていたがふと目が覚めた。
(なんだろう?なにか違和感がある。)
なにかいる。獣だろうか。護衛の二人からの合図がないということは近くではないんだろう。
実際近くに何か居る気配はない。
でも、何か居る。
その時だった。
金属のすれる音。
(見張りの交代の時間だろうか?)
「ウインドニードル!」
叫びと同時にテントが切り裂かれる。
幾重もの真空の刃が襲いかかって来る。
(夜襲か!?)
咄嗟に反発の呪文を放つも十分な魔力を込められず自分がはじき飛ばされる。
テントが切り裂かれ、そのまま外に放り出される。
(他の人達は。。。)
剣を抜き相手を捜す。
すぐ離れた所に2人の男が立ち構える。
「ネルさん、カツさん?」
剣を構え立つ2人がそこに居た。
「たく、一撃で死ねば苦しまずに済むのに。なあ?今からでもおとなしく死んどけや?苦しまずに殺してやるから。俺たちも楽だ。そのほうがいいだろ?」
「どういうことですか?」
後ろに後ずさりながら質問する。
(強盗だったのか?)
すると、後ろにも気配があることに気づく。
警戒品が振り向くとそこには業者の2人も居た。剣を構え。
(グルか。なんで自分を?だれに頼まれた?城か?でも、なんで・・・)
「わからねえって顔してるな。まあ、金を貰ってるからな。仕事しなくちゃならねえ。すまんな。」
「城からの依頼なんですか?でも、なんで・・・」
「わからないんですか?ふむ、話に聞いていた通りですね。」
もう一人の業者、細身の男が前に踏み出し話しかけて来る。
右手には剣。よく見ると王国の近衛兵が使っていた剣だ。
「あなたは加護無しがどれだけ不運をまき散らす存在か知ってますか?それとも知らずに旅に出ようとしたのですか?」
加護無し。
犯罪者と思われてもしかたないこと。
そして、黒の歌姫の逸話。
「黒の歌姫の話ですか?でも、今の時代にはすでにいるんでしょう?」
「ええ、歴代でも最悪と言われる歌姫が。何人殺したのかわかりませんよ。しかも教会の人間を狙って殺している。罪深い存在です。確かに歌姫は一時期に1人しか確認されていません。だからといって安心できる要素は?加護を与えられていない、女神から見放された人間を許す根拠は?女神に愛されていない。不安の芽を摘んでおいて損はないでしょう?」
想像はしていた。でも、こんなにすぐ殺しにくるのは想定してなかった。そもそも自分みたいな人間がこんなに警戒されるなんて。
甘かった。自分たちの召喚により現れた人間を処刑する。風聞がわるくてしないだろうと高をくくっていた。城を出ればどうとでもなる。この世界には野党も魔物も腐る程いるんだ。
女神の祝福をうけることがなかった異分子を放置する理由なんてないんだ。
それだけ女神という存在は人類に取って大きい神様のようなものなのだろう。
4対1。こういう時の為の護身術だとしてもたかだか1ヶ月の訓練をした付け焼き刃だ。
勝てるわけがない。
(逃げるか?でも、どうやって?)
悩んでる暇はなかった。
カツが間合いを詰め切り込んで来る。
1撃をさけー反発ーを発動し攻撃に備え、反撃を試みる。
上段からの一撃を軽く避けられ、すぐさま反撃の刃が襲いかかる。
ー反発ーとぶつかり合いカツの剣がはじき飛ばされ隙ができる。
しかしすぐにネルが近づきけり飛ばされる。
「ぐっ」
「変わった魔法を使うな兄ちゃん。なんだ?シールド系の呪文であんなのあったか?それに無詠唱か?」
「彼は原始魔法を使うそうですよ。燃費のいい魔法じゃありません。すぐに魔力も果てます。」
そう燃費が悪い一日10回も使えば空っぽになる。
ただこの10回という数字は想像を超えた回数らしい。
それほど燃費が悪い。
(勝機があるとすれば油断と向こうが魔法の回数を少なく見積もってくれた場合か。)
「!?」
気づくと足に激痛が走る。
投げナイフ。
業者のおっさんだ。
(油断した。立ち止まったらダメだったんだ。)
走って逃げることはますます不可能。
「く、衝波!」
衝撃の波が業者の振りをしていた二人をおそう。
髭顔の男は衝撃に直撃し転倒するが細身の男は跳んで回避しこちらに迫る。
(な!?3メートル近く跳んでる?)
剣閃が走る。
持っていた剣ははじき跳ばされる。
「さて、それでは死んで下さい。」
(死ぬ?こんなところで死ぬのか?帰れない?
いきなり知らない世界に呼び出されて、なにがなんだかわからないうちに暗殺されるってなんなんだよ。理不尽だろ。)
男の剣に切られると思った瞬間、辺りに違和感を感じる。
他の4人も同様だ。
威圧感。
だれも動くことが出来ない。
「だれだこんな夜中にドタバタとうるさい。」
そこに1人の女性がいた。
真っ白な髪。
薄い白い肌布を纏い、剣を持った女性。
月明かりしかないのでよく見えないが淡く紫がかって光る瞳。
「死んで詫びてくれるか?」
その笑顔は綺麗だった。
あまり細かく書かない方がいいと思い書いていますが、もう少し細かい描写や心理描写もあった方が良いなど意見やアドバイス頂けたら嬉しいです。