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国境越え1

遠くで鳥が鳴いてる。カーテンの隙間から暖かい日差しがチラチラと入り込む。

今日はいい天気になりそうだ。

ベッドの上にユキナとマナはもういない。

少し眠りすぎてしまったのかもしれない。


「シン起きた?フェイお腹空いたから起きていい?」


「ああ、ごめん。起きるの待ってくれてたんだ。」


フェイが人型に変化し部屋から出ていく。


準備を終え、宿の食堂へ行くと朝の食事で大勢が集まり賑わっている。


「シンさんこっちです。」


ユキナがこちらに向け手を振っている。

席に着くとマナとフェイがおいしそうに朝食の卵とパンに噛り付いていた。

ユキナに差し出された皿を受け取り自分も食事を始める。


「ここの卵は朝採れたてを使ってるそうでとてもおいしいですよ。」


大きな目を見開き、唇へとフォークを運ぶ。

じっと眺めているとユキナと目が合う。

ユキナは恥ずかしそうに顔を赤くしてしまう。

失礼なことをしたと思いながら目をそらし自分の食事を勧める。


(食事してるところ見つめられたら嫌だわな。)


「先ほど宿の主に聞いた話なんですが山道に近頃魔物が多数みられるそうです。」


マナがため息を吐きながらめんどくさそうな顔をしている。


「時期的にウォーウルフの産卵期ですね。でも、生息地はこの辺じゃなかったはずですよね?」


「ええ。ですが、最近になってこの辺に群れが引っ越してきたみたいです。まあ、私たちなら問題ないと思いますけど気を付けていきましょう。」


「あの、すみません・・・。」


声のほうを見るとひとりの巡礼者の恰好をした女性がいる。


「皆さんは山を越える予定なんですか?」


女性がフードを取りながら話す。

フードを取ると長い赤い髪が現れる。

小さな端正な顔立ちはまだ幼くも見える。


「はい。荷物を整えたらすぐに出発する予定ですけど。」


「もしよろしければ山を越えるまで同行させて戴けませんでしょうか?ウォーウルフの群れの駆除隊が到着するまで数日かかるそうなんですが、早くイシュタルトのほうへ向かいたくて。護衛の代金も幾らかはあるので頼めませんか?」


女性の一人旅のようだが足止めを食らって困っていたのだろうか?

切実な目をして訴えかけてくる。


「特に問題ありませんが、皆さんよろしいですか?」


ユキナが皆に問う。

特に問題はない。

女神の信徒には思うところはあるが個人に対してではないし。

討伐隊の到着するまでの数日が待てないということは急ぐ理由もあるのだろうし、こちらは元々、今日行くつもりだった。同行者が増えて困ることもない。


「フェイ、一人増えるけど大丈夫?」


馬車を引くフェイに確認を取る。

一人くらい増えたところで問題ないだろうが馬車の主の許可を取らないわけにはいかない。


「うーん。別にいいけど・・・。」


フェイにしては珍しく歯切れが悪い。

フェイが後ろに隠れる。

人懐こいフェイにしては珍しい。

だが、特に断ってほしいわけでもないようだし問題ないのだろう。


「では、1時間ほどで出発するので準備ができたら村の山道側の入り口で会いましょう。」


「ありがとうございます。本当に助かりました。私、ロゼリアと申します。道中、迷惑と思いますがよろしくお願いします。」


赤髪を揺らしながら女性がほほ笑む。

その微笑みに誰かを思い出しそうになる。

誰かに似ている。

誰だっただろうか?

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