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序章 迷子5

あれから1ヶ月たった。

その間にしていたことはこの世界についての勉強と剣と魔法の授業。

ロマン溢れる話だ。

才能があれば。


分かったことが幾つかある。

やはり自分には加護どころか何も才能がなかった。

不思議なことに基本的な身体能力、まあ、筋力的なものは多少前よりも強くなっている。

でも、それも4人に比べたら微々たるもの。

比べ物にもならない。

腕相撲で女子高生に惨敗するのは涙が込み上げて来る。


そして剣も魔法も才能がなかった。

魔法に関しては魔力そのものはあるようだが、肝心の魔法の構築が全く出来ない。

この世界で魔法を使うには幾つかの流派があるようだが、その中でも主流なのが詠唱魔法、精霊魔法だ。

詠唱魔法は詠唱により魔法を構築し世界に満ちたマナと混合させて具現するというもの。

精霊魔法はその構築を精霊に魔力を譲渡することにより精霊を通して行うものらしい。


どちらも才能が必須で精霊魔法は精霊とリンクする素質が、詠唱魔法は自分の魔力を外のマナと混合する感覚が分からないといけない。

分からない人には何十年と修行をつまないとわからない感覚のようだ。

どちらも大抵は加護を通して使えるようになるものらしい。

どちらも自分にはできなかった。

この世界の住人ならだれでも魔法が使えるわけではないそうだが、ひとまず自分にはこの2つの魔法は無理だった。魔法を使える人は殆どが関連する何かしらの加護を持っている。火の魔法の素養として火の加護など。


一応、自分にも使える魔法は見つかった。

魔法が理論化される前に生活に役立てる為に使われていた原始魔法。

生活魔法ともよばれているらしい。


前者2つとの違いはこの魔法は自分の魔力のみで発動する。

自分の魔力を練り込み、変質させ発動する。

前者の魔法は自分の魔力を媒介に火の精霊や世界の火のマナを精製することにより放たれる。

後者のこの生活魔法、原始魔法と呼ばれる魔法は己の魔力のみで完結する。

パッと聞くと便利そうにも聞こえるが効率が悪すぎて現在では使う人も使える人も皆無のようだ。


例えば同じ大きさの野球ボールサイズの火球を作ろうとすると詠唱魔法や精霊魔法が1なら原始魔法は20の魔力を消費する。

魔法のレベルが上がればこの差がさらに広がるようだ。

そりゃ使えるならみんな別の方を使うだろう。



ーそして目の前で繰り広げられる格差の世界。

継嗣と有、この二人が模擬戦を現在行っている。


振るわれるたびに空気を切り裂く剣風。

時折、剣先から放たれるすべてを薙ぎ払うかのようなまぶしい光線。

腕を振るい叫べば放たれる巨大な熱風や雷。

それらを防ぐ光り輝く盾や魔法の応戦。


城の郊外の丘で行われているが当たりはすでに更地だ。


継嗣が手を掲げるとその上には無数の火の槍が現れる。

本来は長い詠唱があるようだが有り余る魔力で短縮し発動しているらしい。


「フレイム・ランス」


熱を帯びた空気が当たりを駆け抜け、有を槍が襲う。


「アクア・スプラッシュ」


巨大な渦が火の槍を飲み込み当たりを蒸気が包み込む。


そして響く剣と盾がぶつかる音。


魔法の発動と同時に距離をつめていたようだが、

有も魔力で作り出した盾で防ぐ。


「そこまで! 一月でここまで腕を上げるとは驚きです。流石は女神の加護を受けた勇者か。」

「師匠たちが良いからですよ。」


師匠と呼ばれた男、剣の勇者、アーク・ラッドリア。

剣の腕前で最強と認められる称号、剣聖。

その加護はあらゆる剣技を昇華し自分のものにすることができるという。

先代の剣聖に認められ剣の勇者の名と知られる彼の名声だ。


「まあ、ボク以上の魔法使いはいませんしね。」


そう答えるのはルイ・フリフトフ。

平民出身ながらその魔法の技術と女神の加護により最強とされる魔法使い。

一度見せてもらった上級魔法は竜を象った雷が山の形を変えていた。


勇者と呼ばれる人達は確実に人間をやめてる。


4人の高校生勇者もそうだ。

最初こそ初心者らしく自分と同じように戸惑っていたが要領を掴んでしまうとその辺の魔法使いや兵士相手では訓練相手にならない。

基本的なスペックが桁外れのようだ。


「信さん。調子はどうですか?」


そう問いかけてくるのはせつな。聖女と呼ばれる勇者ユキナ・タイラントと連れ立って横へやってくる。


「ぼちぼちかな。なんとか形になってきたよ。さすがにあの光景をみると差がありすぎて凹むけどね。」


「原始魔法の訓練ですよね?興味深いですわ。今では使う人もあまりいませんし。役には立ちそうですか?」


ユキナが顔を近づけて聞いて来る。

金髪のゆるいウェーブのかかった長い髪。絵のように整った端正な顔立ち。

近づくと香る甘い匂い。そして、男なら誰もがみてしまう立派なものがふたつ。

正直、緊張する。

せつなも美人だけど日本人離れした容姿の美人とこんな近くで話す機会が自分の人生にあるとは。


「はい。なんとか。まあ、あくまで護身用ですけど。ひとまずいくつかは形になったので旅には役に立つと思います。」


そう旅。自分は魔王討伐には役に立たないということで旅に出ることにした。

加護がないことで放置するのは危険だという意見もあったらしいが、現在既に黒の歌姫は存在するらしく自分の加護無しは異世界からの召喚に巻き込まれた為だと判断されたようだ。

このまま城で戦いが終わるまで待つという選択肢もあったが何年かかるか分からない、勝てるかも分からない戦いの結果を待つよりは自分で帰る為の方法を探すことにした。

ひとまずは護身のために剣と魔法の訓練をこの1月ほどやってきた。

この世界には魔物が溢れているためたとえ護衛がいても最低限の護身の術はあったほうがいいということで勇者達の訓練の横で自分も勉強している。


「まずはどうするんですか?帰る方法を探すにしてもあてなんてあるんですか?」

「うーん、ひとまず女神だと思う。城の人達も何度か言ってたけど神託っていう手段で向こうからのコンタクトがあるならなにか女神と話をする方法があるとおもうんだ。」

「なるほど、となるとまずは女神の教会にいる巫女様に会いに行くのですか?」


女神の教会。この世界で最大の力を持つ教会。

最高司祭に白の歌姫と、女神からの神託を授かる巫女の2人を柱としている宗派。

その権力は巨大で各国への発言権まで持つ組織のようだ。


「はい。紹介状を頂けるとのことで一度巫女を訪ね女神と召喚について訪ねようと思います。」

「一人で行くんですか?」

せつなが不安げな顔で見つめて来る。


1人。そこは問題でもある。かといって、国に何も利益を落とせるわけじゃない自分がこれ以上何かを頼むのも失礼な話だ。


「ひとまず当面の路銀と向こうまでの馬車代とかも貰えることになってるから大丈夫だとおもうよ。」


「不安ですね。よし!私と模擬戦をしてみましょう。」


ユキナが勢い良く立ち上がる。


「いや、ゆうしゃと立ち会いとか勘弁なんですけど・・・」


早速、槍のような長さの棍を手に持ちユキナが構える。


「仮にも勇者であり活心流棍術免許皆伝保持者の私が実力を見てあげると言ってるんです。遠慮せずかかってきなさい。魔法も使っていいですよ。」


木刀を手に取り立ち上がる。

ひとまずこの1ヶ月学んだことを使ってみるのはいいことなのかもしれない。


「よろしくお願いします。では・・・」


話しながら飛びかかる。構えてから打ち込んでは見切られるどころか返り討ちだ。

木刀を横なぎに払うが空を切る、そのまま棍で突き返して来るが手加減してくれてるのであろう。

かがんで避け、足を狙いもう一度斬りつけるが軽くバックステップを取り避けられる。


(このまま剣で攻めても一撃も入らないな。)


右の手で剣を木刀を振るいながら左手に魔力を混めイメージする。


(爆ぜろ。)

 

ー衝撃ー

手のひらに集まった魔力が変質し衝撃波となりユキナを襲う。

この魔法自体に殺傷能力はない。至近距離で打ち込めば骨を砕く位はできるかもしれないが魔法の目的は相手のを吹き飛ばしたり体勢を崩すことだ。


ユキナは冷静に棍に魔力を混め衝撃波を叩き付ける。

魔法が霧散する。衝撃の波が軽く自分の身体にも伝わる。


(折れない・・・か。)


使用しているのは普通の木を削って作られた棍だ。

運が良ければ折れるかと思ったがあれだけの魔力を込められるとただの木も鉄の棒と変わらなそうだ。


(なら、これはどうだ!)

距離をとり左手に再び魔力を混める。

次の瞬間、ユキナの足下から紐のような光が現れ体に巻き付いて行く。


ー束縛ー

相手の動きを縛り付ける魔法。

距離が離れると力も速度も落ちるし使用する魔力も増える。


(捕まえた!いまだ!)


左手の魔力を強めユキナをそのまま切り払いに行く。


「な!?」


捕まえたと思ったがユキナが魔力を溜めるとあっさり束縛の紐が弾きちぎられ、そのまま棍で打ち返して来る。


「やっぱりだめか。。。なら!」


気にせずユキナが棍で打ち付けるが棍と新たに発動した魔法の膜が触れ合った瞬間、棍ごとユキナがはじき飛ばされる。


ー反発ー

信の全身をぶつかると弾けるうすい光の膜が覆う防御魔法。

ただ、防ぐだけだと火力差がある場合そのまま押し切られる。

なら一撃だけでも防げるようにと覚えた魔法。


(チャンス!)


全身に魔力を滾らせ身体能力を強化しユキナに一撃を見舞う。

が、


「悪くないと思うよ。直接の殺傷を狙った魔法じゃなくて。」


次の瞬間には地面に倒れていたのは信だった。


「やったと思ったのにな。」


姿勢が崩れチャンスと思ったが崩れた姿勢のままユキナの棍が信の木刀を打ち払い、そのまま体勢を調えたユキナの連撃により打ち倒され地面に転がされる。


「隙を作ることに特化してるのはいいね。正直、びっくりした。同レベルの人相手なら何とかなるんじゃないかな?ただ実力に差があるとと火力で押し切られそうだけど。」


実力に差がありすぎる。当然の結果だ。


不安はいくつもある。焦らない方が良いとも思う。でも早く帰りたい。

帰らなくちゃ行けない。


戦闘描写は考え中のため書き直すかもしれません。

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