精霊探し 勝利
敵は改めてこちらの姿を確認すると、ゆっくりと構え直す。
「「またお前達か。逃げたのではなかったのか?この傷の礼はさせてもらうぞ」」
フェイが走る。
腰を低く落とした姿勢で、風のように速く駆ける。
その後ろから自分も付いていく。
足の速度は全く違う。
その後方でマナが魔力を溜め、待機している。
3人の中で一番攻撃力のある彼女の一撃を決める隙を2人で作るため、攻勢にでる。
「はああぁぁぁ!!」
フィイが素早いステップで虚を作り出す。
魔族の男の剣がフェイを捕らえた、かのように見えたが斬られたのはフェイの作り出した残像だ。
背後からフェイの一撃が男の背を捕らえる。
敵が体勢を崩し、前に倒れ込む。
そこにー衝波ーを放ち更に体勢を崩す。
剣を地面に突き刺し耐える。
そのまま地面を抉るように斬り上げられた剣から衝撃波が走る。
迫る衝撃波を横に飛び避ける。
そう何度も避けれる気がしない。
敵の動きは止まらなかった。
フェイに向かい素早い剣の舞が襲いかかる。
剣がフェイにぶつかる瞬間にあわせてフェイにかけていたー反発ーを拡大する。
剣と共に敵が弾かれる。
「いまだ!」
「真空の魔弾よ、舞い踊れ、エアリアルバレット」
圧縮された空気の玉が敵を撃つ。
が、敵の剣技が高速で円を描くと周囲に衝撃波が走り魔法が相殺され、激しい粉塵が辺りを覆う。
間髪入れずに、男が砂塵から飛び出してくる。
その剣が眼前に迫る。
「ホーリランス!!」
地面に描かれた魔方陣から槍が勢いよく飛び出すが、その一撃を男は紙一重に避ける。
「シン、大丈夫ですか?」
ユキナがすぐ横に立つ。
体力の限界だろう、顔が青ざめている。
ユキナが飛び出し棍を振るう。
剣と棍が激しくぶつかり合い、一撃打ち合うごとに轟音に伴い衝撃波が周囲に響く。
合間合間に、自分たちも援護攻撃をするが決め手にかける。
体力的に厳しいのはこちらの方だろう。
「3人とも一度下がって!」
号令に従い、3人が敵から距離をとる。
全力で距離を詰めると、敵の全力の突きが迫る。
敵の刃が脇腹を貫く。
3人が悲鳴が聴こえ、意識が遠のいてゆく。
だけど、意識を失うわけにはいかない。
ー白火ーを強める。
「みんな!いまだ!」
敵が剣を引き抜こうと力を込める。
させない。
剣の鍔を掴み、剣を引き抜かせないよう力を込める。
横からユキナの渾身の一撃が炸裂する。
まともに殴打された魔族は剣を離し地に伏せる。
そこにフェイが駆け寄り、自分をその場から離す。
「風よ治めし偉大なる長よ、我、汝との盟約により今、願い求める。出よ、シルフ!」
縦横無尽に無数の風の刃が駆け回り敵を切り刻む。その風が一点に集まるとシルフが姿を現す。
放たれた風の矢が巨大な竜巻を伴いながら敵を抉る。
「これで、終わりです」
風の奔流が終わらぬうちに強力な魔力を纏ったユキナの棍が敵を討つ。
地面が抉れ、衝撃が地形を変える。
敵はもう動かない。
「勝った・・・」
意識が遠のく。
血が流れ過ぎた。
駆け寄る3人が目に入った所で意識が途切れた。
お読み頂きありがとうございます。206号室の相棒という短編も書きました。短い分ですが、もし良ければそちらも読んでみてください。