序章 迷子4
ひとつ嬉しい発見があった。
ごはんがおいしい。
自分たちの世界の食事とほとんど変わりない。
お風呂もあったし。先は明るいかも知れない。
帰る方法さえ分かっていれば。
少し、4人とも話をした。
やはり4人は友達同士のようだ。
4人とも同級生で学校の帰りにカラオケに行こうと電車を待っていた所でいつのまにか女神の居る場所にいたらしい。
駅。確かに自分もいたな。高校生らしきグループの後ろで電車を待ってた気もする。
やっぱり巻き込まれただけなのか。
その場に居た人達が召喚されたのならどうして自分は女神には会わなかったんだ?
でも、そうなら魔王討伐なんて無茶な話に参加するのも危険なだけだよな。
彼ら4人は力があるらしい。
どんな力かはわからないけど凡人の自分が立ち入る領域の話じゃない。
今日聞いた話だけでも女神からの神託と言う手段があることが分かった。
女神とのコンタクトが可能なら帰る方法を教えてもらえるんじゃないか?
自分はあくまでイレギュラーのようだしこの世界に必要はないだろう。
女神と話せればそのまま帰らせてくれるかもしれない。
(問題は・・・)
このまま国の厄介になっていいのだろうか?加護がないとわかった時の反応。
あの時は分からなかったけど加護持ちはかなり嫌悪されているようだ。
あの後、だれもまともに眼を合わそうとしなかった。
犯罪者が加護をなくすって言ってたからやっぱり疑われてるのか?
気になるのは黒の歌姫の呪いだっけか?
なんだかいやな予感がする。
(でも、今は何も分からない。何もできないか)
まだこの世界のことが何も分からない。
もし明日にでも、
「勇者じゃないので、はいサヨナラ。」
なんて言われたらしゃれにならない。
この世界の治安もわからない。
ただでさえ、魔族との戦争だって話だ。
モンスターだっているかもしれない。
いや、いるだろう。
お金もない。
何よりも行きて行く為の術、力がない。
「会いたいな。心配してるだろうな。」
ふと、気になる。時間ってどうなってるんだろう?
この世界から向こうに戻ったら自分たちが消えたその瞬間に戻るのだろうか?
こういう異世界ファンタジーものにはありがちな話だけど。
「だといいんだけどな。」
独り言が部屋の中で静かにひびく。