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はじまりはじまり
1999年。
破壊の大魔王が降臨し、人類は滅亡するはずだった。
「ふふふふふ私が、世界を、救うのよ」
女はノートに《1999年、人類は滅亡しない》と書くだけだった。
「ふふふ、ふふ、私は、世界を、救ったのよふふ」
「ママー?」
女は慌てる。さっきまでのだらしない笑い方からは想像もつかない、親の顔に戻った。
「コトハ!勝手に部屋に入ってこないの!」
「ごめんなさーい」
「こんな夜遅くまで起きて、わるい子にはサンタさんは来ないのよ〜?」
「はぁーい」
少女は大きなあくびをひとつ。
「ママと一緒に寝る〜」
「はいはい、待っててね」
女はノートを机に仕舞い、寝支度を始める。
それはどこにでもある、普通の家庭のありふれた風景だ。