グリップ
すっかり寒くなったのに
最後に、手を繋いだのは
いつのこと
互いの指を絡めたことさえ
今では遠い、春の出来事
掻き上げた髪の奥から
覗いた満天の星空と
降り注ぐ
雨の声にも負けない、君の香り
閉じたドアの向こう側で
今は椅子がキィキィと鳴っている
握りしめた両の手の間
滑り止め加工をして
逃げ出すことを拒絶したスマートフォン
SDカードに浸み込ませた
太陽の暑さが、写り込んだ画面を
真っ黒に焦がす
締め忘れた蛇口
水の音
電気を落とした部屋の奥
ベッドの上
僕は一人、身をよじる
体の上を這って動く
びくんびくんと怯えた手が
今日も嘘つきだと、知りながら
ありがとうございました。