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『やなせ通り防えい戦隊、しゅーごーっ! ただいまよりテンコをとるっ!』


 高らかな声が、小さな神社に響く。

 神社は子供たちの遊び場であり、集合場所でもあった。


 年長で、一番身長が高かった大和をリーダーとして、


『いえーい、いえろーっ!』

 遊びを考える、やんちゃで時には悪ガキな拓海。


『……ぴ、ぴんく』

 大人しくて、みんなの後をついてまわる葵。


『ブルー……』

 気弱で泣き虫な少年と、


『グリーン』

 しっかり者の女の子もいた。


 大和の弟と、拓海の妹だ。


 遊ぶときは、いつもこのメンバーだった。

 どうして集まったのか、いつからこのメンバーで遊んでいたのか、よく思い出せない。


 でも毎日楽しかったことは、確かだ。


 というか、拓海も葵も役割が全然違うじゃないか。

 なんなんだ、『参謀』と『ブラック』って。


『よっし! では今日も悪をたおすため、まずはオニゴッコするぞー!』

『はいはいはーいっ! おれ、カゲフミオニゴッコがいいでーすっ』


 待て待て。

 悪を倒すことが、なぜ鬼ごっこなんだ。


 幼い自分がどういう思考回路をしていたのか、我ながら理解できない。


 ただ、神社の境内で影踏み鬼をしだした子供たちは、年相応にはしゃぎ、楽しそうにしていた。

 引っ越す前は、いつもこうやって遊んでいた。はっきりと憶えている。


 拓海が遊びを提案して、拓海の妹がそれに乗って、時に反対もして。

 大和の弟と葵は、後ろをついてくるのが精いっぱいだった。


 そんな、懐かしい日々。


 やっと思い出せた、大和の唯一の綺麗な記憶だ。


(―――……あれ)


 けれど、なぜか、引っ掛かりを覚える。

 おかしい、そんなことはないと、夢を見ている自分に意見してみるが、それでも違和感は拭えなかった。


 ずっと、彼らと遊んでいた。

 憶えてる。


 でも、不思議だ。



 ―――もうひとり、だれかいた気がする。



***


「……っ、」


 目を開けると、カーテンから洩れる陽の光で、部屋が明るかった。

 どうやら、いつの間にか眠って朝になったようだ。


 起き上がり、呆然と部屋を見渡す。


 まるで、本当に自分が過去へタイムスリップしたかのような、鮮明な夢だった。


 それに、夢などすぐに忘れてしまう大和だが、今みた夢だけは、早い鼓動と共にずっと脳裏に残っている。

 夢で感じた、疑問と共に。


(……俺、まだ何か……忘れてるのか……?)


 額に手を当てると、今更ながらに汗ばんでいることに気が付く。

 大和、拓海、葵、大和の弟、拓海の妹―――5人。

 他に、幼い頃に遊んでいた人物など、思い当たらない。


 いや、でも、確かに。


 もう一度思い出そうとすればするほど、頭が打たれるように痛む。




 携帯は、今日が8月2日であることを知らせていた。


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