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夜、大和は用意された布団へなだれるように寝そべった。
本当は泊まるつもりなんてなかった。
あれから拓海も帰ってしまい、続けて大和も去ろうとしたのだが―――葵に頑固として止められてしまったのだ。
いくら幼馴染と言えど、年頃の男女だし、一応分別だってついているつもりだ。
だが『行かないで』と追いすがる必死な葵に気圧されて、そのまま流されるように泊まることとなった。
仕方なしに、葵の親父さんを待って説明しようとも思ったが、すっかり日が落ちても、夕飯の時刻を過ぎても、風呂から上がっても、帰ってこなかった。
葵曰く、『とても忙しい仕事』をしているため、帰ってこない日もしばしばあるのだとか。
とりあえず、今日は遅いからもう寝ようと言われたので、部屋を宛がわれ、布団を用意してもらい、今に至る訳だが―――。
「……はあ」
こんなつもりじゃなかったのにな、と深い溜息を吐く。
床に投げ出したボストンバックの口は閉じたままだ。
別に、いますぐ必要なものなどは入れてきていない。
もうこのままでいいか、と思い、ジーンズのポケットに入れたままだった一枚のカードを、目の前に掲げた。
「やなせ通り、防衛戦隊……ねえ」
読み上げた字の下には、真っ赤な字で『レッド』と大きく書かれている。
葵の言った通り、この町が生まれ故郷だということも、幼馴染の存在も、思い出したのはつい半年前だ。
それまでは、『何か大切なことを忘れている』自覚だけはあり、抜け落ちたような空っぽの気持ちで過ごしていた。
思い出せたのは、唐突だった。
いや、前兆はあった気がする。
誰かと並んで、花火を見上げる夢をみた―――朝起きたら、ぽつり、ぽつりと徐々に忘れていた記憶を取り戻したのだ。
それでも、自分では分からなかった。
本当に全部を思い出せたのか、一体何が欠けていて、何を取り戻せたのか。
けれどここに来て、それも理解できた。
自分はまだ、『思い出さなければいけない』なにかがあるらしい。
「……」
当初の目的から逸れていることを知りながら、まあいいか、と身体から力を抜く。
時間は十分にあるし、なにより、気になって仕方ないのだ。
記憶が欠けているのなら、その欠けているものが何なのかを知りたい。
それは、純粋な好奇心だった。
「―――あれ? これ、裏になにか……」
考えがまとまったところで、掲げたままだったカードに目を向ければ、暗闇に慣れてきたせいかうっすら文字が透けて見える。
気になってカードを引っくり返したとき、大和は目を細めた。
幼い子供特有の乱雑な字で、書かれてある文字を目で追う。
『やくそく、まもる』
(……約束って、葵と交わしたあれか? 『ヒーローになって、平和を取り戻す』っていう……)
そのとき、葵の声が聞こえた気がした。
『だから―――』。あの時、坂道で、何かを言いかけていた気がする。続きはなんだっただろうか。
(思い出せない……)
ゆっくりと瞳を閉じれば、視界は暗く染まる。
代わりに記憶にある情景が、優しく浮かんできた。




