夏祭り
勉強につかれて、シャーペンをおき、そういや今日夏祭りあったな、なんて思って出かけてみることにした。
夏祭り行くと、案の定人がたくさんいて、とりわけカップルが多かった。うらやましーな、って思いながら、あちこち歩き回った。かき氷も、たこ焼きも、盆踊りも興味を引かなかった。ただ虚しさを味わいながら歩き回っていた。携帯をみると友達からLINEが来ていた。たわいもない話をしてきたから、今夏祭りに来てることを話してみた。カップルが多くて、虚しい気分をしていることも。そしたら、女の子に話しかけてみたら?ってすっごく軽いノリで、提案された。なるほど、悪くない。そこから話しかけ方についてじっくり一緒に話し合って、やってみることにした。でも、いざ話しかけようとすると、全然できない。言葉が頭に浮かんでも、口には出てこなかった。楽しそうしている女の子たちは、まるで違う世界にいるようだった。気付いたら、もう2時間くらい経っていて、泣きたくなった。勉強しなきゃ、そう思って家に帰ろうとした、でも何も満足しないまま帰るのが嫌で、気付いたらまだ歩き回っていた。盆踊りはまだ続いていて、ぼーっとしてながめていた。
ふいに隣をみると、浴衣を着た小さな女の子が1人でいた。背は小さいが、おそらく高校生だろう。祭りに1人で、しかもわざわざ浴衣で来る女の子、当然僕は気になった。他に連れがいるんじゃないか、そう思ってしばらく隣で様子をみていた。でもずっと1人のままだった。1人の女の子に話しかけるのも手だよね、まあいないと思うが、という友達の言葉を思い出して、話しかけてみようか、そう思った。
「1人なんですか。」
女の子はびっくりして、こっちをしばらく見つめた後に、頷いた。
「そうですか。僕も1人で…」
最初は自分でもびっくりするくらい言葉がすらっとでて来たが、すぐに止まった。
「お1人なんですか。」
話しかけられると思わなくて、少したじろいだ。
「はい、そうなんですよ。みんな受験勉強で忙しいから。それと地元に友達がいなくて…」
僕も1人だってことを知って、女の子は少しホッとしたようだった。自分と同じ境遇にいる人がいることが嬉しかったのかもしれない。
その子は、髪型がボブで、顔が小さく、芸能人に例えると乃木坂の生田絵梨花に少し似ていて可愛らしかった。背が小さいところも、その可愛らしさを引き立てた。
「オススメの屋台とか、ありますか。1人だと全然わかんなくて…」
そういうと女の子は、ぼくの目を少し見つめた後に、歩きだした。ついっていっていいのか、という顔をして、僕が戸惑っていると、まるでついてきてくださいというような目線を送ってきて、再び歩きだした。
その子はあるかき氷屋さんの前で足を止めて、これです、と言うかのように、僕の方に目を向けた。
「イチゴ味がおいしいです」
そういった。その子の言う通りに、僕はイチゴ味のかき氷を買って、食べてみた。うん確かにおいしい、しかも今まで食べたことのないようなさっぱりした甘さだった。
「おいしいですね。」
僕がいうと、その子は嬉しそうに、でしょ?でしょ?って笑顔で返してきた。でも、初めて会った人だと言うことを思い出したのか、急に静かになって、顔を真っ赤にした。そこからはただ一緒に歩き回って、太鼓をみたり、盆踊りをみたりした。1時間くらい経って、祭りも終わりを迎えそうになったときに、さすがに帰らなきゃまずい、そう思って、彼女に向かって別れを告げた。
「今日は楽しかったです。また会えたら…」
彼女は小さく微笑んで、会釈した。