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洗礼と司祭様

今回はちょこっと長いです

 よう、生まれ変わってからの約数週間の新しい人生を謳歌するケールだ。


 突然だがどうやらこの世界は俺の生きていた世界ではないらしい。まあ薄々気がついてはいたけどな。


 それで、いわゆる異世界って奴に生まれ変わった俺だが、そんな俺は今生まれて初めてお家の外に出ていた。


 母の腕とベッドの中以外に訪れる初めての場所……


 「……な、なあメープル本当にいいのかよ」


 「なによ、自信持ちなさいよ……もう、父親、なんだから」


 俺の頭からそれこそこれっぽちの自信も感じられない声が聞こえる。俺の体を支える硬い腕はその逞しさに似合わず、まるで羽毛を抱くような柔らかさで俺を包んでいる。


 ……いや、正直言うとだな、落ちそうなんだよ! そりゃ相手も馬鹿じゃあないだろうからおいソレと落っことしてくれるようなことは無いと思うが、俺としては気が気じゃないわ!


 「そ、そうだな……親父おやじなんだもんな」


 と、また今度は俺を乗せてた腕にわずかな力が込められた。


 そう、今俺が居るのは父・オークの腕の中なのだ。硬い胸板に耳が当たって如何に父が緊張しているかを嫌が上にも教えてくれる。すこぶる心地悪い。


 なぜ今日は俺が父の腕に収まっているかって? そりゃあ、母の腕にはもう既に寝息を立てたラーク君が居るからな! 


 しかもこの父、聞くことによると一度もラーク君の事を抱っこしたことが無いという。


 なんでだ! あんなに可愛いのに! ほら見てみろ! ちょこっとよだれなんか垂らしているあのさまを! 

 「それにしても……子供って、こんなに柔らかくて、あったかいんだな……」


 再び頭の上から聞こえてきた意味深な言葉を、俺は聞かないようにした。






 おお! 太陽だ! 人だ! 町だ、物だ、草花だ!


 よう、久しぶり……と、言うか、人生初めての外出で軽く興奮しているケールだ。おお、アーチをくぐった! 


 俺とその家族は今人通りの多い大きな通りから徐々に細まった道を通っているところだ。


 途中でラーク君も目を覚まし、初めて通る道なのか、あちこち興味深そうな目できょろきょろと見つめている。


 「とうちゃ、とうちゃ、どこ行くの?」


 ナイス、ラーク君! ソレは俺も聞きたかったことだ。


 俺たちはかれこれ石畳の敷き詰められた道の上えうを行っている。


 しかしその間中、ずっと俺はどこに行くのか聞けていないのだ。


 赤ん坊だから当然だな!


 「ん~これからケールの“洗礼”に行くんだよ」


 んん?!


 「せんれい?」


 俺の心の声がラーク君の鸚鵡返しに重なったのはほぼ同時だった。


 「とうちゃ、せんれいって?」


 純粋無垢な声に疑問をにじませてラーク君が聞いてくれる。俺もちょうど気になって居た所だ。なんだよセンレイって。


 しかし、質問を受けた父はというと……


 「え?! えぇっと……メープル、頼む」


 馬鹿、であった。


 父が喋るたびにくぐもった音響が胸に押し当てた耳に聞こえるが、今のは格別だった。


 「洗礼というのは神様と契約することなのよ」


 「けいやく?」


 神様に近い奴とならもうしてるんだけどな。


 「そうよ、お約束するの。わたしは神様の教えを守っていい子にします、って」


 ほ~ん。と俺もラーク君も母のこの説明で一応の納得を見たようだった。


 なるほどなるほど。つまり今俺は教会に向かっているて事だな。


 ん……〈教会〉まてよ、なんかつい最近、似たような言葉聞いた気が……


 俺の脳裏に一瞬の閃光の如くいやな予感が掠めたその瞬間だった。


 「さあ着いたぞ、ここがラークに洗礼を授けてくれる〈プルシエ教会〉だ」


 嫌な予感なんて考えすぎだった。






 そもそも、〈大聖堂〉やなんかで洗礼を受けるのは王様だとか大貴族だとかそんな感じの人たちだけらしい。


 庶民平民は身の丈にあった教会で洗礼を打てるのが慣わしだそうな。


 んで、この〈プルシエ教会〉と言うのがこの街の唯一の庶民派教会らしく、慎ましく生きる人たちからは非常に頼りにされているそうな。


 と、俺は父の手からこの教会の司祭様であろう超優しそうなおじいさんの手に渡った時にこれまで聞いた情報を半数していた。


 「おお、この子が」


 「はい、先日生まれたオレとメープルの二人目です」


 うわ~父が敬語使ってるのなんて初めて見たよ。なんか新鮮だ。


 「ふむ、メープルさんに似たのか……賢そうなだ、まるでわたし達の会話が分かってるようじゃないか」


 まあ分かってるんですからね、それよりも賢そうだって? もっと言っていいぞ。


 と、オレはこの時、自分の体が下降していることに気がついた。


 「ラーク君は元気かい?」


 「はい、今はメープルと外で待っています」


 俺の足の指がぬるい水の中に入った。


 「……そうか、やはり彼女はまだ慣れないか……〈教会〉と言う空間に……」


 腰までが水の中に入っていく。因みに今の俺はおしめもはいていない完全なすっぽんぽんな状態だ。


 だけど、俺は洗礼の合間んい交わされる頭上の会話にそっと耳を済ませていた。


 「もう、15年は前のことなんですけどね……」


 目の端で鳶色の髪が揺れるのが見えた。


 「……それよりもオーク君、きみはまだあの仕事をしているのか?」


 ん?あの仕事?


 しかし、父はその言葉に何も言わない。


 「やはり、か。ラーク君を此処に連れてきたときも言ったはずだ。人を殺めた刃はいずれきみ自身に帰ってくる。もう、きみ一人の体でないことを承知したまえ……愛しているんだろう?」


 司祭様が言葉を投げかけると同時に俺に目を投げかけるのを感じた。


 そんなにみちゃ嫌ン。


 「良かったら、此処で働かないか? あまり多くは出せないかも知れないが、今のままだは――」


 俺がこの重~い空気に耐え切れずにふざけだしたその時、父が司祭様の言葉をさえぎった。


 「でも、オレは、これでしか食べるすべを知らないんです……」


 「そうか……」


 今やすっかり頭まで水の中に浸かっていた俺をひきあげ清潔なむので清め、父に渡してくれる司祭様。


 「オーク……君と、君の息子エアデ=ケールくんに幸の多からんことを」


 父は、俺を抱いて、司祭様の言葉を背に、洗礼の間を跡にした。






 教会、出入り口へとまっすぐに続く廊下で不意に父の足が止まった。


 「なあケール。オレ、どんな顔してメープルと会えばいいんだろうな」


 ……笑えばいいとおもうよ。


 おれは、泣き出しそうな微笑を浮かべる父に、心の中でそっと呟くしかなかった。

リ「この話はなんと最後の台詞を言わせたいだけが為に書かれたらしいですよ」

レ「しかもなんか意味深なことばっかり言わせておきながらそお中身を考えていないぞ、破綻するのも時間の問題だな」

リ「さて、次回はご主人様が我々と戯れます。こうご期待」

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