15歳の風紀委員
よう、久しぶりのケールだ。なんともうあれから10年の月日が過ぎた。思えばいろいろなことがあったなぁ……家族旅行へ行って魔物に襲われたり、師匠と修行して魔物と戦ったり、レオンとリコルが人前で動いて魔物扱いされたり……
この10年、魔物を抜きに語れる思い出が無いんじゃないかってくらいだ。
そんな俺は今、なんと『学院』の入学式に出ている!!
びっくりだろ? 俺もびっくりだ。まあ、ご存知のとおり、我らが最高学府は生まれの貴賎を問わず相応の学力とお金あえつめば誰でも入れる。だが、なんで俺が入学することになったかって、話は半年前まで遡ることになる……
よう、ついに昨日15歳のお誕生日を迎えたケールだ。なんたって15歳だ、もうこの国じゃ大人の仲間入りだ。ということでなんと、お隣のプラムさんや、17歳のイケてるメンズこと、ラーク&グレイプくんにお祝いしてもらちゃったぜ!
で……そんな俺はいま、なんと、『大聖堂』いる!!!
びっくりだろ? 俺もびっくりだ。
ああ、我が故郷〈学術都市・ウリム〉の覇を競う三者が1柱。燭代が仄かに暗闇を照らすなか、目の前の祭壇にはいかつぅいお顔をした大司教様がオレを見下ろしていた。今朝急に父さんとラーク兄につれてこられたかと思うとこの荘厳な空間よ。なにがどうなっている。
「……エアデ=ケール。これへ」
あああぁ! 行きたくない! 腹に響くような低い声で大司教様に呼ばれてしまった俺。当然行かないわけにはいかない。大司教様といえば、いわば教会内でのウリムの領主だ。司教区で村八分にされてみろ、ものすごく哀れなことになるゾ。
と、言うわけでいろんな人が歩きまくったんだろう、磨り減ったじゅうたんの上を、俺は超・いやいや歩いた。が、わりとあっという間に祭壇直前の小高い階段のまえまでたどり着いてしまった。
「……汝に、『学院』 への入学推薦状、ならびに奨学金を贈る!」
いやぁ、うん。その頃は驚いて言葉も無くて気がついたらとんとん拍子よ。気がついたら元・宮廷魔道士クラウド師匠も俺のために『学院』への紹介状書いてくれたってさ。うれしく無さ過ぎる……
だが、よく考えれば、俺の兄ラークも2年前に同じように教会からもらって『学院〉へ通っているから気がつけない問題ではなかったにしても……
それにしても、だ。『大聖堂』から『学院』への奨学金だなんて、何か裏がありそうでいやじゃないか。って、いうかある。絶対に。教会組織お抱えの傭兵、火燐のオークの子が二人して『学院』に入学なんておかしすぎる。政治的意味が無いなんていわれたら鼻で笑っちゃうような事件だ。
で、そんな大人たちの見えざる戦いに知らないうちに巻き込まれ、気がつけば入学試験だったが、ちょろいものだった。
この10年間、俺はクラウドとレイン、二人の師匠の下で修行していた。二人とも稀代の魔術師、錬金術師でありながら心の内は正反対で方や善と光の技を、方や悪と闇の技を俺に与えてくれた。そんな俺に魔力量という班ではありながらも死角は存在しなかった。
結果、座学ではトップを飾り、特別報奨金付での学院への入学決定だ。イヤになる。
今年は王室からの奨学金を勝ち得たやつも入学してくるらしい。俺……退学してもいいかな……
なんて事を考えていると、いつの間にか式は終わりそれぞれが寮生のパイせんについていってもろもろの説明を受けるらしい。なんと全寮制の寄宿学校だったようだ。ますます帰りたい……と、思った矢先よ、驚きの一言が投げかけられた。
「よーし、じゃあ一年生の委員を発表するぞー! まず一年全体のまとめ役になってもらう風紀委員だが……二つも推薦状をもらって、入学試験ももとんど満点で合格したケールってやつにやってもらう!」
んノオオおおぉぉぉーーーーーーーーーー!?!?!?!