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パパン

もうちょっと馬鹿っぽいお話にしようとしたんですけど兄、母に比べるとちょこっと重いかも知れません。主にパパンのケールへの愛が

 よう、相変わらずシーツから変な臭いのするベビーベッドでぬいぐるみどもと戯れているケールだ。


 ちなみに、今俺の忠実な暇つぶし相手にして唯一の情報源であるレオンとリコルはとある理由でただのぬいぐるみの様になっている。


 その理由と言うのが……


 「おしおしおし、ケール!オレがお前の父ちゃんだぞぉ! おしおしおし」


 なんというか……馬鹿っぽい。


 俺の前でぬいぐるみ……リコルを残像が出来る程振り回している若い男が居るからである。


 男はラークとおんなじ様な深い鳶色の髪の毛を短く切って、同じく鳶色の馬鹿……もとい活発そうな瞳を俺に向けてきている。


 歳は、多分、大学生くらいなのだろうか? 少なくとも間違えてもオジサンだとかとっても呼ばれるような年齢じゃあないだろう。


 そういや母さんもかなり若い人だったなあ俺が今生きているこの世界では当たり前なんだろうか?


 ンんと、兄であるラーク君が今2歳だから……今母さんが高校生くらいだと仮定すると……!?


 なん……だと!?


 そうだと考えると母さんは中学生の頃に今尚俺にリコルを振り回している父さんと結婚したって事になる。


 わぁお、ロミオとジュリエットの世界だぜ。


 してもなぁ。


 と、俺は心中で呟いた。相変わらず笑顔でリコルを振り回している俺の今世のお父さん……


 本当はレオン達に色々聞きたい事も山ほどなんだけどな、しかし、さすがにこのお父さんが居るところで下手な行動を取るのも不味いだろう。


 下手したら引きちぎられるかもしれないしな。


 と言う訳で俺はお、お、お父さん――なんか慣れない、この呼び方――の顔形をより詳しく観察してみることにした。


 え? なんで母さんの時にそうしなかったのかって?


 顔見るのが気まずくてならねえんだよ!! あれだ、昔一緒に暮らしていた女と合コンで会う感じだ。まあ俺にそんな経験無いけどな!


 俺はなんとなくささくれ立った心持でもっかいお父さんの顔を見上げた。目が合った。怖かった。


 そんな感じで俺がかち合ったのはラークくんとおんなじで最早見慣れた鳶色の凡庸だけれど美しい瞳だった。


 何と言うか少年の心を失っていない、そんな感じの瞳だ。まあ、これまでの行いを見てみると単に心が子供のまんまなのかも知れない。


 だが体つきはその限りじゃないようだ、俺の生きた前世ではとても売り物にはならないだろう着心地の悪そうな服の上から見て取れるのはローマ彫刻の軍神マルスを彷彿とさせる鍛え抜かれた肉体だった。


 しかも、俺がこの父さんの体をマルスに例えた事もそこに意味がある。


 別に彫刻に例えるなら寧ろ金剛力士とかの方が立派だろう、少なくとも俺としてはそう思う。


 しかし、我がお父さんオークの肉体は、どこまでも対人戦を前提として鍛えられ贅肉をそぎ落として肉体だ。


 仏門を“守る”と言ったようなロマンチズムはそこに見受けられない。まさに生きる為に戦いに身を投ぜざる得なかった、その結果生まれた美しさを包容させた体なのだ。


 だからこそ俺はこの果てしなく血生臭い筋肉美をかの神マルスに例えたのだ。


 後な、もう1つ理由があって、肌がすっげえ綺麗なの、もうすべっすべ。腕にも無駄毛が無くて、胸板も日に焼けたつるつるの肌が丸見えで、なのにやたら男らしい突起が二つ吐いている。


 で、しかも顔も飽くまで俺基準だからなんともいえないけど流麗な曲線を描く柳眉は力強く、全体の甘いマスクに締まった印象っを与えて男らしい。鼻も決して高いわけではないが勿論低くなくすらりと筋の通ったバランスの良い鼻だ。頭髪もそうだあちこち飛び跳ねて居るようで無造作でなく不思議と衛生的だ。


 だが、何よりも殊更に目を引くのがその不思議な求心力のある瞳だ。常にその奥では好奇心や命の火花が散っていて、きらきらしている。


 しかもそこんじょらの美男子と違ってとっつき難さだとか他人と隔絶された雰囲気が無い。


  これで、ぬいぐるみを振り回していなかったら男でもコロッと落ちたかも知れない。


 ……それだからこそ、俺は気になっているのだ。なぜ、父オークは母メープルと結婚したんだろうと。


 母メープルはよくも悪くも普通の顔立ちだ、美人でも無い代わりに不器量でも無い。


 性格は大人しいほうなんだと思うが意思はきっと強い。


 子供がこんな事思うのは下世話な事なんだろうけどなぁ。


 俺は心中に1人ごちた。


 え~なんかイヤだなこんな事考えるの、やめてくれよ、将来に腹違いの兄弟なんて。


 と、俺がそんな思いを込めて父を再度見つめると、またまた目が合った。


 いつの間にか振るのを止め、心なしか少しやつれたリコルを俺の小さい手の上に乗っける父。


 そのかち合った目はさっきまでも少年の物では無くて、強さと優しさ、そして慈しみの篭った父親の目だった。


 しばらく、俺を見つめていた父は、やおら手をこっちに寄せてきて、おっかなびっくり俺の頭を触ってきた。


 「……もしかしたら、オレみたいな奴が撫でる資格なんか無いかも知れないし、お前が大きくなる頃オレはもう死んでるかも知れない……でも、お前やラーク、メープルの事は死ぬ気で守るからな。――それで、大きくなったら父ちゃんやラークと一緒に鍛錬しような」


 それだけを言い切ってしまうと、父は俺の頭からマメだらけのごつごつした手を退けると、俺から立ち去っていった……


 母も父もさぁ、変なフラグ立てないでくれるかなぁ!

リコル「これで家族紹介はおしまいですねえ」

レオン「次回は『学術都市・ウリム』についてか?」

リコル「たぶん! あ、この会話コーナー(?)は長続きしない可能性大なのであしからず」

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