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俺と巫女と焼き魚と


 ウリムの大聖堂もそうだったがカリファの大聖堂もかなりでかい。大きさに関してはこのカリファ大聖堂のほうが大きいかも知れない。思わずぽかんと見上げてしまう。雲をつくほどの高さは無いが、それでもこの世界では十分すぎるほどの大きさだ。80メートルくらいはあるんじゃないだろうか。結構な高さだ。


 さらにお約束のように大聖堂の正面には広場があってその広場から階段を上っていくのだから余計に高く感じる。


 「ケール、今日は此処に泊まるぞ」


 え、でも泊まるって……えぇ?! 教会に?!


 「はぁ……前に来たときは部屋もあったんだけどな。時期も時期だからかな」


 どこと無く疲れたように息を吐く父さん。そして相変わらず人並みをかきわけ大聖堂へいたる階段へゆっくりと進むのであった。





 「事前にご連絡してくだされば先ほどのようなこともありませんでしたのに」


 大聖堂の中はさっきまでの雑踏とは打って変わって静かなものだった。全体が薄暗い中仄かな太陽光が数々のステンドグラスを通して大聖堂の中を照らしている。後は頼りないろうそくの灯火だけが唯一の光源だ。


 日常からは切り離された静寂の空間といった感じだ。


 俺たちが大聖堂に踏み入ってすぐなぜか僧兵にとめられてしまった。そんな騒ぎを聞きつけた司祭の一人が父さんを見て僧兵を怒鳴りつけたのだ。そうして父さんは事情を説明しながら案内され、先ほどの司祭のせりふへ到るしだいである。


 「いやーオレたちも急いでたし、まさか止められるとはおもってなかったから……」


 「今は聖祭の真っ只中ですよ。今宵は特に巫女の舞が奉納されるので特に厳重になって、立ち入りが制限されるのです。むろん、特別な客人はその限りではありませんがね」


 と年配の司祭が事情を説明し終わるくらいには長い長い回廊を渡って一つの黒い扉の前に着いた。


 なんか廊下も薄暗いし……やだなあ、お化けでも出そうだ。


 「ではこちらへどうぞ」


 そういうと司祭は重たそうなその扉をゆっくりと開いた。俺はそれこそ中からこうもりでも飛び出てくるんじゃないかと身構えていたが実はそんなことも無く、どうやら日がちょうどさしていて窓から差し込む午前の柔らかい光が部屋を満たしていた。


 おお! 内心かびくさい部屋にほうりこまれたらどうしようなんて思ってたけどこれなら安心できそうだ。もしかしたら下手な宿よりも清潔かも知れない。


 「ここは旅籠ではないのでお食事などは賄えません。なにぶん急なお越しな物で……」


 それだけを言い残すと中堅ぽそうな司祭は部屋を出て行ってしまった。おお!? あれは嫌味だったのかな?


 「んー! とりあえず今日とまるところは確保したし、昼飯にでもいくか!」


 言うが早いが父さんは俺を軽々肩へ担ぎ上げた。急に広くなる視界に気持ちが良くなる。人の肩に座るなんて経験それこそ前世で親父にしてもらって以来だ。


 父さんは俺を担いだまま歩き出した。幸い教会の天井は大分高くなっているので俺も危ないことはなんにも無く大聖堂の大広間みたいなところへもどってこられた。


 と……そこには……


 「お、ちょうど巫女役の子が着替えたところみたいだな」


 そこにはめちゃくちゃかわいい子が居た。年は俺と同じくらいだろう。たぶん元々の顔立ちも良いんだろうが、薄く施された化粧がより容子に磨きをかけている。まさに輝かんばかりの美貌だ。幼児特有のふっくらしたばら色の頬がかわいらしい。


 ったく、精神年齢いい年した俺が言った否に考えてんだか。ロリコンじゃねーぞ! なんて誰にするでもない言い訳をしながら、俺はその巫女役の子が引っ込んでいなくなるまでずっと見つめ続けていた。


 さの去り際にその子の薄い翡翠色の目も俺を見つめたような気がした。


 「それにしても、ずいぶん小さい子だったな。ケールとおんなじくらいか?」


 俺と同じようにずっと見つめていたんだろう父さんがポツリと呟いた。たしかに小さい子だったな……それでもかわいい子だった。将来はさぞ美人になるだろう。


 そんなことを思いながら俺は父さん


の肩に運ばれ大聖堂を後にしたのだった。ちなみにぬいぐるみたちも置いてきた。






 よう、海に面したカリファならではの海の幸に舌鼓をうってるケールだ。この焼き魚おいしい。


 特にこの塩加減が絶妙だ。5歳児の味覚にぴったりだ。


 「じゃあケール、ソレ食べ終わったら買いに行くぞ」


 俺がもぐもぐやっているうちにすでに食べ終わっていた父さんはいきなり俺の頭をなでだして言った。


 ん? 買いにって、なにを?


 俺がもぐもぐやりながら首をかしげると父さんは呆れたように肩の力を抜いた。


 「はあ、もう忘れちまったのか? カリファに杖を買いにきたんだろ」


 つえ……つえ……あぁ! そうだった! 〈マンティコア〉とかあの女の子とかおいしすぎる塩焼きとかでいろいろ忘れていたがその通りだ。たしかに杖を買いにわざわざ国境をこえてきたのだ。


 「フツクエ国はオレ達が住んでるイスリアよりも魔法が発展しているし、カリファは港街だから他の国の珍しい道具とかもあるかもしれないからな」


 うんうん! 魔法の杖といえばやっぱり先端に星がついてるやつが良いな! 魔法少女が持ってるようなやつ。


 よおし、そうと決まれば!


 俺はまだ3分の一くらい残っていたお魚に一息にかぶりついた。香ばしい香りが口いっぱいに広がる。うーんデリシャス!


 「お、おい! そんなにあわてて食べなくても良いぞ!」


 父よ、何をいうのか。一日は短いんだぞ!






 そのあと骨が喉に突き刺さりギャン泣きしたのはまた別のお話だ。


リ「おやあ、幼女巫女ですか。趣味が出ますね」

レ「そんなことより次は杖選びらしいぞ」

リ「どうせご主人様のことですから星とかハートのついたファンシーな杖ですよ。乞うご期待!」

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