再会と耳鳴り
短いです。微妙です。
前と後ろから迫りくる気配が俺と父さんを圧迫する。前から感じる二つの気配は本来俺とここで鉢合わせするはずの無い存在だ。後ろから来る連中のことなんて言わずもがなだ。
父さんを見上げるとかなり切羽詰った顔をしている。たぶん、俺も似たような顔をしていることだろう。前から来るやつらはいい。俺の知り合いだからだ。少なくとも聞き覚えのある声だった。
だが、後ろのやつらはだめだ。何のデータも無い。血管を、全身の筋肉を伝って、胸の拍動が耳に届く。早まり続ける心音に、おいおいいきなり止まるんじゃないだろうな、と、ばかげた問いが頭を掠めたそのとき。
「あ、いたいた! って、あれ? ケールくんじゃないの。どうしたのよ、こんなところで」
そいつが、正体を現した……って
「えええぇぇぇ!? 赤毛ちゃん――さん!?」
「ケールくんまで、アタシのこと赤毛ちゃん呼びか……まあいいけどね」
そう、そこに現れたのは、ほんのつい数日前に出会った、なぞの少女こと赤毛ちゃんであった。さらに……
「む……? ケールじゃないか、何でこんなところに?」
続いて姿を現したのは、なんと師匠だった。
「な、何で師匠まで……?」
このときの俺はさぞ目を白黒させていたことだろう。それを見かねたのか、俺に答えてくれたのは師匠ではなく赤毛ちゃんのほうだった。
「クラウドさんはアタシについて来てくれただけよ。でもって、アタシの目的は……いつまでそこに隠れてんのよ!! さっさと出てきなさい!」
突然、俺に説明をしてくれていた赤毛ちゃんがその長髪を振り乱し、前方の暗がりに向かって叫んだ。その声はかなりの大音響であり、ほの暗い洞窟全体を埋め尽くして尚余りあった。
一瞬、鼓膜が破れたんじゃないかと思うほどの声の名残が、耳鳴りとなって未だに渦巻いている。
漸く、その不快な聴細胞が死滅する音がやんだと思ったそのとき。
「驚いたな……まさか、見つかるとは思っていなかった」
「ほら、ね。彼女はこういうところが鋭いんですよ」
俺の兄弟子たちが姿を現した。