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英雄の覚悟とへタレな錬金術師

最初はマルス(微笑)くんの覚悟の独白です。後半は錬金術師の卵ケール君です。

 次回は久しぶりに家族が登場(予定)です、成長したお兄ちゃんと引っ越してきたご近所さん登場です。

 『バビロン』――


 ボクが、初めてこの言葉を聴いたのは3年前……ボクの妹メルクが生まれたときだった。


 メルクはあまりに強大な魔法の才能を持って生まれたらしくて、お父様やお母様はとっても慌てていた。


 幼かったボクを巻き込んだ大きな熱気と不安。そんな、焦燥の渦の中で何度も鼓膜を振るわせた言葉。『バビロン』


 そんな言葉たちの羅列はボクの心を凍らせた。


 曰く、『バビロン』は、魔力の強い子供をさらっておぞましい研究をして、人倫から離れた知識を追求していると言う。


 神をも恐れぬ行為……お父様はそういっていた。


 元々、ボクの一族は魔力の高い者が多く、ボク自身も、妹ほどではないが、決して低いわけではない。


 そして、ボクは出会ってしまったのだ、あの、漆黒の翼と、死神の大鎌を携えた、死を司る大サルに……。


 彼は、自分のことをこういった。“超えては成らない境界”を超えたものだと、そして、『生命の源』の探求者なのだと、自分を評していた。


 ……「でねぇ、ぼうや。これからは、おれさまみたいな奴が、いっぱい現れるよ。おれ達みたいな禁忌の命、何て表現すればいいんだろうね。『魔族』。とでも、なのろうかなぁ」……


 いま思い出しても、背筋が凍る。あれは間違いないメルクを狙って現れた奴だ。魔族……


 だから、ボクは誓った。


 ボクの妹の後はボクが護るんだ、と。






 よお、久しぶりだな。今や、錬金術師の卵のケール、5歳だ。


 そんで、そんなアルケミストのエッグなオレが何をやっているかと言うと……


 「ばかたれッ! 『一は全、全は一』だと何度もいっとろうが! それくらいおぼえんか!」


 「ぐすっ……ゴメンなさい」


 またまた、怒られていた。


 おれが、この頑固者の老錬金術師クラウドさんの徒弟になってからはや1年と4ヶ月、俺はまだ、基本中の基本中の基本すら覚えてはいなかった。


 いや、でも聞いてくれよ、用語は覚えたんだぜ、達人アデプトとか、ホムンクルスとか、でもよ、なんか、何言ってるのかよくわかんないんだよね。


 第一物質とかさ、エーテルだとかさ、さっきの全は同の一はどうのも。


 さっぱりわからない。


 昔から倫理の科目は苦手だったもんなぁ、なにを言いたいかはわかるよ? でも、その思想に同調しろ、って言うのがちんぷんかんぷんだ。


 そもそも、魔力があるってことから俺にはよくわかんない。あっちの世界の電子や分子でさえ、あるといわれたってピンと来なかった俺だ。


 しかも、こっちの世界では、前のように唯あることを理解するだけじゃいけないという。


 それを感じなければ成らないのだ。


 どれだけ偉い学者たちだって、いくらなんでも分子や原子を感じて呼吸していた訳が無い。


 空気とは訳が違うのだ。


 それを、クラウド師匠は感じろ、という、また思想を完全なる真理として理解しろと言う。


 俺が中学2年生ならいざ知らず、おれとて、それなりの年代を生きた一般常識に汚染された常識人なのだ。


 いまさら、そんな事を言われても困るのである。


 「ふう、わしは何にも難しいことは言っていないんだけどなあ」


 そうはいわれましてもね、おじいさん。人には適不適がありまして……


 「よしいいか、小僧」


 そういうなり、師匠は大きなビーカーを取り出した。中には無色透明の水が入っている。


 「ぼうず、これが第一物質だ」


 うん。


 俺が頭だけで頷くと、今度はクラウド師匠は、試験管を取り出して、ビーカーから液体を映した。


 「ほれ、前にも言ったとおり第一物質プリマ・マテリアッちゅうのは、全ての物質の大本だ。岩も肉体も、森の木も草も、魔力でさえ、この物質から作られている」


 うんうん、聞いた事がある。で、俺は、こう考えたのだ。そんな粒子的物質を感じるとかムリ! と。


 「つまり、この、プリマ・マテリアが如何にして他の物質へと変換されるっかと言う工程を理解すれば……」


 ビーカーの中身を次次にそこらの容器についで行く師匠。おいおい、大丈夫かよ、今変な液の中に入ったぜ。


 「で、ぼうず。いったい、この液体の量は、分けられたとは言え、代わったかと思うか?」


 ううん。おれは、今度は首を横に振った。


 なるほど、あの大きなビーカーは第一質量プリマ・マテリア。で、試験管はじめ色んな容器の中身はそれによって作られた物質ということか……


 う~ん、なんとなく、俺にもイメージはつかめてきたぞ。つまり、どれだけ第一質量がその性質を変化させても、量そのものは減らない、ってことか。


 クラウドさんは俺の表情から俺が理解しかけてきたことを察したのか、顔をほころばせてくれた。


 て、おいおい、大丈夫かよ、さっきの怪しい液体が、ぼこぼこあわだっているぜ?


 「あ、あの、クラウド、さん……?」


 「ん、なんだ、ぼうず、あとわしのことは師匠と呼べよ」


 ええい、今はそんな事は関係ない! 問題なのは、さっきのビーカーの中身のほうだ!


 「その、液体、一体何なんですか」


 俺は、少し声が震えながらも、まだ僅かに中身の入ったビーカーを指差した。


 それは、クラウドさんの手の中の納まっていて、ぼこぼこしている容器はクラウドさんの背中側だ。


 「おお、これはな、漸く大気中から抽出した、属性をもった魔力でな、液体状にするのは苦労したぞ」


 その瞬間、俺の脳裏にひらめくものがあった。


 『液体魔力』……四態魔力(液)とも。安定した形状の魔力(魔)を、膨大な圧力をかけ液状化させたもの。使途は様々であり、特に戦略、研究の分野では多岐にわたる汎用性に富む物質である。その性質は極めて不安定であり、常にもとの状態に戻ろうとする力が掛かっているため保存は困難を極める。また、前述の通り非常に不安定な物質のため、僅かな刺激で


 ……ばくはつ、する。


 「ふ……伏せて!」


 






 「おや、地震ですかな?」


 「ん、リコルよどうかしたか? 我輩は何も感じなかったが……」


 「いえいえ、なんとなく遠くのほうで大きい音が聞こえたので、多分、どっかの馬鹿な錬金術師の徒弟かなんかがミスでもしたんでしょう」


 「ふむ、まったく、危険だな。『バビロン』で無ければいいが」

 

リ「まあ、『バビロン』なんてことは無いでしょう。あそこはいかれていても優秀な者達も多いですから。『ホムンクルス』どももいますしね」


レ「それにしても、我々の噂が後を絶たないな、しかも、『バビロン』の魔法技術を狙っているやからまで居るらしいし」


リ「ええ、どうやら悪く思われているようですからね。しかも、最近うちの近所に引っ越してきた一家もそういう類らしいですからね、次回はそいつらが登場するらしいですね。乞うご期待」

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