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契約内容

生まれ変わります

 「生まれ、変わり?」


 俺は最初この子供がなにを言っているのか理解できなかった。


 俺が馬鹿みたいに鸚鵡返しにした言葉に鷹揚に頷く子供の姿に漸く何を言われたのかを理解する。


 「そ、そんな事できるのか?!」


 自分の今までの記憶を持ったまま赤ん坊からやり直す……誰もが一度は夢見たシチュエーションじゃあないか!


 ってか、まてよ……なんか、こういうのどっかで見たことあるぞ……


 「おい、まさかお前は神様とか何とかで俺を間違えて死なせてしまったとかそんなんじゃあないよな」


 もしもそんな事だったとしたら俺はこいつを許すことはできないだろう。確かに、生まれ変われると聞いて舞い上がりもしたが、俺はあの生活が好きだった。それに、まだやりたいこともたくさんあった。


 しかし、俺を生まれ変わらせることができるといった子供はまたも悲しげに口元を歪ませた。


 「そりゃ、神々といえども万能ではないよ。ただ、この俺がもしもそれらの一柱だとしたってそんなミスはおかさないさ、残念だけど君が死んだのは運命。神々ですら覆すことの許されない予定調和なんだよ」


 運命だ。という理不尽にしか思えないような言葉が俺の心にあんまりにも深く圧し掛かった。


 だけれど、俺の耳はどうしても聞き逃しできない言葉を捕らえていた。


 「その言い方だと、まるでお前自身は神様じゃあないみたいだな」


 俺は心を覆うようなくらい気持ちを振り払うために疑問は積極的に解消しようと努めた。


 俺の質問にまたも頷く神ならざる子供。


 「その通り。この俺は神ではないよ。ただ、神々よりも強い力を持ってはいるけれどね。だからこそ、君の事も生まれ変わらせてあげられるのさ」


 俺はこの言葉に目を剥いた。神よりも強い力を持っているということがピンとこなかった。


 「まあ、それでこの俺はこんな『キューブ』なんて空間に押し込められているのさ」


 なるほどな。つまり、こいつの力を恐れた神様達がこいつをこの中に押し込めたってわけだ。


 だけど……


 「それと、俺を生まれ変わらせてくれるってのはどういうことだ」


 「うん、普通、どんな世界で魂を持った存在が死のうと、その魂はすぐさま別の場所で生まれ変わる。ただ勿論、記憶や人格やなんかはもう存在しなくなってるけどね、共通する存在は魂だけってことさ」


 ……つまり、俺は死んで尚記憶と人格を保持したまま此処にいるって事か。


 俺は大方を理解できたことを示すために頷くと、子供は言葉を続けた。


 「で、この俺は『キューブ』から出たく思ってる。その為には外部からの干渉……助けが必要なんだ。だから、ちょうどいい具合に死んだ君の魂を人格だとかごと此処に召喚させて貰ったわけさ」


 こいつは此処から出たいと考えていてそのために俺を呼んだ……ソレってつまるところ――


 「俺は、生まれ変わらせて貰うためにお前の事を此処から出すための手伝いをしなければ成らない、って事か……」


 俺が考えを纏めるためにつぶやいた言葉を聴いたのか、子供は笑みを深めた。


 「そ、飲み込みが早くて助かるよ君も前の子なんかはどれだけ説明しても理解してくれなかったからね。後は君が承諾してくれさえしてくれれば良い」


 “前の子”? ……俺以外にもこいつと契約した奴らも居るってことか?


 俺の疑問は顔に出ていたのか、そいつが直ぐに謎を解消してくれた。


 「うん。この俺を此処から出すためには一人じゃあ足りないからね。たくさんの子達にも同じようにしてるよ。もっとも、全員別々の“世界”だから君がそのうちの誰かと会うようなことは無いけどね」


 「……なあ」


 「ん? なんだい?」


 「もしも、ノー。といったら?」


 俺の恐れを多分に含まれた言葉を聴いたそいつは益々笑みを深めた。


「勿論、生まれ変わらないさ。此処でこの俺と永遠にいるか、その人格と記憶とを改めて消し去って、別の存在になるかだね」


 またも、憎らしげに唇の片方だけを釣り上げる様子に、俺はもうこいつは俺が何て答えるか知っているかのようだった。


 俺は自分がびびってると言うことを悟られないように努めて気丈に返した。


 だって、そうだろ、誰も自分の意思で死ぬ事と同義の選択なんか出来やしない。


 「……で、お前の手伝い、てのは何をすれば良いんだ?」


 そいつは最早おなじみにすら思える皮肉気な笑みを深くすると、まるで待ってましたを言うようにまた滑らかに喋りだした。


 「なあに、簡単なことさ。この俺が封じられた理由はただひとつ。“運命”の調和を乱す力を持っているからね、ソレを神々は恐れたのさ。以来、時が流れていた事さえも忘れるほどの年月、君のような生まれ変わりの存在何人も送ってきた」


 そいつはまるで自己陶酔しているような熱弁を始めたがこのままだと恐ろしく話しが長くなりそうなので早々に打ち切らせて貰う。


 「だから、ソレで何をすれば良いんだよ」


 そいつは俺の急かす言葉に如何にも気分を害した風にため息を吐くと漸く本筋を話始めた。


 「ハア……君が急かすから理由は省くけどつまりこの俺は調和が乱れれば乱れるほど力を取り戻すのさ」


 なるほどな。それでもってこいつはどう考えても他人の為に大人しく使用なんて奴じゃあないだろう。どう考えても神様達のほうが正しい。


 けど。


 「じゃあ俺は調和を乱す為に何をすれば良いって言うんだよ」


 「まあ聞いてよ。それでさ、神々は“調和”をより整然とする為に、世界に“調和”を齎す存在を作り上げたのさ。この俺はそういう魂の持ち主を“英雄"だとか“光の者”だとかって呼んでる」


 それは、まさか……!?


 そいつは俺の顔色が変わったのを見てとったんだろう。小さく浅く頷いた。


 「うん。君には“光の者”を殺して貰いたいんだ。そうじゃなくても彼らが運命に“調和”を齎すのを邪魔して貰いたい。ソレが、君を生まれ変わらせるための条件さ。まあ、でもやっぱり万全を期する為に殺してくれると嬉しいけどね」


 殺さなくても良いという言葉に俺は胸を撫でおろした。それなら……


 

 「オーケー。話は飲み込めた。だけど、その“英雄”とやらとその他はどうやって見分ければいいんだよ」


 「ああ、それなら大丈夫さ」


 この時、俺は視界がだんだん暗くなってきていることに気がついていなかった。


 「きっと、向こうに着けば、何もかも分かるから……――」


 っておい!?


 俺はそいつがそう言った瞬間真っ暗闇に覆われた視界に気がつき、そして


 意識を失った。

















 「あかちゃ! あかちゃ!」


 「こら、もっと優しく撫でて! でもうふふ。そうねラークは弟と妹、どっちがいい?」


 「ん~……おとーと! それでねそれでね! とうちゃとおれと、一緒にたんれんするの!」


 これよりこの幸せな一家の予想を超える幸せが訪れることを、まだ、誰も知らない……! 

シリアスっぽい雰囲気出してますけど多分それはまやかしです

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