『光の者』の死
その日の日本は全国快晴だった。北は北海道、南は沖縄に居たるまで青空をのぞかせた珍しい一日だった。
だからだろうか。普段はそんな事はしないのだが朝っぱらから散歩に出かけた。
特に目的も無いのだがいつも見ている場所では面白くないと思ったので普段はあまり利用しない公園方面の大通りに歩を進めた。
どうせなら久しぶりにその公園に行ってみようと思ったからだ。最後に行ったのは小学生の頃だったからもう8年以上足が遠のいていたことになる。
昔馴染みの友人達も誘おうかと考えたが。うるさくなるからゆっくりは出来ないだろうなと思ってやめた。
今思えば、それは正解で失敗だった。
公園は自宅から2kmほど離れたところにあるのだが、幼児のときから運動はしてきたから体力に自信はあったし、歩いていくことにした。
多分、まだ朝の9時くらいで、風は涼やかだが、日差しが強かった。もう公園が見えてくる、という所までくると、軽く汗ばんで来ていた。
公園の入り口に当たる松の木の並木道に差し掛かった時、小学生の一団が見えた。
大通りをはさんで対岸に居て、オレとちょうど同じくらいの速さで進んでいる。
サッカーの練習だろうか。おのおのがボールを蹴りあっていた。
懐かしいな、オレも足壊す前はサッカー一筋だったからな。
歩きながら、微笑ましいともいえる光景を見ていたとき、車が列に成って道路を通ってきた。
公園を整備するための業者のトラックだろうか。2、3台通り過ぎた後に、後方に遅れたのが一台見える。
運転手は遅れを取り戻そうと必死になっているのか、やや慌てた表情をしているのがフロントグラス越しに見えた。
その時、視界の端にボールが転がるのが見えた。どうやら少年の一人が誤ってボールを通りに投げ出してしまったらしい。
このとき、僅かに危機感を覚えたが、トラックとボールとの間にはまだかなりの開きがある。
普通に取ろうと思えば特別何も無くボールを取ることは出来るだろう。
が。この時にオレはイヤな予感がしてならなかった。
気がついたときには足が地面に張り付いたように動かなくなっていた。
もしも、この時にそのまま進んでいれば、オレは取るに足らない一生を送っていけたかも知れない。だが、そんな根腐れを起こした安寧は、次の瞬間には頭から吹き飛んでいた。
ボールを追いかけたままだった少年は、ほとんど通りのど真ん中で追いつくと、ふと顔を上げて、ボールを胸に抱えた。
近くにトラックの音が聞こえてくると、男の子はそっちに目を向けて、同時に、体を固まらせた。
その瞬間に、入れ替わるようにオレの心を縛っていた何かがはずれ、考える前に既に体が動いていた。
足よりも先に手が、手よりも先に声が、オレの思考を上回った。気がついた時には、オレの体は勝手に動いて……
そして、暗転した