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サラリーマンKの非日常  作者: ニット帽
3/8

第三話 歌の青年

 歌が聴こえる。

 つぶやくような声なのに、鮮明に聴こえる。

 どうして?

 ドイツ語?聴いたことがあるような気もする。


 こんな人ごみの中で、誰が歌っているんだ?


 ビルが横向きだ、木村がこちらへ何か言いながら走って来ている。神谷は?

 -それより!

       あの青年はどこへ行ったんだ?


 「柏原さん!」

木村の声だ。

 「大丈夫ですか?」

木村の声。俺は倒れているのか。どうしてこんなところで・・・。

頭が痛い。アスファルトが硬い。吐き気がする。


木村に抱えられてようやっと起き上がる。倒れた時にこめかみを打ったのか、血が出ていた。駅前のロータリー近くで倒れた。対象者の青年を追った梶本が戻ってくると、首を横に振った。

神谷は冷静な無表情のまま、何も言わない。俺がこんな目にあっているのに。


午前中にオリエンテーションが済み、座学もそこそこに実地研修に駆り出された。

”顔色確認”という名の対象者確認、SLAのもとにリストアップされた対象者の顔を実際に”みる”だけの調査だからと言われ梶本についていった。リストに載っていた青年は青白い顔をした美青年だった。先程までそこのロータリーを人ごみに紛れて歩いていた青年だ。太陽光の元で見ると、それ程酷い顔色ではなかった。色白だが、青いというほどではない。こんな普通の青年が大罪を犯す可能性が高いなんて、信じられなかった。


 ふと、神谷が怪訝な顔をした、その瞬間、あの歌が聴こえてきた。流暢なドイツ語で、聴いたことがあるような旋律。歌っているのは、対象者の青年!?


ー 瞬間、10メートルほど向こうにいたはずの青年が目の前に迫っていた。

ー つぎの瞬間、ビルが横向きだった。


 俺は青年の顔を見たはずなのに思い出せなかった。梶本さんは青年を追ったが駅に入り、見失ったらしい。その日は4人で一旦、病院へ行き、後日、青年について当局のデータベースから詳しく調べなおすことにしよう、と梶本が提案した。

「無理させて本当にすまなかったね。今日はゆっくり休んで。」梶本は青年の様子はおかしくなかった、こちらの正体には気づくことは有り得ない。気にすることはないだろう、と言った。


ー 後日、青年については調べなおされたが、突然引っ越したらしく、行動がつかめなくなった。

  ”顔色確認”については黄色(黒、赤、黄色の順で精神状態が悪いらしい)とされ、歌の青年についての行動監視は打ち切られた。



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