表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝立梅ヶ丘魔導学校遊々記  作者: タカハシあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

39 ここにきた理由

 召喚を終えて戻ってくると、カード争奪戦は終了したようで、各自手に入れたカードを手に歓喜し合っていた。たが、そんな中で藤月さんら紅薔薇団だけは意気消沈していた。


 どうしたの?


「二枚しか勝ち取れなかったみたいよ」


 星華ちゃんの横に座っている鈴子ねえさんがボクの心の声に答えた。


「なにしてるんです?」


「お茶してるの」


 新しく出したカップに紅茶を注ぎ、ボクの食糧バックから勝手にお菓子を出してパクつく腐れ女子。素直に聞いたボクがバカでした。


 ため息一つ吐き、落ち込む藤月さんへと向かった。


「やれやれ。藤月さんたちにはいっぱい勝ち取って欲しかったんだけど、ダメだったか。やっぱり真に実力がある人は運までいいんだから参るよ」


 キョトンとする藤月さんは、ニコニコするボクをしばし見詰めたあと、星華ちゃんや高明へと目を向け、またボクに戻ってきたときはいつもの歌劇団的な笑みに戻っていた。


 その間、九秒。たったそれだけの時間でボクの言った意味。星華ちゃんがした理由。高明が関わらない事実を整理して答えを導いたその思考力。そして、それを快く飲み込む心力。久し振りに鳥肌が立ったよ……。


 そんなボクにクスリと笑う藤月さん。


「合格点は頂けたようですわね」


「ったく。百点満点のテストで二百点取られた気分だよ」


 肩を竦め、キーの束を藤月さんへと放り投げた。


「あら残念。四百点は取れるように精進しますわ」


 止めてくれと腕を振り、席へと逃れた。


「さて皆さん。カードを試したいのはわかりますが、それは家に帰ってからにしてください。各リーダーは免許所得者と一緒にわたくしのところに集まってくださいな」


 晴れやかでハツラツとした藤月さんの声を耳にしながら鈴子ねえさんが注いでくれた紅茶を堪能した。


 五分ほどで班編成が終了し、買い出し班、銃の選別班、炊事班に分けられた人たちが動き出した。


 そんな統一された動きを見ながらお茶にお菓子を口にしながら体力を回復していると、海璃ちゃんがそわそわし始めた。


 どうしたのと尋ねる前に席を立ち、手伝ってきますと宣言して炊事班に混ざり混んでしまった。


 いったいなんなんだと首を傾げていたら、今度は焔がそわそわし始めた。


「焔、どうしたんだ?」


 だが、焔は答えない。ボクと鈴子ねえさんを交互に見た後、なぜか俯いてしまった。


 まあ、無理に聞き出すのもなんなのでそのままにしておいた。


 それから紅茶を六杯お代わりし、お菓子を食い尽くした頃、やっと焔が顔を上げた。なにやら決意した顔でだ?


「そう。じゃあ、話すわね」


 と、今まで沈黙していた鈴子ねえさんが口を開いた。こちらもなにやら決意した顔、でだ。


 なんだか嫌な予感しかしないが、ここで逃げたところで救いはないだろう。まあ、逃げなくても救いはないだろうがな、この空気からして……。


「あなたも志賀倉に守られたのなら志賀倉の狂愛がどれほどのものか理解できるでしょう」


「……はい……」


「わたしも姫子と知り合ってから志賀倉の狂愛を何度も見てきて理解していた。けど、それは勘違いもいいところ。まだまだ底があったわ……」


 ……なんなんだ、いったい……?


「会ったこともない。見たこともない。ただ手紙で家族が増えただけと言うだけで志賀倉の人間は心から喜び、侮辱を受けたことに腹を立てる。そして、どんな災いからも守ろうとする。それだけならいつものことと流せた。気にもしないことだわ。けれど、その中で一人、志賀倉の業を絶つと宣言した者は、守るのではなく攻めを選んだ。攻めるとは言っても敵は強大。一国家。志賀倉とは言え歯向かえる相手ではない。では、どうする? その者は考え、一つの方法を思い付いた。相手が強大なら対抗する数を増やせばいい。革命軍を組織し、ドサクサに紛れて殺せばよいと……」


 鈴子ねえさんがボクを見るが、なにを言っているかわからない顔で受け止めた。


「……それは自力で考えたんでしょうね。けどそれは、大国が資源が眠る発展途上国を手に入れたようと企むのと同じこと。ちょっとした国のちょっとした情報機関なら瞬時に理解し、大国なら誰が企んだかを突き止めるわ。時代遅れもいいところ。直ぐに引っくり返せるほど稚拙な企みだわ。けど、それをやろうとしたら入念な計画を立てる必要がある。指揮者の選別。革命軍の発足。それの維持管理。どれだけの苦労と資金を必要とするか考えるだけで胃が痛くなるわ。なのに、その者はたった半年で指揮者と二百名にも及ぶ革命軍を組織し、一年でちょっとした軍にも負けない戦力を整えた。聞いたときは笑ったわ。だって不可能だもの。今時のライトノベルでもマシな設定を思い浮かべるわ。けれど、一月ごとに送られてくる報告はとても残酷だった。二月前の報告では革命軍は六千まで膨れ上がり、もはや軍隊と呼べるものになっていた。しかも、ことが成功した後の計画も万全。幾つかの国際的企業が後ろ楯なり、地下に眠る希少金属希少土類を元に民主化すると言うのだから目の前が真っ暗になったわ」


 またこちらを見るが、ボクの表情は変わらない。なに言ってんのこの人? 的な表情だった。


「まったく、普段は心の声だだ漏れのクセに、ここぞと言うときは顔に出さないんだから……」


 ため息を吐く鈴子ねえさんだが、なぜかニヤリと笑った?


「これは長年派閥争いをしてきたおねえさんからの忠告。強敵は徹底的に潰すこと。潰せないのならしっかり見張ること。ましてや敵は志賀倉の始祖の再来と言わしめた七緒ななおちゃんよ。負けたからと言って大人しくしているはずがないわ。心を隠し、陰で動き、着実に味方を増やし、次期役員会が気が付いたときはもはや手遅れ。次期当主が知らぬまに全てを押さえられてしまったわ」


「………………」


「結果、君はここに縛られた訳。でも、わたしはそこに関与はしていない。なぜならその計画に反対したから」


 思わず表情を崩してしまい、鈴子ねえさんを凝視してしまった。


 ……まず間違いなく関与していると思っていたぞ……。


「確かに君をここに縛り付けておくには家族を持ち出すのが有効でしょう。けど、それは問題の先送りでしかない。計画が未熟だったと学ばせるだけになる。直ぐに思考を切り替え、更に悪辣な計画を企て、今度こそ邪魔されずに実行するでしょう。守るべき者は近くにいる。大切な人も近くにいる。なんの憂いもない。それこそ君の思う壺。なんせ君は影の人。自分に集中してくれた方が実行する者が動きやすい、って君は笑うでしょうからね。わたしはそれが怖くて関与できなかった」


 ……なんて言うか、鈴子ねえさんの中ではボクはどんな悪党になっているんだ……?


「わたしは君に関して過小評価はしない。微塵も油断しない。あり得ないとは思わない。君を三百六十度包囲し、更に五重六重と包囲してもまだ足りない。なぜなら君はその状況を利用する。自爆用で足止めし、光で眼を潰し、煙で場を乱す。その隙に包囲する者から服を奪い取り脱出する。もしくは毒を撒き散らして脱出するでしょう。不可能とは言わせない。君は少なからず四度はやっている。星華ちゃん相手に。わたし相手に。コルド紛争地帯で。暗殺集団のアジトで。十四の少年がね。なぜとは聞かないでよ。まあ、どうしても聞きたいのなら一生おばさまの下で楽しく生きる覚悟を決めてね」


 どう? と言う表情に全力で聞きたくないと言う表情で答えた。


「あら残念。おばさまがっかりするわね」


 ああ、思う存分にがっかりさせてやってくださいな。


「君の心を折るのは不可能に近い。いえ、それは正しくはないわね。人より頑丈とは言え君の心も折れるわ。後悔し苦悩して涙を流しもする。それはもう見ている者の目を逸らさせてしまうくらいに、ね。でも、わたしは目を逸らさない。君は心を折っただけ。粉々に砕け散った訳ではない。少しずつ、少しずつ心を修復する。なにがいけなかったのか反省し、これからなにを学べばいいか検討する。必ず自分の力で立ち上がる。わたしはそんな君を二回は見ている。わたしがもっとも恐ろしいと思うのは、心を折りながら立ち上がった人には影が生まれるのに君にはなにも生まれない。必ずある重い気配がまったくない。なんの不自由もなく育った普通の男の子にしか見えないのよ」


 それのどこが恐ろしいんだ?


「わたしはこの能力のせいて小さい頃から化け物と罵られ、恐れられ、存在を否定されてきた。両親ですらわたしを認めず、遠ざけ、疎んだわ。それも当然よね。ちょっとした感情の起伏で吹雪を起こし、周りを凍らす。その被害と言ったら自然災害級。両親は何度も死にそうになったそうよ。そんなわたしの幼年期は孤独が安らぎ。心を閉ざすことが生きる理由だったわ。でもね、そんなわたしの安らぎを破る者が現れた。その非常識はわたしの作った壁をぶち壊し、有無を言わせず外に連れ出した。余りのことに抵抗するのも忘れたくらいよ。我を取り戻したわたしは荒れ狂ったわ。周りを凍らせ。けど、その非常識は、いえ、その非常識一家は、わたしを怖がるどころか楽しそうに感情の揺れを乱してくれたわ。訳がわからなかった。戸惑った。どうしていいかわからず逃げ出したけど、それを許してくれる非常識一家ではなかったわ」


 まあ、あの母でりあの父でありあの姉である。ドラゴンですら逃がさないだろうよ。


「わたしはその非常識一家のお陰で笑えている。人の心を失わず人の世界で生きていられる。でも幼年期の傷は消えたりはしない。この能力に怯える目に心が傷つく。その度にわたしは化け物なんだと教えられる。その負は壁を生む。いけないと思えば思うほど壁高くなり厚くなる。心が歪んで行くのよ」


 まあ、確かに正常とは言えんな、この腐れ女子は。


「それが人として正常な証。ましてや心がまだ形つくられていない幼少の頃なら当然。ならない訳がないのよ。なのに、この男の子にはない。六歳で精霊獣を宿して死にそうになり、同時に両親は離婚。十歳で大好きな祖父が他界。十一歳で志賀倉を狙う組織に誘拐され、叔父や同胞が重症を負う。家族思いの強い子なら心が砕けてもおかしくはない。悔恨で立ち上がれなくても責められはしない。けど、この男の子は自力で立ち上がった。自力で心を癒したのよ。それから幾度となく大変なことがあったと聞くけど、やはり出会った頃と少しも変わっていない。まあ、それは言い過ぎかもしれないけど、心のありようは全然変わってないわ。わたしの力を見て驚きながらも否定はしない。怖いと言いながら離れたりはしない。わたしのような者にとっては嬉しい反面、不思議でたまらなかった。姫子の場合は単純だった。あの娘は野望があったから強い味方が欲しかっただけ。他からみたら利用されていると見えるでしょうけど、その動機も単純なら根も単純。思い立ったら吉日のバカ娘。もうほっとけないったらありゃしないわ。頭がいいんだからもうちょっと考えてから動きなさいってのよ」


 グチを言いながらもその顔は嬉しくてたまらないって語っていた。


「──ごめんなさい。話が飛んじゃったわね。まあ、姫子が余りにも単純さに毒気が抜けちゃったからそのバカの弟に目を向けるのに時間が掛かってしまったのよね。正光くんが十二になる前かしら? やっと思い出したわたしは勝負を挑んだ。心の奥になにを隠しているか確かめるには戦って見るのが手っ取り早い。正直者と言う毛皮を被り、のんびり草を食む羊でも追い込まれたら狼でも突き飛ばすからね。とは言え、この羊さんの逃げ足は天下一品。並大抵のことでは戦ってくれなかったわ」


 当たり前だ。誰が好んでアイスハザードと戦いたいかよ。逃げるに決まってんだろうが。


「おじさまの力を借りてやっと戦いの場に引きずり出せた。場所は米国の山奥。相手は陸軍の特殊部隊とわたし。勝負の方法は包囲を突破すれば正光くんの勝ち。突破されなければわたしたちの勝ち。至って簡単な戦いよ」


 それを用意して単純と言い捨てる腐れ女子。過小評価しない? 微塵も油断しない? あり得ないって思わない? 畜生が、それはこっちのセリフだっての!


「結果から言えば正光くんの勝ち。油断しきった特殊部隊を軽々と破り、本気のわたしから逃げ切ったわ」


 焔からくる信じられないと言う気配を無視しなから紅茶を啜る。


「特殊部隊の人たちは余りのことに絶句していたけど、わたしは安堵したわ。やはりこの男の子も非常識。あの両親にしてあのバカの弟だわって。でも、それは大きな勘違い。まだ正光くんを理解していなかった。その戦いの次の日、おじさまが信じられないことを告げたわ。戦いに参加した特殊部隊の装備一式、輸送に使われた車輌、そして大量の弾薬がどこかに消えたとね。愕然としたわ。犯人は正光くんしかいない。そうわかるのに、いてそんなことをしたのかわからないんだからね。とは言うものの、カードのことは知っていたし、抜け目ない性格なのも知っていた。だから少々は懐に入れるんだろうとは思っていた。それがまさか根こそぎとは夢にも思わなかった。もう生まれて初めて腰を抜かしたわ。けど、それは序の口。悪夢の序章でしかなかった。やっと我を取り戻した頃、おばさまから電話が掛かってきた。新しく志賀倉の子となる女の子を面倒見て欲しいとその女の子は国を追われ、反乱を起こした将軍から命を狙われているからと気を付けてくれと。あと、絶対に正光くんには知らせないでくれと、ね。おばさまが画策したと言うのならその女の子は志賀倉に受け入れられて一週間も経ってはいない。いいところ四日でしょう。たった一日か二日の僅かな時間で正光くんはわたしとの戦いを妹の名誉を守るための武器調達の場にすることに決めたのよ」


 鈴子ねえさんからくるなんとも言えない眼差しを受け流しながら紅茶を飲み干し、お代わりを注いだ。


「直ぐに革命軍を組織することが頭に浮かんだけど、バルトリア公国はEU諸国と露四亜ロシア帝国との間にある。米国の武器では目立つし、米国が裏にいると見られたら露四亜帝国が黙ってはいない。だからと言ってEU諸国製や露四亜製の武器でも不味い。どちらにしても大国に介入されてしまうからね。武器は自軍が採用しているイスリム社製の自動小銃か露四亜製の中古がベストのはず。ならどうして米国の武器を? 米国を巻き込むため? いいえ、どちらが出てきても食い潰されるのがオチだわ。革命軍が失敗したときの保険? いえ、露四亜帝国の介入を許す理由になるわ。そんなことを考えていたら一年が過ぎたわ。煮詰まったわたしはおじさまに相談したら、おじさまが気になることを話してくれた。仏欄西フランスで奇妙な傭兵会社があると言うの。傭兵会社があると言うのにも驚いたけど、その傭兵会社は米国の退役軍人が六割占め、残り四割はバルトリア公国出身者と言うんだからびっくりよ。これはもう正光くんがしていると決め付けたわたしはおじさまに調べてもらったわ。創立者は謎だったけど、その傭兵会社は革命軍の訓練所だったのはわかった。……その態度からしてバレたときの対処も万全のようね」


 どんな態度だよとは突っ込まない。ハッタリかもしれないからね。


「七緒ちゃんが動いた。おばさまも動いた。米国も動いた。三年にも及ぶ計画はこれで水の泡。また最初から頑張ってと言いたいところだけど、やはり時間稼ぎでしかない。更に悪辣な計画を練られるだけ。なにも解決にはなってないのよ。このまま行ったら正光くんはテロリストと見なされてしまう。今でさえ米国のブラックリストに名が刻まれ、日本帝国からは要注意人物として見られている。幻のような規定で梅学に入れた本当の理由はそれなのよ」


 なにか言えと気配が肌を突き刺すが、ボクは構わず紅茶を楽しんだ。


「それを知ったところであなたの心が揺れたりはしないでしょうし、止まらないでしょう。必要とあればテロリストでもなんにでもなるのが志賀倉だからね。だから閉じ込めるだけではダメ。縛り付けておくのもダメ。説得なんてするだけ無駄。ならばどうする。どうすればよい。どうすればその心を変えられる。答え。煽ってやればいい」


 よくわからない理由に思わず紅茶を飲むのを止めてしまった。


「正光くんの性格は、無鉄砲で思ったら吉日で冒険が大好きで仲間の名誉が傷つけられるのが大嫌い。認めた人にはとっても優しくて真っ直ぐなのに、嫌いな人にはとことん悪辣になる。ちょっと負けず嫌いな性格が対抗心を刺激する。こうして言葉にすると、なんとも愛すべき性格じゃないの」


 それを一言で纏めると『子供っぽい』ってんでしょう。


「ほんと、そう言う根っこのところは姫子そっくりなんだから姉弟って不思議よね」


 こっちは弾丸で頭を撃たれたかのような衝撃で気絶しそうだよ。


「それなら手はある。今の一年はとても優秀で愛すべきキャラクターが大勢いる。ライバルも敵もいる。利用できる場所があり実行する権力がある。とは言え絶対の自信があった訳じゃない。あの七緒ちゃんと競って次期当主の座を勝ち取るほど。志賀倉の業にあなたの性格が勝るかは賭けだったわ。もう仕掛けるのに苦労したんだから。けどまあ、その甲斐はあったわね。まさか正光くんが自分のために笑ってるところを見れたんだからね」


 あん? 自分のために笑う? なにそれ?


「そうね。その違いがわかるのは君のの横に立てる者か小さい頃から君を見ている者くらいでしょうね。君が家族に向ける笑顔はとっても優しくて暖かみがあるけど、自分のために笑っているときはバカみたいに輝いていて、周りなど見ていない。わたしとしてはその笑いが大好き──おっと。これ以上は星華ちゃんを鬼にしちゃうわね」


 鈴子ねえさんの視線を追うと、いい笑顔をした星華ちゃんがボクを見ていた。


 ──怖いッ!!


「とまあ、煽るのと同時に所有している武器も消費させておきたかったんだけど、予想以上に溜め込んでいたようね。まったく、どこから調達してくるんだか。中東やアフリカ、米国の武器商人のルートは、おじさまが潰してくれたし、正光くんの過去の行動から三倍の迷宮獣を仕掛けたって言うのに、まだ隠して持ってそうな顔してるんだから嫌になっちゃうわ」


 どうも最近、武器調達が苦しいと思ったらこの腐れ女子のせいだったねかよ!


 ったく。ほんと容赦ねーな、この腐れ女子は。子供一人で武器買えるとこってなかなかないんだからなっ!


「潰せるものは潰した。煽れるだけ煽った。まあ、君の奥の手は見られなかったのは残念だけど、0から計画を立てるには相当の時間を費やすでしょう。けど、言ったようにわたしは君を過小評価しない。微塵も油断しない。あり得ないとは思わない。だから、君が動いたと思ったらわたしは全力で阻止する。なんでも利用する。相討ち覚悟で君に挑む」


 ここで反論したら鈴子ねえさんの思う壺なんだろうな~。


 なにも言えず、ただ紅茶を飲んでいると、鈴子ねえさんの視線が焔に向けられた。


「ごめんなさいね。おばさまや志賀倉の皆には深い恩がある。あなたを大切に思う。けど、わたしか切に願うのは正光くんの幸福。こんな化け物をねえさんと呼んでくれる弟の未来なの。だから後悔する日がきたらわたしを恨みなさい。罵りなさい。わたしは──」


「──しません! 後悔なんて絶対にしません! 兄様にもそんなことさせませんっ!!」


 と、焔が叫ぶ。


「もうわたしのために大切な人が傷つくなんて嫌です。もう見たくありません……」


 今にも泣きそうな焔に大丈夫だと笑ってやりたいが、今のボクには自分の心を押さえるのがやっと。少しでも焔に意識を向けたら敗北決定。焔を救う可能性を潰すことになるのだから。


「なら笑いなさい。楽しみなさい。力の限り生きなさい。それが微かに残った可能性を潰すことになる。正光くんを守ることになる。あなたは、それだけの力を持っているのだからね」


「……はい。笑います。楽しみます。力の限り生きると誓います……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ