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帝立梅ヶ丘魔導学校遊々記  作者: タカハシあん


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29 集う者たち(下)



「おれは陽炎忍群一年頭、矢沢やざわ翔輝しょうきだ」


「あたしは栖輪忍群一年頭の栖輪すわ温子あつこよ」


 二番目に口を開いたのは至歩ちゃんくらい小さなだった。


「自分は剣連会一年隊隊長の芹沢せりざわなおです」


 三番目はいかにも武家の出と言った感じの男子だ。


「わたしは紅薔薇団一年代表、藤原ふじはらしおり。お見知り置きを」


 どこぞの歌劇団にいそうな女子が、これまた歌劇台に立っているかのように自己紹介をした。


「おれは朝霧組組長、島田しまだ英太えいただ。よろしくな」


 なんともフレンドリーな男子だが、その装備と言ったら切り裂き魔でもダッシュで逃げ出しそうなくらい全身刀剣類で包まれていた。


「じゃあ、礼儀として応えておく。ボクは特殊技能科の志賀倉正光だ」


 各チームリーダーを見回す。


「時間がないので単刀直入に尋ねる。この中で守りに長けた人は誰?」


 六人の目が栖輪さんへと向けられた。


「なら、この基地の防衛指揮は栖輪さんに任せる」


 異存は? と目で問うと、ないとばりに皆は沈黙を守った。


「次に銃に長けたチームは?」


 その問いに皆の目がさ迷った。


「じゃあ、経験者でいい。各チームから二、三人選抜して栖輪さんの指揮下に入れてくれ」


 了解とばかりにリーダーたちが頷いた。


「では、防衛組に選ばれた者たちは左翼側に集合。栖輪さんの指示に従い動いてくれ。残りのチームリーダーは指示と選抜が終わったらまたここに集合してくれ」


 また了解と頷き、一斉に散った。


 ボクも基地の二階へと上がり、レベルアップに勤しむ二人を止めさせ、指示を伝える。


「この二枚のカードにアサルト・ライフルと弾が封印されている。呼び出し方法は、魔法陣を上にして地面に置く。その後、ナンバー、この裏の数字を言い、K装備召喚と言えば二メートル四方の木箱が召喚されるから栖輪さんたちに配ってくれ。このカードには土嚢が封印されている。こっちと同じ方法で召喚されるから基地の周りに土嚢壁を築くように言ってくれ」


 カードを野村さんに渡し、海璃ちゃんを見る。


「海璃ちゃんはリタイアした人の介護を頼む」


 自分も戦いと海璃ちゃんの目が語っていたが、それを口から出される前に二人の首に腕を回して抱き寄せた。


 ごにょごにょと二人だけに聞こえるように小声で囁いてから二人を解放する。


「じゃあ、しっかりね」


 目を大きくさせる二人にウインクして一階へと下りた。


 幾人か疲労に崩れる同盟諸君のためにサバイバル・カードから水を召喚して渡した。


 パックになったペットボトルを持って戻ると、まだ各チームリーダーは戻ってきてなかった。なので今のうちと、アイテム・カードから各種の銃と弾を召喚し、順次戻ってきたリーダーから仲間たちの名を聞いたり、迷宮獣に目を向けたりと、全員が揃ったところで腕時計を見る。


 ……十時三十九分か。昨日までの優雅な日々が遠くに感じるよ……。


「正光」


 おっと。いかんいかん。今は過去より未来に頭を働かせろだ。


「誰か鈴子ねえさんの行動を理解……するのは無理だから、この一連の動きをどう見る?」


 ボクの問いに各チームリーダーたちが高明を見た。


「ったく、そんな目で見るな。あの人が姫騎士団の中でも異質なのは皆が知るところだろうが。長年の親友たる姫ねえですら雪姫先輩の頭の中は混沌だと嘆いてるくらいなんだから。ましてや、あの人が本気になったら梅学に対抗できる奴なんていない。四姫が総力で雪姫先輩の計画を探ろうとしたが、どれもこれも雪姫先輩の用意した罠に阻まれて断片もつかめなかった。もう姫ねえなんて血管切れるんじゃないかってくらい激怒するし、おれへの指示も対処不能になったら正光を頼れときたもんだ。もう聞いたときは我が耳を疑ったもんだ」


 ボクも未だに我が耳を疑ってるよ。あの自信家で自尊心の高いアホ姉が弟に頼れなど、世界が滅んでもないと信じていたのだからな。


「まあ、わたはたちもなにか不測の事態に陥ったら姫騎士団につけと指示されてますからね」


「うちもさ。とにかく生き残れ。そのためなら姫騎士団の下につくのも許すときたもんだ。まったく、丸投げだぜ」


「指示があるだけマシよ。うちなんて臨機応変に動けよ。もう責任放棄だわ!」


「それでもマシだぜ。うちのお館さまなんて『絶対生き残れ、失敗は許さん』だぜ? もう責任の押し付けだ。そんなに一族繁栄が大事なら自分の代でやっとけよ。平の下忍に押し付けるなってんだ!」


「命令するら的確な指示と方法を授けて欲しいものです」


 どこも事情は同じなようで、ここぞとばかりに愚痴っている。なんっーか、お気の毒さまです……。


「だから、さ」


 と、高明の言葉で全員がボクに視線を向けた。


「雪姫先輩が唯一認めたお前に付く。お前の指示に従うんだよ」


「ええ。わたしたちもあなたに付くわ


「自分たちもです」


「それ以外に選択肢はないしな」


「おれら陽炎もだ」


「同じく栖輪もね」


 全員がボクに従うと言う。


「……どう言うことだ……?」


 訳がわからず思わず高明に説明を求めると、なにやら肩を竦めて他のリーダーに話を任せた。


「小中高と生徒会長を務め、長年のライバルたる武田鷹貴ですら正しく評価する服部姫子が弟だけは感情的に罵る」


 と、島田くん。


「その智謀も魔力も数百年に一人の天災(天才)、愛原鈴子があなたを語るとき、天使にも悪魔にもなれる化物だと言う」


 と、藤月さん。


「服部姫子と武田鷹貴が次期後継者にしたいと言わしめた柳生星華にその強さを聞くと、幼なじみがいるからだと答える」


 と、芹沢くん。


「そんな話を聞かされて無関心でいられる者はここにはいない。いつお前が梅学にくるか戦々恐々だったよ」


 と、矢沢くん。


「なんども言うが、この年代は有名な一族の後継者や子弟が多く集まっている。一族の明日を担うだけあって能力の高さも他の年代より上を行っている。それは小等部の頃からやりあっているおれたちがよくわかっている」


 と、高明も口を開いた。


「ちょっとでも油断したらあっと言う間に順位は下がる」


「ええ。毎日が戦い。毎日が修行でしたわ」


「けど、どうだい。どんなに頑張ろうと、服部姫子も柳生星華もおれたちを見ない。ライバルとも思ってない。これっぽっちも脅威とは感じてない」


「正直、恨みもした。バカにするなとも叫んだよ」


 危機的状況なのに、皆の言葉に引き込まれてしまった。


「つまり、だ」


 締め括るように高明が言葉を紡ぐ。


「ここにいる連中は、お前に嫉妬している。だが、それを圧し殺せるの理性と誇り、そして計算ができる。多分だが、いや、この大会はお前のために用意されたものだ」


「目的まではわかりませんが、対抗しているあなたがよい証明ですわ」


 藤月さんの言葉に皆が同意の頷きをする。


「巻き込まれたとは言え、それに文句を言ったところで意味はない。ここで生き残った者が勝者。敗者にはなにも語れない。なら、勝つためなら誰とでも組むさ」


「そう言えるのは新興勢力だけよ。うちみたいに古いだけが自慢の忍なんか許してくれないわ」


 いつの間にか栖輪さんが現れた。


「だから理由がいりますの。一族の期待やプライドを横に置けるだけの理由が、ね」


「まあ、お前の力を見るだけならあっちについてもよかったんだが、おれ的には武田のやり方が気に入らんし、伊賀や甲賀の下につくのはかんべんだ」


 島田くんのセリフに全員の目が反対側に集結する集団に向けられた。


 この目に狂いがなければクソ野郎を中心に三十人以上の集団が徐々に軍団となって行く。


「幕田が抜けた割りには結構な人数が集まってるな?」


「柳生ファンや一般組もいるな」


「武田の一番槍たる真田一党は当然だとして、伊賀や甲賀がつくなんて意外です」


「なんだ、知らないのか? 伊賀も甲賀も裏で武田から援助されてるんだぜ」


「なんだよそれ? いつから朝霧は情報通になったんだよ」


「そんなんだから陽炎は戦闘バカって言われるのよ。もっと情報の大切さを学びなさいよ」


「ああ、そうする。だが今は志賀倉から学ぶ方が先だ」


 全員の目がボクに集中する。


「お前とは確かに従兄弟だが、二、三度会っただけでお前がどう言った男かは知らない。どんな能力があるかもわからない。わからないから近くで見るまでだ」


「ええ。またとない好機ですわ」


「同盟を組めば生き残れる確率も高くなります」


「ああ、一石二鳥とはこのことだ」


「たった一時間半の間に何度目から鱗が落ちたか。ここまできたら一生分の鱗を落とさせてもらうわ」


「銃がこれほど役に立つとは思わなかったぜ」


「明日からは銃の練習もしなくちゃな」


 不敵な笑いと挑戦的な眼差しに言葉が出てこない。


 こいつら本当にボクと同じ歳なのか? とても十五年しか生きてない者のセリフじゃないぞ。どんだけ熟成されてんだよ、こいつらは……。


「さあ、我らのリーダーよ。指示を」

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