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STAGE 3-31 力技では

投稿したつもりが何故か出来てないー!? 申し訳ございません……

 7月9日 13:42



 布都と呼ばれた彼女の背は低い。一瞬、さっき追い払った連中とグルか? と真次は勘繰った。退治屋の子供の声色には、明らかに拒絶の色を含んでいるように思えたから。

 だが、それならば先程の騒ぎの時、一緒に行動しているはずだ。少なくても敵ではないはずと、真次は布都に、何をしたかを答えた。


「あのガキどもなら、上手くあしらったぞ。これは人から人へ移る病気じゃねぇってな」

「む! 我も同じ事を告げたが、あ奴等は全く聞かなかったぞ!? その度にやむを得ず力ずくで追い払ったが……奴等、性根が卑しいらしく、我が居らぬ間にその童を痛めつけるのだ」

「おいおい……それじゃあ逆効果だろう」


 強い圧力での抑止は、圧力が失われた際に反発となって噴出する。

 この場合、布都が強引に追い払ったせいで、彼女がいないタイミングを見計らって退治屋の子供が狙われてしまったのだろう。そしてそれを見た布都がより強い圧力をかけて――反発はますます強くなる。悪循環が出来上がってしまっていたのだ。

 子供が布都を快く思っていなかった理由がわかった。彼女はその場限りでは助けてはくれるが、そのせいでエスカレート彼らの行為が増長したと認識しているのだろう。


「時間かかったとしても根気よく言葉で諭さねぇと。余計な誤解と不満が溜まるだけだ。それがこの子にぶつけられてたんだぞ?」

「ならば、見て見ぬふりをせよと申すか? 親を失った子が、痛めつけられているのを……心ある者であれば、義憤に燃えるのは当然ではないか!」


 ……わからなくは、ない。

 裏目に出てこそいたが、行為に直接加担したり、傍観者でいるよりは、行動を起こしただげ布都は立派だとは言える。真次は余所者であるから、近所付き合いなどを考える必要がないが、幻想郷の住人として過ごしていれば、人間関係は複雑になっていく。絡み合う関係に捉われて、悪いことだと思いはしても、行動に移れなくなる事はしばしあるだろう。

 それに堂々と『否』と叫べるのは悪い事ではない。ないのだが……


「だったら、なんで悪いかを自分たちで分からせないとダメだ。無理やり言い分押し付けたって納得しない」

「しかしだな……!」

「布都って言ったな? 一つ聞きたい。最初はともかく、ここ最近この子から礼を言われたか?」

「……!? 当然……いや……そうでもなかった……か?」


 考え込む布都を横目に、真次は退治屋の子供の方に視線をやった。

 ……彼は、困惑していた。どう反応すればいいかわからない。そんな様子が真次にもわかった。どうやら、この子は賢いらしい。

 不安に駆られて責めた子供たちや、ただ見ているだけの大人たちが悪く見えるのは当然だ。しかし彼らにも彼らなりの言い分があることをわかってはいる。だから、この子は強く反論できなかったのだろう。

 その彼をかばった布都の行動は、決して悪徳の類ではない。けれども、その方法がまずかった。強引な手法では、その場しのぎは出来ても解決には至らない。むしろ、悪化していく一方の方法でしかなかったが……退治屋の子にしてみれば、数少ない味方でもあった。無言で礼を言わない方法でしか、訴える手段がなかった。下手に口答えして、彼女まで敵に回してしまうかも、との恐怖もあったのだろう。

 感情と欲、善意と悪意がごった煮になった今回のことは、そのすべてを丸のみする勢いでなければ解決は難しい。

 

「だから言ったでしょう? あなたはもう、手を出さない方がいいと」

「太子様! ですが……」


 新たな人影が、布都の背後から現れる。布都が言い淀み、ヘットフォンをつけた彼女が布都の脇をすり抜け、退治屋の子供へ歩み寄った。


「……布都が迷惑をかけました。お詫びとして、あなたとあなたの母親を、私達で保護したい。いいですか?」


 少々戸惑ったあと、子供は「母さんに聞いてくる」と告げて、その場を早足で立ち去った。真次は立ちっぱなしで見送った後、新たな人物に目線を向ける。

 同じように子供を見ていた彼女が振り向いて……なぜか目を丸くして呟く。


「貴方の欲の傾向……西本 参真に似ていますね」

「……アイツの知り合いか?」

「ええ、まぁ。彼もなんだかんだで、顔が広いですから」


 意味深に微笑む彼女。社交辞令と受け取った真次は、後は適当に話して引き上げるつもりになった。この件は自分たちで預かると、一線を引く硬質の声色。むっとなったが、首を突っ込んだのは真次で、強引に食い込めば布都の二の舞になってしまうかもしれない。踵を返し、ウドンゲと合流する方に向けた意識が、突然の一言で吹き飛ばされた。


「た、太子様っ! 緊急事態が!!」

「屠自古? どうし――」

「見込みのある弟子たちの修行場に、怨霊どもが入り込んでおります! どうかご助力を!!」


 唐突に表れた三人目の報告に、二人の顔が青ざめる。やや距離を置いてみていた真次にも、怨霊の二文字が嫌に響いた。



7月9日 14:04

やーっと戦闘シーンに移れます。溜めが長くてすいません……テンポ良く書くって難しいですね……

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