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STAGE 3-29 再び、人里へ

まーたちょっとだけ遅刻しましたorz 癖になったらダメですね……気をつけねば

 7月9日 13:11



「納得いきません……納得いきません……」

「そう言うな、ウドンゲ。悪い事じゃねぇんだからさ」


 人里へ向かう途中、ぶつぶつと歯切れ悪く呟く彼女を、真次は困ったように眺めていた。

 昨日、八雲 藍を『悪意を切り離す程度の能力』で治療すると、妖怪特有の回復力でその日の内にほぼ快癒した。元々藍が高名な妖怪だったこともある。呪いさえなければ、どうと言うことはない傷だった。

 今日の午前中には『紫様の指示を仰ぐ。世話になった』と言い残して永遠亭を出立。これで異変が早く終わればいいが……一同で見送る中、ぼんやりと浮かんだ考えを遮るように師匠がぼそりと


「……やはり、いいものですね」


 漏らした言葉。振り向く永遠亭の住人に、師匠が続けた。


「真次先生……治療も、異変解決のために出歩くことも、必要なのかもしれませんね」

「「「「!?」」」」


 方針を覆すそのセリフに、真次とウドンゲが瞠目した。あれほど頑なだった永琳が、である。

 真次は素直に受け止めたが、ウドンゲとしては非常に納得がいかないことだ。無論ギスギスした空気が長続きして欲しいと願ってはいない。姫様やてゐもようやく肩の力を抜いて生活できると喜んでいた。

 だが、師匠の意見自体は『納得はできないが理解はできる』ことではあった。ましてや永琳は月の頭脳と謳われる人物。この程度のことで意見を変えるとは、ウドンゲとしては不気味ですらあった。いっそ真次と対立したままの方が、師匠らしいとさえ思える。


「まさか 八雲 藍 に何かされたんじゃ……?」

「いやいやいや、藍不調だったし永琳に勝てないだろ」

「でも……師匠が心変わりするとしたら、他に考えられません」

「主治医俺だぞ? なんかするにしても、永琳より俺にちょっかいかけないか?」

「うーん……」


 お人よしな真次が呑気なことを言う。だが内容はデタラメではなく、彼の意見通りな気もするが……残念ながら答えは出せそうになかった。


「ほら、人里見えて来たぞ。俺らの様子がおかしいと、人里の人まで怯えちまう。背筋伸ばせ、それでいて鼻につかないようにな?」

「はーい……」


 医者として真次はストイックだ。言葉のみならず表情や所作に至るまで、患者を不安にさせない工夫を身に着けていて、勉強になる所も多い。今回の異変が人間に被害が出るのもあって、人里自体不穏な空気だ。自分たちが不安なのは確かだが、おくびに出さずに安心させるのも、医者の仕事の内なのだろう。少なくとも真次はそう思っているに違いない。

 外から来たはずの彼、自分よりずっと若いはずの彼が、妙に眩しい。真っすぐに生きてきた人だからだろうか? いや、それだけではないのは、師匠との口論で明らかだ。きっと現代でも、それで失敗したことがあったに違いない。

 真次は……それでもと言って、出来ることを続けようとしている。誰でも出来るような小さな積み重ねを、誰にもできない熱量で続けている。


「負けてられません。うん」


 うっかり漏れた本音は、幸いなことに真次に気づかれなかった。

 ――彼が人里の入口での、もめ事に気を取られていたせいで。



 7月9日 13:32

ステージ3長くなってる……そろそろ何とかしたいんですがねー

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