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STAGE 3-23 混雑する永遠亭

7月28日の24:20分投稿だからセーフ! ……ごめんなさい一週間投稿できませんでしたぁ!!

 7月7日 16:17



 永遠亭へ帰還した真次が目の当たりにしたのは、診察待ちで混雑する屋敷内を跳ねまわる、妖怪兎たちの姿だった。

 アリスの屋敷へ出かけたのが7月5日で、開けていたのは丸一日のはずだが……永琳一人では対応しきれなかったらしい。


「! 先生!」

「わりぃ、今戻った!」


 薬剤調合担当のウドンゲも資料を運んでいて、総動員で働いているのがわかる。真次も医者として応援に回れば、幾分か彼女たちの負担を緩和できるはずだ。


「すぐ準備する! もうチョイ踏ん張ってくれ!」

「助かります!」


 疲労を滲ませながらも、溌剌と少女が歓声を上げた。それに応えるためにと、真次はあてがわれた部屋へ急ぐ。ほとんど放り投げるように今までの荷物を置き、着用している白衣を新品の物へと着替えた。外を歩き回った後の白衣は汚れているので、このまま患者と向き合うなんてことは言語道断。いくら真次の人が良いとはいえ、大問題になりかねない。


「うし、これで」


 現代からの習慣だからか、着脱の時間はさほどかからなかった。手持ちの道具もチルノたちの治療に使ったものは、使用済みの場所へ置いておく。後々洗浄・消毒し、使えるようにするために。

 鏡の前で身だしなみを確認し、姿勢と衣服の乱れを無いかをチェック。そうして彼は永遠亭の医師として思考を切り替えた。


(妖怪の患者……怪我人が多いな)


 パッと見の印象ではあるが、順番待ちをしている人々は、人ならざる異形が多いように見えた。今回の異変の影響なのだろうか? 妖怪たちは結構な割合で怪我をしている。

 診療の合間を縫って、真次は永琳のところへ顔を出す。


「永琳先生、すまん。帰りが遅れた」

「いえいえ、無事でなりよりです。真次先生」

「成果もいくつかあったが……それは後でいいな?」

「はい、まずは患者たちの診療をお願いします。隣の部屋を使ってください」

「わかった」


 二人がしたのは、医者としてこの場で必要なだけの会話だった。味気ないようにも見えるが、余計な時間が命取りになることは、医療現場ではザラにある。ある意味必要なスキルなのだ。

 彼女の指示に従い隣へ移動すると、既に整えられた診察室があった。真次が着替えている間に用意してくれたらしい。彼が準備を終えると、受け付け役のウドンゲが告げた。


「真次先生が戻ってきてくれました! 二人での応対になりますので、待ち時間が減ると思います。診察待ちの人は、もう少し待っててくださいね!」


 妖怪たちがどよめいたが、程なくして安堵へと変わっていった。人でも妖怪でも、ただ待たされるのは不安になるのだろう。丁寧に対応しないとな……と真次は改めて気を引き締めた。

 今、永遠亭に来る相手はやはり妖怪の怪我人が多かった。彼らは普段、肉体に傷を負ったところで致命的にはならないが……怨霊の呪いのせいでいつまでも治らず、結果ここへ来ていた。

 本来起こりえない症状に苦しめられ、妖怪たちのほとんどは不安に襲われている。日頃から怪我を気にしない妖怪たちは、その対処法をほとんど忘れてしまっていた。使わない知識や技術は、身につきもしなければ興味も持たない。元々人間だったことのある妖怪や、人間と親交のある妖怪はともかく、つくも神や動物由来の妖怪……つまり医療への理解が浅い妖怪は、かすり傷にでさえ強い恐怖を覚えているようだった。

 診察の人手が二人に増えたおかげで、徐々に待機中の妖怪の数は減っていった。中には……現代にもたまーーーにいる、ダダをこねる困った患者もいたが、おおむね順調に進み、青年が最後の患者を送り出した時「18:55」の時刻を示していた。


「や、やめて! そんな針刺さないで!!」

「大丈夫です、ちゃんとした薬ですから……」

 

 ……一足先に担当を終えた真次だが、どうやら永琳もそういう患者に捕まっているらしい。立場上強く言うことも出来ず、結局10分ほど話し込んだあとで、やっと先生の治療を受け入れた。

 患者が去った後、真次は同僚へこっそりねぎらいの言葉をかけた。


「最後にああいう患者引くなんて、ついてねぇな? ともかく、お疲れ様」

「お疲れ様でした……真次先生も愚痴をおっしゃることあるんですね」

「ハハ、溜め込みっぱなしは精神衛生上よろしくねぇからな」


 二人の苦笑いが重なり、疲労と達成感と安堵が混ざり合った息を吐き出す。

『医者』の仕事は高潔な職であることに違いないが、同時に綺麗事ばかりではやっていられない職業でもあるのだ。こればっかりは、現場に身を置かねばわかるまい。だからこそ、同じ職場の相手との会話は、妙に心地よいと感じられる。恐らく、永琳とも感情を共有できているだろう……などと考えていたのだが。


「っ……」

「ん?」


 不意に、彼女が視線を外した。突然の反応に真次が戸惑う。


「……どうした?」

「え? あー……その、こういうの初めてでして」

「? いや何が?」

「その……『同僚』が今までいませんでしたから」


 言われて、真次は納得した。

 永琳とウドンゲの関係は『師匠』と『弟子』なのであって、立場は対等ではない。今日のように忙しい時は手伝いもしているようだが、それも役職としては看護師や受付事務の仕事だろう。輝夜とてゐはそもそも働いておらず『同僚』としての会話は初めてだった……ということか。


「そーいや、二人で診察請け負うのも今日が初めてだったな」


 立地の悪さから、人間は簡単に永遠亭には来れない。だが、妖怪ならまだこの場所へ来ることは難しくないのだろう。異変の性質もあって、今日ほど混雑する日はなかったのだ。


「ええ、そうでしたね……本当に、今回の異変には困ったものです。早く解決してもらいたいものですね」

「……それについてだが、悪い知らせといい知らせがある」

「先ほどおっしゃっていた『成果』ですか?」


 真次は無言で頷いた。


「一旦片づけてからにしましょう。食事の後にします?」

「そうだな。ここのみんなに知らせておきたいし、意見も聞きたいからな……」


 悪い知らせなのを知っている真次は、表情を曇らせた。そんな彼に永琳は優しく語り掛ける。


「大丈夫ですよ、先生。あなたはやれることをしています」

「だといいんだがな……っと、いけねぇ。いつまでも話し込んでてもしょうがない」


 すっきりしないままの真次だが、永琳の言葉に含まれた暖かさが身に染みた。

 異変に対し、不安も焦燥も感じている。が、彼女の横顔を見ていると、案外何とかなるかもな――そんならしくない楽観が、青年の心身を軽くした。



7月7日 19:11

途切れたのもあって、時間の感覚がぐっちゃぐちゃになってますね……こんだけのーみつで作中内で時間ほとんど経ってないってどーなのよ、私。

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