STAGE 3-21 神社に何が?
ステージ3が間延びしてるぅ!? しかもまだ脳内では中盤ぐらいなんッスよ……大丈夫かなぁ……?
7月7日 13:25
面倒くさそうに博麗の巫女が、真次をじろと見ている。
彼は深く考えこんでいたが、やがて顔を上げて霊夢に訊ねた。
「ゆかりんは……ゆかりんはここに来なかったか?」
幻想郷の管理者である 八雲 紫 は妖怪だ。が、この事態ではなりふり構わず霊夢のところに訪れるだろう。余所者の真次が動いていても異変解決には程遠い。ましてや彼女は瞬間移動ができるのだから、来ていそうだと考えたのだ。
霊夢の返答は想像通りで、同時に予想外だった。
「紫のことね? 確かに来たわ。けど、同じように追っ払ったわよ? あなたよりすんなりね」
「え……嘘だろオイ!?」
「本当よ。ただ……ちょっと妙で、わたしが今と同じように答えた瞬間、青ざめてた。その後大急ぎでスキマへ戻ったわよ。おまけに『必要なものはスキマ越しに送るから生活面は安心して』って」
「今も送られてんのか?」
「ええ。たまに珍しい物も混じってたりするわ。あとで何かされるんじゃないかって、ちょっと怖いけど」
肩を竦める少女を眺めた真次は、複雑な表情をしていた。
てっきり実力行使に出たが、紫が返り討ちにされた。あるいは霊夢と長いこと交渉してみたものの、動きが見られないから渋々諦めたのかと思っていたのだ。
話を聞くに、紫は霊夢の行動に納得しているように感じた。でなければ能力を用いて支援することもなければ、巫女の理由を聞いて表情を変えることもないだろう。
(ここに何かあるのか……?)
博麗神社に足を踏み入れた時の印象を思い出す。
僻地でありながら、この一帯は神秘的な何かを含んでいると感じた感性は、恐らく間違っていない。霊夢がここから動かないのも、紫が動かない彼女を肯定しているのも、ソレを守るためか……?
聞き出そうか? いや、新参者がしゃしゃり出たところで、教える義理もないだろう。それに真次は回復系こそ理解が及ぶが、この手のちゃんとした魔法やら神秘には疎いのだ。説明されたところで理解できないだろうし、理解すべきところは違う。重要なのは今回の異変では『博麗の巫女は動けない』だ。
そう『動けない』博麗神社にある何かを守るために。八雲 紫 はその何かの防衛に支障がないようにと、霊夢を支援している。
「……そうか」
苦々しく、真次は自分を納得させた。紫でさえ上手く動かせなかった霊夢を、自分如きがどうにかできるはずがない。無駄足になったのは残念だが、ゴネも進展は望めないだろう。溜息と共に諦めた真次を見て、霊夢の表情から険が消えた。
「聞き分けがいいのね。他の人や妖怪はもっと騒ぐのに」
「考えることは同じか」
「そうよ。全部断ってきた。だいたいこの後は弾幕戦になるんだけど」
「一度も負けてねぇってことか?」
「ええ」
一切の気負いなく、さもつまらない様子で霊夢が答える。
うんざりしている様を見るに、かなりの人妖が博麗の巫女に挑んだのだろう。それでも勝てない辺り、以前人里で話した退治屋の『幻想郷最強候補』と呼ばれるだけはあると、真次は思った。
……だからだろうか、真次はふとこんな疑問を投げかける。
「それは、俺相手でもか?」
「当然でしょ。何? やっぱりやるつもり?」
「あーあー違う違う! 巫女さんをここから動かすつもりはねーよ。純粋に腕試しのつもりさ」
「ふーん。ま、いいわ。最近気晴らしのつもりで弾幕ごっこできなかったし」
「うっし! 決まりだな!! それじゃあ早速……」
真次が背を向け、霊夢も戦う気構えをしたその時だった。
青年の腹が鳴った。
腹痛の類ではなく、いかにも健康的な空腹を告げる音が。
「「……」」
沈黙。
非常に気まずい。もはや闘争の空気ではなくなってしまった。
真次がばつの悪そうに言う。
「……わりぃ、どっかで飯食ってくるわ」
無理もないことだった。時刻は昼時、空を飛びながら何かを口にできるはずもなく、コンビニなんて便利なモノは、幻想入りする訳がない。結果このタイミングで身体が空腹を訴えてしまったようだ。笑われるのも覚悟していたが、不思議と博麗の巫女はほんの少し苦笑して、彼女らしくないことを告げた。
「ここから人里は遠いわ。上がっていいわよ。これから私も食べるとこだし」
「ありがてぇ話だが……いいのか?」
「さっきもちょっと話したけど、紫がスキマ越しに色々送ってくれるのよ。勿論、食材もね」
「スキマって便利だなオイ」
こうして、真次は神社へ上がり、霊夢と二人での食事をとった。
そして、食後の運動もかねて、二人の手合わせとして始まった弾幕戦の――
『戦況は芳しくない』
さてさて、今回の異変博麗の巫女は神社から動けません。苦境に立たされる幻想郷はどうなるのか……その理由は残念ながら、物語終盤に明らかになるのであります。