STAGE 3-5 不可思議な怪我人たち
久々にすぐ投稿できた。いつもこれぐらい早いといいんだけどなぁ
7月6日 12:22
怪我人の捜索は、予想以上に困難を極めた。
一応、湖周辺は開けてはいるものの、大きさは結構ある上、案内人である魔理沙は気絶、拘束中である。なので、しらみつぶしに探すしかなく、かなり時間を取られてしまった。
彼が怪我人たちを見つけられたのは――苦しそうに笑う誰かの声を聴いたからである。もしかしたら目撃しているかもしれないと淡い希望を抱いて、空を飛んでいったところ――四人の子供が倒れていた。
髪の色も服装もバラバラの四人組は、二人がぐったりと倒れて意識がない。残りの二人は意識があるようだが、状況は悪かった。なぜなら――
「ゲホッ……ゴホッ……ハハ……」
「えぇっ……ぐぅ……」
水色の服装の少女は、息絶え絶えになりながらも笑うことをやめない。金髪のまっ黒い衣服の方は、鈍く声を発していて見るからに苦しそうだ。
何とか治療してやろうと、一人ひとりを軽く見て回る。四人に共通しているのは――鋭い刃物で切られた跡があることだった。
「ハハハ……アンタ……誰……クァアハハハ」
「医者だ。ちょっと待ってろ。今助ける!」
「……ひゅー……ひゅー……」
「……? どういうことだこりゃ……」
傷を診ているうちに、妙なことに気が付いた。どの傷も比較的浅い。水色の少女のだけはやや深いが、それにしたって生命維持に問題が発生するほどの傷とは思えない。笑っている分を考慮しても、処置すれば十分に助かるはずだ。
「おい、なんで笑ってやがる。傷が開くからやめろ」
「だ、だめ……フフフ……斬られてから止まらな……ククク……」
「……わかった。なら我慢しなくていい。ただ、今からお前たちを運ぶから暴れんなよ。落ちても責任とれんぞ」
理屈は謎だが、彼女たちは皆危険な状態なのは確かなようである。真次の勘がそう言っているので間違いない。彼は魔術銃を掲げ、トラクタービームを発動させた。
四つの光線が四人を浮き上がらせる。そして彼は大急ぎで紅魔館へと飛んだ。行きとは異なり、まっすぐ突っ切ったおかげで早く館へ着くことができた。すぐさまメイドが現れ、真次を部屋に案内する。
「清潔な部屋をすでに用意してあります。処置はそちらでどうぞ」
「すまない。助かる!」
心からメイドに感謝しつつ、四人を案内された部屋にとりあえず寝かせ、一人ずつ傷を塞いでいく。
本当に、なんでこんな傷に苦しんでいるのか、あるいは意識を失っているのか理解に苦しむ。自分でなくても、三人は応急処置でもなんとかなってしまうぐらいの傷だ。
最後の一人、氷の羽の少女は笑っているのもあって、少々傷が広がっていた。しかし真次にかかれば簡単に治せてしまう……はずだった。
「ハハハハハ……」
ここに来るまで一切笑いを途絶えさせずにいる。今もやめる様子がない。永琳にもらった妖怪用の麻酔を打ったが、それでも止まる気配がなかった。そしておかしなことがもう一つ。
「……痛い……痛い……」
金髪の妖怪。彼女にも確かに専用の鎮痛剤を注射したのだが、効いている様子がない。傷も完全に縫い合わせてあるし、痛がる理由が理解できない。
「くそ、どうすれば――!?」
愕然としながら、氷の羽の少女の傷口を覗く。その時――傷口の奥の方そこにわずかだが、黒い何かが見えた。血の塊ではない。陽炎のようにゆらいでいるそれは、液体や固体というより、炎と言った方がしっくりくる。
(まさか――こいつらも魔理沙と同じ……!?)
彼だけに見える、黒い炎。
その正体が何なのか彼には分らない。
しかしそれは、明らかに不吉な何かを孕んでいるように見えるのだ。証拠などはないが、この感性に間違いはないと断言できるほどに。
迷った末、彼が出した結論は――
「……すぐ戻る!」
この館には、自分より知識のある人物がいる。見た目は少女でも、こちらよりはるかに年月を重ねてきた賢者たちが。
その知恵を借りるべく、彼は図書館へと走った。
7月6日 12:39
さて、次回。真次に見える謎の炎の正体が明らかに!