STAGE 3-3 改装! その名は魔術銃!!
大変長らくお待たせしました! ちょっちスランプ入ってました……申し訳ないです。
7月6日 11:10
「……これで出来上がったと思うわ。試し撃ちしてみなさい」
「おう」
大図書館内で真次は氷をイメージした弾丸を射出、空中で静止した弾丸はそのまま消滅した。イメージ通りだ。
館の住人、パチュリーノーレッジの協力と、既に大まかな調整を終えてあったのもあって、オートマチックハンドガンの調整はすんなりと完了した。
ちなみにパチュリーだがアリスの説得と、昨日の襲撃もあって自衛力を高めておいたほうがいいと考えたのか、さほどもめることなく力を貸してくれた。
「しかし、面白い発想ね。おもちゃの銃にイメージを込めること自体は不思議じゃないけど、それにお札を貼って幻想郷流に改造するなんて。こっちの……魔術銃は、昔魔法を打ち出す銃を見たことがあるから、それを参考に改良したわ」
「魔術銃ね……なら、こっちのリボルバーは退魔銃と言ったとこか?」
「安直なような気もするけど、おおむね間違ってない……といったところかしら」
「そうかそうか。……あ、そういやここってさ、図書館やってるわけだから、資料とかあるか?」
真次の言葉に、小悪魔とパチュリーは頷く。
「たんまりと、ありますよ! それで、何をお探しですか?」
「そうだな……回復魔法関連と、宇宙工学関連、あと医学書読みてぇな」
彼の職業柄、医学書は納得できる。回復魔法もまぁ、興味を引くかもしれない。しかし、なぜ宇宙工学が出てきたのか。懸念そうにするパチュリーと小悪魔に、真次は正直に告げた。
「ああ、実はな……この前妖怪の山に行ったとき、だいぶ型の古くなった宇宙にかかわる機械の付喪神が入ってきてな。ミッションは覚えているらしいんだが、肝心の本体の名前を忘れてしまったらしい」
「その子、なんて名乗ったの?」
「『ニア』と言っていた。パラボラアンテナといい、使ってきたスペルカードといい……嘘をついているようには見えん」
「そう……じゃあ小悪魔、探してきて――」
パチュリーが彼女に命じようとしたその時だった。門のほうから、衝撃が走る。
「……また襲撃かしら?」
身をこわばらせるパチュリー。真次も銃に手をかける。
しかし、それを制したのは館のメイドであった。
「いえ、心配には及びません。霧雨 魔理沙のようです」
「……忙しいから門前払いしたいけど、迎撃の用意をしておいたほうがよさそうね」
「なんだ? 知り合いか?」
何も知らない真次が、のんきに発言する。それに茶々を入れたのは、そばにいたアリスだった。
「昨日話した、手癖の悪い魔女よ。ここの本も盗難の被害にあってたかしら?」
「……目的の本をぶっ飛ばされたり、盗まれる可能性は?」
「ないとは言い切れないわね」
ふむ、と真次は思案気に顎に手を添えたあと――門のほうへと駈け出した。
「ちょ、ちょっと! どうする気!?」
「ん? 試し撃ちがてら、その魔理沙とやらを仕置きするつもりだが」
「美鈴と二人とはいえ、やられるのがオチよ?」
「それも一興。殺されはしないんだろ? なら敗戦も経験だろう。……偉大なる先人の知恵を披露する時が来たからな!」
「なら、その間に本の準備をしておきますね!! この小悪魔にお任せください!!」
そうして真次は図書館を、館を飛び出し、紅魔館の門前へ。
地上にてにらみ合うのは、美鈴と白と黒を基調とした服装の、箒にまたがった女性だ。おそらく、あれが魔理沙だろう。
「!? 真次さん!?」
「あん? 誰だお前?」
「通りすがりのお医者様だ!」
……真次本人はネタのつもりで振ったのだが、案の定二人には伝わらず、微妙な空気を作る。
先に口を開いたのは魔理沙だった。
「……医者か、ならちょうどいい、強引に連れて行かせてもらう!」
「けが人でもいるのか?」
「ああ、そこの霧の湖で四体ほど妖怪が倒れてる」
「! なら戦闘なんてしてる場合じゃ――」
説得して場所を聞き出そうと真次は一歩前に出たが、それに呼応して魔理沙は攻撃を仕掛ける。おっかなびっくり彼は避け、魔理沙の態度に違和感を覚えながらも、反論した。
「おい! 何考えてるんだ!? 処置が先だろう!?」
「知るか! ここで倒して強引に連れていく!!」
「そんなことしなくても、俺は――っ!!」
まるで会話がかみ合わない。
その様子に違和感を覚え、真次は彼女を凝視する。
じっと見つめて彼の瞳に映ったのは――いつかの飲み屋で見た男と同じ、『黒い炎』
魔理沙の背後にも……まるで何かが取りついているように、黒い炎はあった。
「――っ!」
その事実に焦りながらも、真次はゆっくりと永遠亭での会話を思い出す。
退治屋が消えてしまった後、ウドンゲにも背中に黒い炎が見えたかどうか聞いたのだが、回答は『見えない』だった。
しかし同時に、無関係とは思えないとも言っていた。
もし――もしあの背中の黒い炎が、人が消える前兆ならば、彼女もいずれ消えてしまう定めにある。
なぜそれが真次にだけ見えるのかは謎だが――そうだとすれば、放置しておくわけにもいかない。
「……美鈴、魔理沙を拘束するぞ! 方法は問わん!!」
「は!? どうしたんですか!? 真次さんまで!!」
美鈴も魔理沙の様子がおかしいのには、なんとなく気が付いていたらしい。
「なんだよ、私はどこもおかしくないぜ?」
「……本人が気づかない類か。なら、ますます放っておけん。あの退治屋みたいに消える前に、何とかさせてもらう!」
方法はわからない、ただの思い違いかもしれないが――それで彼は後悔したくない。
そうして「大丈夫」と放置したせいで、重病化してもう間に合わないところまで病魔が進行してしまうケースも、真次はいやというほど知っている。これが病気かどうかは怪しいが、「まだ」生きている以上打つ手はあるはずだ。
覚悟を決め、彼は左手の魔術銃と、右手の退魔銃の引き金を引いた――
7月6日 11:44
解説すると、オートマチック=左手の銃=魔術銃、リボルバー=右手の銃=退魔銃という感じにしていきます。ややこしいけどごめんね!!




