STAGE 3-2 四人と一人と一人
大変長らくお待たせしました! 最新話だよ!!
7月6日 10:39
その頃、霧雨 魔理沙は自宅を飛び出し紅魔館、正確に言えばそこにある大図書館めがけて飛行していた。
ただ、異変の最中なせいか妖精がうっとおしく絡んでくる。最高速度で振り切りつつ、彼女は紅魔館を目指す。
森を抜け、視界が開ける。
正面は霧の湖が広がり、その先にターゲットがある。突き進もうとしたその時、彼女の耳に笑い声が届く。
何事かと視線を向けると、霧の湖を縄張りとする氷精とその仲間たちが倒れこんでいた。
「あははははははっ……ゲホッ。ゴホッ。ハハハハハハ!」
「あ……ぐ……っ……!」
その内氷精は苦しそうに笑っていた。宵闇の妖怪も、苦痛に顔を歪めている。残りの二人――夜雀と蟲の妖怪は意識がないのか、倒れたままピクリとも動かない。そしてその傍には、黒い気配を纏った若い女の怨霊が、刀を持ってゆっくりと近づき、とどめを刺さんとしていた。
(あれが、文々。新聞に載ってた、謎の黒い怨霊なんだぜ!?)
あれに殺された妖怪は復活できないらしい。別に妖怪が減ろうが何とも思わないが、目の前で殺されるのを放っておくのも気分が悪い。ほんの少しの思考のあと、牽制の弾幕を張る。
こちらに気が付いた刀使いの怨霊は、振り返り飛び退く。魔理沙はそのまま妖怪たちの間に割って入った。
「おいお前ら、動けるか!?」
「ははは! む、無理っ……ははははは!!」
「で……きた……ら、……や…って……る」
意識のある二人は傷こそ浅いが、とても逃げれそうにない。ここは、魔理沙が撃退するしかないだろう。厄介ごとに首を突っ込んだかと後悔したが、もう遅い。
「貴様! 邪魔をするな!!」
刀を振りながら弾幕を張る様子は、妖夢を彷彿とさせる。しかし、一本と二本の差なのか、あるいは女が慣れてないのか、歴戦の魔理沙には怖くもなんともない。素早く弾幕を打ち込んで黙らせようと接近し――
「恋符『マスタースパーク』!」
至近距離で必殺の一撃を放つ。構えている最中に一発貰ったが、怯まずに彼女は攻撃を敢行した。直撃かと思われたが、刀使いの女は正面で刀を構えてガード。片膝をついただけだった。あれで倒せると思っていた魔理沙は、口笛を一つ吹く。
「あれに耐えるのか!? ずいぶん頑丈な刀なんだぜ」
「私の最高傑作をなめてもらっては困る。これだけは呪いを付与させたくなかったから」
「呪い? 妖刀の類だったのだぜ?」
「違う!!」
突如として、女は叫んだ。
「私は――私の一族の刀は、妖刀なんかじゃない! お前たちがそうしただけだ!! だから私は、本物を作ってやっただけだ! 我ら一族を否定した輩を、根絶やしにするための刀を!!」
その無念は、いかなるほどか。いや――無念のない怨霊など存在しない。故に彼女は暴れ回っているのだろう。だからと言って、ここまでしていいわけではないが。
「なぁ、ちなみに、一本欲しいって言ったら怒るのぜ?」
「当たり前だ! その収集癖、戦闘能力、容姿……貴様まさか、霧雨魔理沙か!?」
「今更なのぜ」
あきれ返る魔理沙に対し、彼女は嗤った。
「ははははは! これは僥倖! 我らが王もお喜びになるだろう!! 邪魔されたのは腹立たしいが、そういうことなら仕方ない。一度帰還し、判断を仰ぐとしよう……」
そういって女は撤退する。四人を守り切った魔理沙は、どうしたものかと思案して、とりあえず四人を放置、最寄りの施設紅魔館へと向かった。
(協力してもらえそうになかったら、ぶっ飛ばしてでも手伝わせるんだぜ)
――自分が『何故か』攻撃的な思考に染まっていることに気が付かないまま
7月6日 11:02
次回はこんなには遅くならないつもりです。頑張ります!