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STAGE 2-17 招かざる客

長くなりそうなので分けました。それでも多いから、ゆっくり読んでね!!

7月5日 22:01



「はあっ!」


 その夜、紅 美鈴は館に侵入しようとする黒い狼の群れを撃退していた。

 攻撃は噛みつきや爪、そして単調な弾幕による攻撃のみで、大したことがないが、いかんせん数が多い。妖怪でありながら武術の達人でもある彼女は、この程度でバテる様な鍛え方はしていないが、門の防衛とこの数を相手にしながらとなると、流石に苦しい。

 第五波を凌ぎ、美鈴はほっと一息つく。倒した先から消滅していくのか、死体は一つも転がっていない。


「美鈴、大丈夫かしら?」

「いやぁ、ちょっと厳しいかなーなんて思いましたけど、なんとかなっちゃいました。心配してくれたんですか? 咲夜さん」

「べ、別にそんなんじゃないわよ……特徴からして、文々。新聞に載っていたやつらでしょうからね。やられると妖怪は傷がすぐに塞がらなくなるそうよ」

「やっかいですね……しかし、一体何の目的で――っ!?」


 異様な気配を感じ、美鈴は霧の湖の方の一点を見つめた。


「……ほぅ」


 ひどく暗い声色で男の声が響いた。それに伴い、咲夜も身構える。


「魔術による気配遮断と隠蔽、さらには武術の応用で気配を殺した、三重の隠蔽を見破るとは……同朋たちでも歯がたたないと報告があったから来て見たが、なるほど妖怪の武人か。なかなか面白い逸材だ」

「あの狼たちは、あなたの差し金ですか?」


 男が、低く嗤った。


「私が指示を出したのは、『思う存分怨みを晴らせ』だ。どこを襲えとは指示していない」

「……その言い方ですと、無関係でもなさそうね」

「いかにも、彼らは我が同朋だ。境界の力により魂が潰れ、自らの魂の形を失った者たちである。それに仮初の形……ある昔話に出てくる、魔狼の姿を与えたものだ。グングニルが苦手かも――」

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

「……む?」


 男が懸念そうな声を出したのと、グングニルの着弾はほぼ同時であった。辺りが煙に包まれる。


「「お嬢様!?」」


 美鈴と咲夜は、一緒に振りかえった。そこにはこの館の主、レミリア・スカーレットと、その妹、フランドール・スカーレット、そして、レミリアの友人であるパチュリーノーレッジ、その従者の小悪魔までいる。紅魔館のオールスターだ。


「お嬢様……どうして? このような相手でしたら、私たちだけでも――」

「そういうわけにもいかないのよ……だって今回私が見た運命は――『私たちが一人ずつ戦って殺されて、最終的に皆殺しにされる運命』だったのだもの」

「「!?」」


 ――レミリアはある事情で、咲夜とフランの運命を見ることはできない。だが、この男の運命なら、見ることも、変えることもできるはずだ。その疑問を口にしようとした時――


「やれやれ、人が苦手と言った矢先に、それを投げつけるなんてひどいじゃないか。ああ、あくまで苦手なのは同朋であって、私ではないんだがね?」


 男の声だ。どうやら生きていたらしい。しかも、余裕の感じられる声で。


「――お嬢様、運命操作を。この男は危険です」

「やってるわ。けど――この感じは参真と同じ……? それでできないのよ」


 再び、ほぅと男が呟いた。


「参真……そうか、あいつも我らの場所へ迷い込んだのだったな」

「……今引き返せば、彼の知り合いと言うことで見逃してあげるけど?」

「ご丁重にお断りさせて頂くよ、お嬢様。宝庫『レジェンダリーアーセナル』 来い、『グングニル』!『ゲイ・ボルグ』!!」

「「「「「「なっ!?」」」」」」


 彼女らが驚いている間に、彼はその二本の槍を投擲。

 高速で放たれたそれを、間一髪で回避し、レミリアはもう一度グングニルを放つ。しかし――


「『イージス』展開、『天之尾羽張』!」


 左手に装備した盾にあっさりと防がれ、右手の剣がレミリアに迫る。


「させない! 禁忌『レーヴァテイン』!!」


 それに割り込んで、フランが紅い剣を片手に男に斬りかかる。

 甲高い音を立てて、二つの剣が干渉する。


「一本では防がれるか、ならば――『エクスカリバー』!」


 左手に持っていたはずの盾を消し、光で出来た巨大な剣に持ち替え、ぶつかり合う切っ先にもう一本が追加された。

 じりじりと押されるフラン。男の顔が愉悦に歪む。そこに――


「火符『アグニレイディアンス』!」


 呪文の詠唱を終えたパチュリーが、男を妨害した。一旦男は下がり、二刀流で弾幕を迎撃する。

と、途中。左手の剣が破損。だが、男は感心した用な表情だった。


「我らの性質上、聖剣とは相性が悪いか……それに、やはり二刀流にするなら、対になっている武具だな。『モラルタ』『ベガルタ』!」

 両手の剣を、別の剣に持ち替える。たちまち動きが良くなり、パチュリーの弾幕を圧倒する。


「そこまでです」


 唐突に、男がナイフで囲まれる。咲夜のお手芸、時間操作だ。


「死ね」

「拒否だ……『アロンダイト』!!」


 黒い巨大な大剣が現れ、それを両手で一振りしただけですべてのナイフが吹き飛ばされた。近場にいた咲夜も、紅魔館の外壁に叩きつけられる。

 小悪魔が駆け寄り、彼女の様子を見る。残った四人は戦慄していた。


「あなた……何者よ……っ! 連続で伝説の武具を次々と使うなんて……!! しかも、別々の逸話からじゃない!!」

「あれでもレプリカだぞ? 何者か……か。ひどく難しい質問だな。それに答える義理もない」

「なら、力ずくでも聞かせてもらうねっ!」


 フランが剣を構える。男も剣を構えなおそうとして、考え込んだ。


「ふむ……『レジェンダリーアーセナル』は時間切れか。八雲の安全装置(スペルカード・ルール)はやっかいだな。中々殺しきれん上、時間制限までつく……『レジェンダリーアーセナル』解除。廃材『スクラップフォートレス』!」


 男は二枚目のスペルカードを宣言。すると――巨大な鉄塊が現れた。

 ボロボロで錆びついた金属の塊は、所どころに長い柱――見る者が見れば、滑走路だとわかっただろう――がついていて、至るところに砲台がついていた。しかも……そんな状態でそれは飛び始めたのだ。男はそれの後ろに隠れると、指示を飛ばし始める。


「T-26主砲含む軍艦部砲塔、戦車砲塔上部砲塔は三式弾装填。ビスマルク砲塔含む下部砲塔はすべて近接信管弾装填! 航空隊発進始め!!」


 男の指示か止まると、少しの間だけプロペラの音を残してしん、と静まり返った。

嵐の前の、静けさか。だがそれは並みの嵐ではない。町一つを丸裸にしても、飽き足りないくらいの、大嵐だ。空は大量のプロペラをつけた飛行機が覆い尽くし、肝心の要塞は無傷で大量の砲塔をこちらに向けている。

 静寂は、男の号令でかき消された。


「航空隊、攻撃始め! 全砲門開け! 撃ち方――始め!!」



7月5日 22:22


謎の男が、紅魔館に襲来しました。しかし、良く読むと所々おかしい個所があるはずです。それも今回の敵キャラのヒントですよ!

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