STAGE 2-16 学習と、銃と、
ちょーっと遅れたかな?
徐々にペースを上げて行きたいと思うので、少々お待ち下さい!
7月5日 17:04
「……ってことであってるよな? ……アリス?」
真次が何度目かの確認のため、アリスに声をかけた。しかし当の本人の様子がおかしい。傷はもう回復魔法でほとんど治ったが、まだ本調子ではないのだろうか。
「……あなた、頭はいい方?」
「ん? ああ。まー回る方だと思うぞ。それが?」
「でなきゃ無理よね……いえ、普通に無理よね。こういうのを天才って言うのかしら」
「そりゃ、どういう意味だ?」
懸念そうにする真次に、アリスははっきりと告げる。
「えっとね。正直、あなたが諦めると思ってその本を渡したのよ。一応初級というか、基礎的なことを書いてある本にはしたけどね。良くても、ちょっと理解できるぐらいかなって……でも、ここまで飲みこみが早いとは思ってなかったわ」
アリスの言葉に、真次はカラカラと笑った。
「どうも俺は、『生き物を治すこと』に特化しているらしくてな。そのことに関係があると、補正がかかるらしいんだわ。回復魔法も治すことだろ? それの大本になる基礎知識ってなると、恐らく補正の範疇なんだろうなぁ……」
アリスはいまいちよくわかってないようだが、これは事実である。
「で、アリス。少し話はそれるが、魔法を使ってこいつの強化ってできるか?」
懐から、おもちゃの自動拳銃を取り出す。札の貼られていない方だ。こちらは通常弾しか撃てず、いかんせん火力不足に悩まされていた。
メンデル戦の時でも、上手く相手を捕縛できるような弾を撃てればと痛感していた。そこで――魔法で補強すれば、火力だけでなく、こちらのイメージを反映した弾幕を撃てるかもしれない。と彼は考えた。
「なにこれ? あなたが弾幕を張るのに使っていた道具よね?」
「こいつはオートマッチックハンドガンのおもちゃだ。俺は実際の銃のイメージを込めて撃ってる。だが、こいつにはお札付きのリボルバーと違って、特殊な効果などついていないんだ。だから、通常弾しか撃てないし、当たってもしょっぱい。そこで――」
「この銃を魔法の道具へと、改装しようってこと?」
「その通り。多分使ってる力は霊力だと思うから、それを銃に通して俺のイメージなとを反映できるようにしたい。どうだ?」
ふむ。とアリスは思案した。
「多分できると思う。銃に魔術の刻印を施せば、十分機能すると思うわ。でも――」
「でも?」
「構造に詳しくないと、ちゃんとした刻印が施せないかも。この銃、解体できる?」
「ああ、にとりから解体のしかたを書いてもらった紙があるから大丈夫だ。仕組みもおおむねわかる。あとはそっちの勉強だけだな」
幸い、紙と解体用のドライバーは携帯しているので、バラすだけなら今からでも出来る。アリスはぼーっと聞き流そうとして……慌てて振りかえった。
「自分でやるつもり!?」
「何か問題が?」
「いや、流石にそれは難しいし時間もかかるだろうから、刻印を施すのは私がやってあげるわよ。助けて貰ったお礼もしたいし」
「それは魔法を教えて貰ったのでトントンじゃ?」
「この前の酒場でのお礼がまだでしょ?」
律儀なアリスに、真次は目を丸くした。ありがたい提案ではあるので、お言葉に甘えることにする。
「それじゃ、早速始めましょ。それと、時間がかかると思うから、今日は私の家に泊まっていきなさい? 夕暮れから夜遅くまでの魔法の森を、人間がうろつくなんて自殺行為よ」
「それで俺は、アリスに借り一つだな」
アリスがクスリと笑った。
「日ごろから魔法の森に迷った人間を泊めてるから、こんなのは借りにもならないわよ」
「そうかい。優しいんだなアリスは。森には大概、悪い魔女が住んでるのがおとぎ話の定番なんだが」
「……まぁ、手癖の悪い魔女ならいるけどね。珍しい物の蒐集をしてたりもするから、せっかく加工した銃を盗まれないように」
「お、おぅ……気をつけるぜ」
その後、真次が銃を解体し、仕組みを説明。アリスはそれを理解しながら、魔法の刻印を施していく……
二人がその作業に夢中になっている内に、すっかり日が落ちて夕食時になってしまったのであった。
7月5日 19:00
はい、これでもう片方の銃も強化が入ります。楽しみにしていてくださいね!




