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STAGE 2-14 魔法の森の戦闘

連続投稿途切れた! 変わりに今回は長めだよ!

7月5日 11:07



 この日、真次はアリスの家を目指していた。

 理由は単純。魔法を……特に回復魔法を習いに行くためである。

 命蓮寺で聖の使っていた回復魔法が使えるようになれば、治療の幅は大きく広がる。自身の技術や能力を考えるに、患者を救う確立を上げることができるとなれば、真次としては試してみないわけにはいかなかった。

 ちなみに、そのことを永琳に話したところ、命蓮寺での皆と同じ反応であった。そんなことを考えつくのは、真次ぐらいらしい。


「しっかし、こっちも入り組んでるな……」


魔法の森上空を飛びながら、アリス邸を探す。永琳から、魔法の森に舞っている胞子の影響を押さえる薬は貰っているので、森の中に入っても大丈夫ではあるのだが、上から探した方がずっと効率がいい。結果として、妖精に何度かからまれたが。


「おっ……あれか?」


 白を基調とした洋風の館を発見し、その近くへと降りる。

 ……館に近づくと、途端盾や槍などで武装した人型の小さな何かに囲まれた。

 敵意がないことを示すために、両手を上げてその場で立ち止まる。アリスは人形使いだそうなので、これが彼女の人形だろう。どうやら館周辺を警戒させているらしい。便利だ。

 ……騒ぎを聞きつければ、館からアリスが出てくるのではないかという期待があったのだが、しばらく両手を上げて待機していても出てくる様子がない。もしかしたら留守なのかも、と思い。仕方ないのでここで待つことにした。変に探すより、その方が確実である。

 しかし――そんな彼の思惑を裏切るように、唐突に嫌な予感が真次の脳を駆け巡る。直後、森のどこかで爆発音が響いた。ここから近い。

 人形たちも落ち着かない様子だが、『館を守れ』とでも命令されているのか、その場から動こうとしない。アリス邸から離れるのは嫌だったが、放置するわけにもいかず、真次は音のした方へ。

 活性化した妖精たちが道を阻んだが、軽くあしらいながら進む。ほどなくして見つかったのは――


「はぁっ……はぁっ……!」


 傷だらけの女性……アリスと、黒い気配を纏った男が対峙していた。男は衣服も黒かったか、あの服には本などで見覚えがある。牧師や修道士の着るローブというやつだ。

 退治屋たちの見た奴らとは異なるが、こいつも異変の首謀者か、あるいはその配下で間違いない。証拠として、周辺には見覚えのある狼がいた。

 迷わず真次は、アリスとそいつの間に入る。


「……! あなた……何をしに来たのよ! 逃げなさい!!」

「そうはいかん。俺はアリスに用があって来たんだ。死なれたら困る。それに……こいつらには俺が来た時に襲われたんだ。一発キツイ仕置きをしないと気が済まん」


 ――真次は、守矢神社での会話を思い出す。こいつらは何かの象徴や、姿形に擬態できる可能性がある。だから、この格好も擬態の可能性があったが、それでもヒントにはなる……なぜなら、元の姿をよく知っていなければ擬態はできないからだ。だから、少なくても奴らは、『牧師』『西洋の甲冑』を知っているということになる。相手は西洋出身の可能性がでてきたなと思考を巡らせつつ、彼は銃を構えながら叫ぶ。


「……あんたら、なんでこんなことするんだ! 無駄に誰かを傷つけやがって……!」

「無駄、だと?」


 男が、深く――まるで深淵をのぞきこんだような暗い目つきで語り始める。


「お前も、私の研究が無駄だというのか……? あれだけの時間と手間をかけ、導き出された法則を、検証もせず無価値と言い張るのか……?」

「あぁ!? 何言ってやがる!」


 訳のわからないことを話しだす男。一体何を言っている?


「ふざけるな!! これは世紀に残る偉大なる法則だ!! 私の研究を無下にするどころか、あろうことか天文学の分野に追放するなど……お前たちに私の苦痛がわかるか!? あるものは面と向かって『狂人』などと言うのだぞ!?」

「知るかボケ! あんたがどんな目に合おうが、それが妖怪たちを傷つける理由になるのか!?」

「なるとも!」


 男ははっきりと言った。


「我々にはあるのだ……我らを拒んだこの世界に、復讐する理由がな!」


 そうして、男は弾幕を放つ。急な攻撃だったので、かわしきれず、一発貰った。反撃で真次も射撃を開始する。

 何かの豆と、その鞘で男は攻撃してきていた。だが、ニアよりは弾幕が濃いが、輝夜たちに比べれはまだまだ甘い。不意打ちでもなければ、早々当たる様なものではなかった。

 そこで、真次は思い出す。そうだ。この気配は――ニアが最初に出した黒い気配と同じものだ。彼女はおとなしかったが、何か異変と関係があるのかもしれない。


「法則『受け継がれる優勢』」


 男が、一枚目のスペルカードを使用する。同じ形、色の豆と背丈が同じ――エンドウマメが一斉に生えてきて、弾幕を形成した。だが、エンドウマメなら、所詮は植物。焼き払ってしまおうと真次もスペルカードを使用した。


「花弾『花火玉』」


 花火を模した弾が、エンドウマメの群生の中で炸裂する。

 あっという間に焼き払われ、弾幕は薄くなり、男を狙う余裕も出てきた。が、真次はあえて周辺の狼たちを狙う。後々襲われたらたまらない。

 油断していたのか狼たちは次々と被弾し、あっさりと男と一対一になる。


「くっ……何故だ!? なぜ我らの呪いが通じない!?」

「あいにく俺は、呪いが効かない体質なんでね!」


 いつの間にか呪われそうになっていたらしいが、真次は「悪意を切り離す程度の能力」を持っている。いくら呪おうとしたところで無駄だ。

 と、そこで、真次は疑問に思う。自分の能力なら、他人からも悪意を持たれなくなる能力ではなかったか? ならばなぜ――こうして今、悪意全開なこの男と対峙している? 悪意が強すぎるのだろうか? 真次は一人――強烈な悪意を保有し、真次と何度も喧嘩をした相手を、知っている。強すぎる念を持ってると、この能力は通じないのかもしれない。


「ならば戦いを制し、ここで消えてもらおう! 法則『三対一の分離』!」

「やってみやがれ!」


 今度も、エンドウマメの弾幕だ。だが、今度は背丈が高いものと短いもの、豆にしわのないものとあるもの、色が緑と黄色の物が混じった弾幕だ。だが、悲しいがな、花火玉を破ることはできない。火を模したスペルカードを使用する真次とは、この植物主体の弾幕は効果が薄い。簡単に焼き払われてしまうからだ。

 しかし――真次は銃を下ろした。表情は険しいまま、弾幕を回避し続けたままで。


「ど、どうしたのよ!?」


 アリスが彼に言うが――真次は気づいた。気がついてしまった。

 男が何者なのか、色々と理由はわからないが、とてもじゃないが銃を向けれる相手ではない。理系の人間なら、誰だって知ってる様な偉大な人物だ。


「どうして……どうしてあんたが幻想郷にいるんだ……!?」


 エンドウマメを模した弾幕に、複数の法則。

 そして牧師の格好をしているとなれば――真次はその可能性を考えずにはいられなった。

 戸惑いの表情を浮かべ、真次は叫ぶ。


「黙ってないで答えてくれよ……! 『メンデル』さん!!」


……『メンデル』と呼ばれた男は、一瞬だけ硬直したあと――再び憤怒の表情で彼らに襲いかかる。


「法則『交わることのない独立』」


 予想を確信に変えるスペルカードを使用してくる。当然真次は撃てない。撃てるはずがない。遺伝学の基礎とも言える法則を導き出した相手に、弾を放つなど。


「もうやめてくれ! あなたはこんなことをするような人ではなかったはずだ!!」

「無駄よ! 怨霊に説得なんて通じるはずないわ!!」

「怨霊!? なんで『メンデル』さんが怨念になんて――!」


 アリスと言い合う中、男ははっきりと言った。


「それが、許せないのだ」

「何を!?」

「私は……私は怒り、悲しみ、嘆いたのだ! それを歴史に埋もれさせた者たちが許せない!! 偉大な法則を認めたことは感謝しよう。だが……それで私の無念が、晴れるのか?」


 弾幕は激しさを増す中、言葉も交わされ始める。


「晴れなかったのか!? どうして!!」

「それが――忘れ去られたということなのだろうな。私は愚弄されたのだ。研究の場で、何を言っているのか? と」

「……!!」

「そうした歴史を忘れ去った連中が許せない。私を狂人と蔑みながら、いざ半世紀後には偉大だと手のひらを返した連中が――! 奴らの子子孫孫を根絶やしにしたいという念は、偉大な学者として祀られた私の偶像とかけ離れ――その結果がこれだ! 何故……我らはここまでの苦痛を、味わらされなければならぬのだ!? 八雲 紫も、彼らと同等か……それ以上に憎い!!」


 ひたすらに弾幕を避けつつける真次。終局は、あっけなく訪れた。

 アリスだ。アリスが男の死角に人形を配置し、一斉に攻撃を行ったのだ。まだ彼女は余力を残していたらしい。


「ぐ……はっ……」

「メンデルさん!!」


 墜落した男に、真次は駆け寄る。


「口惜しい……私はここまでか……王よ、お役に立てず、申し訳ない……同朋よ、後は頼む……」


 苦しげに、そう言い残して――男の姿は霞むように消えてしまった……



7月5日 13:22


「ありえない人物の幻想入り」一人目が入りました。本編にも書いてありますが、理系の人間なら、彼のことは知っているでしょう……ふふふ……これからも出てくるのでお楽しみに!

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