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STAGE 2-8 外の世界の料理

7月1日 16:00



 さて、日も傾き始め、真次はそろそろ永遠亭に戻ろうかと思っていた。

 何日も寺に世話になるのも悪いと思うし、永琳たちも心配しているだろうと考えたからである。

 ところが支度をしていると、村紗がやってきたのだ。


「真次先生、帰っちゃうの?」

「ああ、そろそろ永琳にも連絡いれねぇと。それに何日も世話になるのもわりぃし」

「……もう数日だけ、寺に居てくれない?」


 村紗のお願いは、もう少しだけ寺に留まってほしいとのことだった。どうしたものかと真次が考える。


「重症な患者は聖が魔法かけてりゃ治るだろう? 俺はもうお役御免なんじゃ?」

「そ、そうかもしれないけどさ、容態が急変した時に、専門の人がいた方が安心じゃないかなって」


 ……言われてみれば、村紗の言うことにも一理ある。しかし永遠亭への連絡はどうするのか。と真次が尋ねると、そこは村紗が胸を叩いた。


「ナズーリンにお願いして、永遠亭に使いっぱしりになってもらうよ。それなら文句ないでしょ?」

「でもいいのか? 弟子でもないのに世話になっちまって」

「恩人である真次先生のことを、聖は嫌がらないよ」


 真次個人としても、聖のことは嫌いではない。泊めてもらうこと自体にはさほど抵抗はないのだが、真次は条件を出した。


「……まぁ、泊めてもらうのはいいとしてだ、だからってお客様でいるのも嫌だから、料理とか手伝わせてもらうぞ。それが条件だ」

「えっ……真次先生できるの!?」


 こちらでは男性が家事をこなせるのは珍しいらしい。妹紅も驚いていたし、間違いないだろう。


「向こうじゃ一人暮らしだったからな。と言っても、文明の利器があったが……まー洗濯とかは無理かもだが、料理なら問題ないだろう」

「へぇ……じゃあ、外の世界の料理とか作ってよ! たまには精進料理以外も食べたいからさ」

「いいぞ……あーでも、宗教上肉と魚が使えないから、だいぶ制限されちまうんだよなぁ」


 思考を巡らせ、なんとか聖たちにも食べれそうな料理を探す。

 そうして思い当たったのが――


「チーズ野菜鍋……とかか?」

「なにそれ? 聞いたこと――」

「チーズだって!?」

「「!?」」


 話を立ち聞きしていたらしいナズーリンが、扉を開けながらこちらに入ってきた。ひどく興奮した様子で、真次の方を向く。


「詳しく聞かせてもらっていいかい!?」

「……いや、落ち着け。ただだし汁の中にチーズを入れて、その風味を楽しむだけだぞ? 液状になってるから固体は入ってないし、それに今の季節を考えるとなぁ……あっ」


 話している途中で、彼は思い出した。


「どうしたんだい?」

「チーズ料理が好きならば……チーズフォンデュとかどうよ?」

「それも初耳。どんな料理なの?」

「火にくべて溶かして液状になったチーズに白ワイン入れて、ゆでた野菜とかパンとかつけて食べる料理だな。本当は肉類も入れたりするんだが、それは聖が許可しないだろう。野菜とかつけて食べるだけでも十分美味いが……でも酒もダメか。となると牛乳で代用だな」


 その内容にナズーリンがごくり……と唾を飲んだ。


「よし、今晩はそれにしよう。聖にも許可をとって、材料を揃えてくる!」

「いやちょっと待って、ナズーリンは永遠亭に行って真次先生のことを伝える役目でしょ!?」

「なん……だと……」


 衝撃を受けたナズーリンがへなへなと崩れ落ちた。がっくりとする彼女に、真次が慰めるように言う。


「まぁ、晩飯は逃げたりしないから大丈夫だぜ。材料は今から人里行けば間に合うか?」

「うーん。でも真次先生がいないと作れないんじゃ?」

「マミゾウあたりに声をかけよう。そのほか、無事だったり軽傷な弟子たちにお願いして買い物に行ってもらうかな」


 そうと決まれば善は急げ。ナズーリンはすぐに命蓮寺を飛びだし、真次は材料のリストを作成して聖に許可を貰いに、村紗は買い足しの人材集めへと向かった。



7月1日 16:10


……数話後に食事表現入るなこりゃ。夜中見る人は気をつけてくだせぇ。そしてチーズに喰いつくナズーリン。ネズミ故致し方なし。

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