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STAGE 0-4 襲撃

久々に再開です!

え? 待ってない? まま、そんな冷たいこと言わずにw


6月20日 00:01



 いきなり足元を突き崩され、男は異質な空間へと落とされた。

 足元がどこかすらわからない空間の中、何故か中空に足がついている。


「……どうなってるんだこりゃ?」


 目玉と標識が乱立する異界で、彼は一人首を傾げていると、落ち着いた表情で落下してきた女性が喋る。


「ここはそういう空間なんだと思ってくれ。今、現代から空間を切り離して幻想卿に繋ぎ、その後向こうでの出口を作成する。ヒマかもしれないが、我慢してほしい」

「お、おう……頑張ってくれ」


 何を言っているのかさっぱりだが、とにかく、この異空間を通して幻想郷とやらに行けるらしい。真次は、この場所が中間地点のようなものだと推測する。

 藍は彼の目の前で、何かの作業をしているのだろう。手を何重にも動かして、この空間を操っているようだ。


(いきなりデタラメだなおい……こりゃ、相当な出来事に首を突っ込んじまったな)


 しかし、ふと彼の頭に疑問がよぎる。何故自分は呼ばれたのだろうか? 

 心当たりを探してみるものの、さすがに怪異を治療したことなどない。幽霊になら何回か出会っているが、それが招かれる理由になるとも思えなかった。

 考え事をしている内に、無意識にポケットに手が伸び、タバコのケースとライターを握る。何気なく火をつけようとした、その時だった。

 ぞくり……ぞわぞわと、真次は全身の毛が逆立つような感覚に襲われた。同時に、強烈な不快感が、鼻の内部を突き抜ける。


「……っつ!?」


 真次はこの感覚をよく知っている――自身の持つ強烈な『直感』によるものだ。こうした不快感を伴う物は、危険だったり悪い出来事のことの合図であった。


「藍……急げ! なんかやばい!!」

「どうしたんだ急に? ここは関係者以外、とても入れる場所じゃない。危険が迫ることなんてまずないよ」


 藍は笑って受け流したが、青年にとっては一大事だ。なぜならこの直感――今まで外れたことがないのである。


「関係ねぇよ! 俺の勘は当たるんだ!!」


 外科医としての才能を持つ彼は、この勘のおかげで何人もの命を救うことができた。怪我をする前に防げたり、治療が必要な人物のそばにいれるのだから、当然と言えばそうなのだが。

急いでくれと頼んだのだが……藍が異変に気がついた時は、もう遅い。

 パキリ、と空間の一部にヒビが入る。

 何事かと藍は目を凝らし、真次は危険を察して距離をとった。


「藍! それに近寄るんじゃねぇ!! 死ぬぞ!!」

「さっきからやかましいぞ。こんな異常を見つけて、放ってはおけな――」


 左手を伸ばして、藍が調べようとした瞬間だった。

 ひび割れから鋭い牙をむき出しにして、何かが藍の腕に喰らいつく。


「つっ――!? ああああああああぁあぁぁぁあぁつ!!」


 悲痛な叫びと共に藍はその場に倒れ込み、ソレはさらにひび割れを広げて姿を現した。


「――なんだこいつは!」


 それは、真っ黒い毛をすべて逆立て、牙は血に濡れて、瞳は暗い炎を宿して爛々と紅く輝き……身体の一部にちぎれた鎖が巻きついた、黒い陽炎のようなオオカミだった。

 漆黒の魔狼は真次に一瞥をくれると、怨念が形になったかのような、黒い炎の塊をいくつも飛ばしてくる。


「ってぇ!!」


 突然の攻撃を避けることはできず。何発か身体にもらってしまう。鉄球か何かをぶつけられたような、鈍い痛みが奔った。不幸中の幸いは、炎を模しているのに衣服が燃えなかったことだろう。


「ぐ……」


 痛みに耐えられず、その場にうずくまる真次。奴はそれで満足したのだろうか? あさっての方向を眺め、空間に爪を立てる。すると、ガラスが割れるように空間が砕け、狼はそこから外へと出ていった。


「何だったんだ今の……そうだ、藍! 大丈夫か!?」


 自分も腹を押さえながら、藍の元へと駆け寄る。

 ……ひどい噛み傷だ。衣服ごと喰いつかれ、至るところから出血している。太めの血管にまで達しているのか、出血量自体もひどい。さらに――悪いことは続いた。


「うぐ……な、なんで……なんで傷が塞がらない!?」


 出血を見て、パニックを起こしているらしい。顔は青ざめ、滝のように汗をかいていた。


「アホ! そう簡単に傷が塞がってたまるか! ちょっと待ってろ、今処置してやっから!!」


 手持ちの荷物の中から、医療キットと飲料水を取り出す。本格的な手術はここではできないが、応急処置だけでも済ませておかなければならない。

 傷口を水で洗い流し、包帯を巻いてやる。あっという間に変色していくそれは、藍が重傷であることを知らせていた。


「おかしい……なんで……こんな傷、なんともないはずなのに……」

「だから、人間がそう簡単に……いや、そういや藍は、人間じゃなかったか……」


 食い違う会話に違和感を覚え、そして思い出した。藍は人間ではない。異世界の住人で、人間よりよっぽど頑丈にできているのかもしれない。ならどうして、人のように血を流している?

 真次は想像の範囲内で、必死に答えを探して、ある仮説を立てた。


「まさか、毒か!?」

「ど、毒だって?」

「狼が毒を持ってるなんて常識じゃ考えられんが、それ以外思いつかねぇ。妖怪なんざ診たことねぇからはっきりとは言えねぇが……普通ならこんな傷、藍はなんともないんだろ?」


 藍は苦しい表情のまま、頷いた。


「くそ、まずいぞ……藍急げ! なんとか医者の所への道を作るんだ! 応急処置じゃどうにもならん!!」

「……わかった」


 そう言うと無事な右手で空間を操作する。その間に、せめてもの時間稼ぎとして、真次は左手の付け根あたりにも、きつめに包帯を巻いてやった。こうすることで血流を少なくし、出血と毒が回るのを抑えることができる。そしてもう一つ……


「っつ~!?」


 藍の傷口の包帯を一旦解き、そこに唇をあてて血を吸い出す。濃厚な血の匂いに、頭がクラクラ来たが、ここで自分まで倒れる訳にはいかないと堪えた。


「わりぃ。今はこれぐらいしかできねぇ……医者のとこ行ったら手術台借りて、ちゃんと傷も塞いでやるからな……!」


 もう一度包帯を傷口に巻きなおし、ハンカチで汗を拭いてやる。どうしてこんなことになったと思ったが、そんなことより今は藍を助ける方が先だ。


「あ、りが……とう。さ……開いた……」

「意識を保て! もう少しだ!」


 空間が開き、竹林だらけの場所に、屋敷が一つぽつりとある場所に出る。

 もう夜遅くだったが、真次は構うことなく、戸を乱暴に叩きながら叫んだ。


「急患だ! 今すぐ開けてくれ!!」



               6月20日 00:27


それと一つお知らせです。投票についてのまとめページを作りましたんで、参考にしてくだしあー

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