STAGE 1-17 宿命
連続投稿途切れたー!!
6月26日 20:25
「……ふぅ」
永遠亭の縁側で一服しながら、真次は昨日のことを振りかえっていた。
妹紅と寝床を共にし、影狼を助け、その夜には輝夜とも一緒に眠った。
しかし自分には、欲求が湧いてこなかった。予想通りと言えばそうなのだが、きっと何らかの反応があった方が正常なのだと思う。
――この性質は、異世界でも健在か――
憂鬱になったからこそ、真次はタバコを吸っている。自分がタバコを吸うときは、基本的にはやりきれない時だ。
例えば、患者を救えなかった時。
例えば、自分のせいで誰かを傷つけてしまった時。
ここに来る直前、病院で吸った時も患者から告白された時であった。その時に泣かせてしまい、内心それをずっと引きずっていた。
そして今回は、自分の異常性を再認識してしまったことで――これまでも、これからも、女性と付き合えない生活をしていくんだろうと思って、老後が大変だなぁと想像してしまい、一服するに至る。
「あら? 先生、喫煙者だったのですか?」
振りかえると、そこには永琳がいた。意外そうにこちらを見ている。
「まぁな。医者はストレス溜まる仕事だし?」
「あー……ストレスを和らげる薬と、禁煙用の薬を出しましょうか? タバコよりは体にいいですよ?」
「……考えさせてもらう」
とは言ったものの、多分タバコをやめることはないだろうと真次は踏んでいる。健康に悪いのは百も承知だが、自分の特性上、強烈に『渇く』ときがあるのだ。手軽にできるタバコのほうがいい。
「昨晩のこと、姫様から聞きました……手を出されなかったんですね」
「当たり前だ。てか、なんでそんなにくっつけたがる?」
「面白そうと言うのがありますね、姫様が人を気に入るのは珍しいですから」
そんなものか、と真次は思案する。他に何か裏があるのかと勘ぐっていたが、どうやらそういうことではないらしい。
「俺にとっては、永林の方が魅力的なんだがな」
「それも聞きました。物好きですね、先生」
「何言ってんだか。医学全般できるスーパー超人が、魅力的じゃないって何の冗談だ?」
その言葉を聞いた永琳がくすりと笑った。
「医者馬鹿とは、先生のためにある言葉だと思いますわ」
「それもよく言われる。治す気はないし、多分治らない上治しちゃいけない」
タバコの火の先を見つめながら、ぼんやりと彼は言った。
「生まれたその時から、俺は医者馬鹿だった。だからこれからも、これまでも、俺は医者馬鹿なんだろう」
「生き方を変えようとは、思いませんの?」
タバコの煙の先を見つめながら、彼は話し続ける。
「――運命は変えられるとか、ロマンティックなシチュレーションで運命とかほざく連中がいるが、俺はそれが嫌いだ」
「どうしたんです急に?」
「運命ってのはな、俺が思うに諦めるための言葉なんだよ。そう思わなきゃやってらんない。そういう時に使う」
視線を虚ろなままに、青年は話す。
「でも、困難から奇跡を起こす人だっていますよ?」
「……そうだな。なら――運命は変えられて、宿命は変えられない。で、俺が医者なのは……多分宿命だ」
彼は、灰皿にタバコを押し付けて火を消した。
「……それは、悪いことなんですか?」
「俺のは……良かったと思う時もあれば、不便と思う時もある。弟は苦労したから家出したんだろうな。兄貴のは最悪だった」
「……?」
取り留めもない真次の話に、流石の月の頭脳も困惑している。だが、真次が医者を『やめられない』というのは、伝わっただろう。
「ああ、わりぃ。訳わかんねぇよな。忘れてくれ」
どこか寂しげに、真次はその場を去る。
残された永琳は理解に苦しみながらも――彼が何かを背負っているのだけは察したのであった。
6月26日 20:41 STAGE 1 End
さて、この話ですが、前作読んでないとピンとこないかもしれませんが……そうです。裏設定にかかわる話です。同時に彼が人に好かれても、避けている理由でもあります。まぁ、ネタがわかれば、「なーんだ」みたいなやつですけどね。




