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STAGE 1-15 今泉 影狼

影狼ちゃんをモフモフしたいです。いかんいかん。つい本音が……(オイ

6月25日 10:05



 無事に永遠亭に辿りついた二人は、素早く住人に状況を説明した。

 警戒して出ようとした永遠亭の住人だったが、それを少女が引きとめる。


「途中から足音とにおいがしなくなったから、たぶん追ってきてはいないわ……」


 無我夢中で逃げてきた真次としては、相手との距離感は全くわからなかったが、この少女は察知してたらしい。永琳たちが軽く気配を探ったそうだが、確かに追手はいないそうだ。一段落した所で、輝夜が真次に声をかける。


「無事でよかったわ真次。昨日はどこで寝泊まりしたの?」

「妹紅の小屋だ」

「えっ……何かされなかったでしょうね!?」

「一緒に寝たぐらいか? それ以外は特に何もなかったぞ」


 話を聞いた輝夜はわなわなと震えている。


「……輝夜? どうし――」

「妹紅なんかにアンタは渡さないわ! 今夜私とも一緒に寝なさい!!」

「はいぃ!? 変なところで対抗意識出すなよ!?」


 ちらとウドンゲに視線を送り、助けてくれと訴えかけるが、


「姫様は妹紅さんのことになると頑固でして……諦めてください」


 返ってきた答えは、真次にとって好ましくないものであった。続いて永琳にも同じように視線を送る。が、


「寝床に身体拭くもの用意しておきますね。今夜はごゆっくりとお楽しみに――」

「なんでそうなる!? 俺は姫さんに手を出す気はねぇ!!」


 何をどう勘違いしたのか、永琳は真次と輝夜の仲を肯定するようなこの発言である。


「私に魅力を感じないって訳!? 上等よ!! 何が何でも私に手を出したくなるようなシチュにしてあげようじゃない!!」

「いい加減にせんか! そもそも部外者いる時にこんな話題出すんじゃない!!」


 真次が助けた少女は、顔を赤くして困惑している。年頃の娘に、この手の話題は刺激が強いと思われるので、真次は早々に切り上げることにした。


「あ~……その、なんだ。いきなりこんな会話に巻き込んですまんな。どこか撃たれたか?」

「え、ええっと……何箇所か……」

「わかった、んじゃ俺が診よう。永琳、診察室借りるぞ」

「に、逃げるな真次!!」

「姫様……大丈夫です、セッティングは私がしておきますから」

「それは大丈夫じゃねぇ!!」


 捨て台詞のように吐き捨て、そそくさと真次は少女と共に診察室に逃げ込んだ。


「悪いな。いきなり痴話喧嘩みたいな話聞かせちまって」

「あの……さっきの人たちと仲いいの?」

「友人や同僚としては嫌いではない」


 少女を椅子に座らせ、自分も反対側に腰を下ろした。ようやく落ち着けたところで、真次はあることに気がつく。頭の上に、獣のような耳がついているのだ。


「……よく見たら耳が人間のソレじゃねぇな」

「気がついてなかったの? 私、妖怪よ?」

「なら、ますます放っておけなかったさ。あいつら、妖怪の再生能力を阻害できるからな」

 

 真次が、件の敵について説明する。それを聞いて少女は震えあがった。


「下手したら私、死んでたの……?」

「そうだな。その可能性が高い」

「迂闊に話しかけようとするものじゃないわね……恐いわ……」


 どうやらあいつらは、容赦なしに妖怪に襲いかかってくるらしい。交渉の余地は、ないということか。


「あの、名前は? 命の恩人の名前ぐらい、知っておきたいわ」

「あ~……恩着せがましくなっちまったか? そんな深く考えなくていいぞ? たまたま近くを通りかかったから助けただけだし。怪我しそうなの、見てられねぇっていうか……それはともかく、俺は 西本 真次 最近外の世界から来た医者だ。まだ弾幕戦とか不慣れだけどよろしく。で、嬢ちゃんは?」

「私は 今泉 影狼 ニホンオオカミの狼女よ」


 あまり聞きなれない種族だが、狼男の女版だろう。……しかし狼男は西洋の妖怪ではなかったか? それのニホンオオカミ版とはこれいかに。


「どこ撃たれた?」

「左手と、右足と……おなかかしら……」

「結構貰っちまってるな。診るぞ」


 左手と腹部は、大したことがなかった、軽く赤くなっている程度で、押してみてもそんなに痛くないらしい。だが、右足は腫れがあっている。走って逃げたから、その時に痛めてしまったのかもしれない。


「足が酷いな。湿布貼っとこう。後、しばらくの間は怪我に注意すること。いつも通りだと思って回復しないとか最悪だからな……一応二週間分湿布も出しとくぞ」

「うん……」


 身体を見られるのが恥ずかしかったのか、影狼の頬は朱に染まっている。……どういう仕組みかは知らないが、耳も垂れさがっていた。

 そんな影狼のことは気にも留めず、真次は奴らのことを話し始める。


「しっかし、あいつら分裂までできるとはな……」

「えっ……奴らって、あの狼のことよね?」

「ああ。……俺が襲われた時は一体だけだったんだ。しかも、サイズも二回り……いや、もっとか、大きかったような気がする」

「……そういう能力持ちだったりするのかしら? 私みたいに変身するみたいな」

「それもあり得るな。だが、推測するにしても情報が少な過ぎる。後手に回っちまうが、相手の出方を見るしかないというのが現状だ。とにかく、警戒してくれ」


 少女は小さく頷いた。


「よし。で、どうする? また竹林に戻るのは不安だと思うが」

「においは覚えたから、近づかれてもすぐ逃げれるから大丈夫。私はにおいや物音に敏感だから。あの、お代は? 今は手元にないんだけど……」

「ん? ああ、そんなの今度でいいぜ。俺は儲けるために医者やってるんじゃなくて、誰かを助けるために医者やってるからな」


 現代では、田舎でもない限りお代を待つというのが難しい状況になりつつあるが、幻想郷なら問題ないだろうと真次は判断。現に永林も支払いを待つということをしていたし、大丈夫だろう。


「……色々と、ありがとう」

「ああ、気にするな。これが俺の役目だから」


 カラカラと笑いながら、影狼の頭を撫でてやる。最初は驚いたようだが、次第に「くぅん」と声を上げて目を細めた。毛の手入れはしっかりしているらしく、さらさらで気持ちがいい。耳にも少しふれたが、本当に獣のそれであった。


「それじゃ、お大事に」

「うん……じゃあね」


 去り際、彼女の頬が赤かったのだが、結局真次はそれには気がつかないままである。

 結局真次が彼女の気持ちを知るのは、別の異変の際、彼女が暴走した時であった。



6月25日 10:27


という訳で、輝針城キャラの影狼回です。

本当はもっと糖度高くしたかったんですが、収集がつかない上、投票キャラじゃないという理由でボツに。ちなみに輝針城キャラでは二番目に好きです。一番は誰かって? 正邪ちゃんにきまってるじゃないですか~

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