STAGE 1-13 自嘲
PV7万ありがとうございます!
6月25日 07:23
西本 真次は目を覚ましたと同時に、妙に布団が温かいことに気がついた。
いや、温かいを通り越して、少し暑苦しい。理由は明白で、隣に妹紅が同じ布団で眠っていたからである。
きっと寝ぼけて、布団に潜り込んでしまったのだろう――勝手にそう思い込み、布団から出て朝食の準備でもしようとした時であった。
「先生……好き……」
寝ぼけながら……しかし確かに幸せそうな表情で、彼女は呟いた。
真次は――ため息を吐く。
(これで、何人目だ?)
真次は、現世でも大変女性に好かれてきた。患者、看護師、同僚――告白された回数も下手をしたら二ケタ後半行っているだろう。だが、その度に、彼は全部ソデにしてきた。相手が気に入らなかった訳ではない。
原因はすべて自分にある。人を惹きつけてしまうのも、そして誰かと一緒になることができないのも――
(参真はどうやって呪いを解いたんだろうな。あいつのも相当大きかったはずなんだが)
せめてもの罪滅ぼしに……妹紅がひと時でも幸せでいれるように……彼女が起きるまで、真次は一緒の布団にいた。
***
その後、二人は食事を共にし、真次は早々に小屋を出ることにした。
永琳たちには何も言ってなかったし、心配しているかもしれないと思い、早めに帰るべきだと考えたからだ。
妹紅は少し寂しそうな顔をしたが、止めはしなかった。止めるだけの理由がなかったのかもしれない。
「じゃあね先生。また泊まりに来てもいいのよ?」
「……機会があればそうさせてもらう。妹紅も気をつけろよ? まだあいつら、うろついてるかもしれないからな」
「同じ相手に遅れをとるとでも?」
「……それが油断だと思うんだが」
「怪我したら真次先生が治してくれるんでしょ?」
「そりゃそうだが……基本、医者なんて暇なほうがいいんだぜ?」
これは真次の本心だ。必要だから医者は存在するが、怪我人が出ないのが一番である。
「……ほんと、善人なんだから」
「ちげぇよ。俺はただ医者なだけだ」
自嘲しつつ真次はそう言ったが、妹紅には伝わらなかった。……これが自嘲など、だれが考えられよう?
その言葉を最後に、真次は妹紅の小屋を去る。
真次の姿が見えなくなるまで、妹紅はずっとその場にいた。
6月25日 08:52
今回は短め。毎回安定して書ける作者さんたちがうらやましい……




