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STAGE 1-11 VS妹紅戦

今回長いよ! 時間のある時に読んでね!

6月24日 17:00



 さて、妹紅の退院も無事に済み、そのまま真次は妹紅に連れられて迷いの竹林を歩いている。永遠亭で戦わないのは、輝夜にからかわれるのが嫌だという妹紅側の理由だ。真次としても、野次が飛んでくる中ドンパチやるのは遠慮したい。

 それに、輝夜たちは青年のスペルカードにも興味を持っているようだった。あまり見られるのも気恥かしい真次としても、都合が良かった。


「さ、ここならそこそこ広いし、真次先生でもやりやすいと思うわ。……まだ本調子じゃないけど、先生相手ならちょうどいいハンデでしょ」

「相変わらず俺と居ると鼓動が早くなるのか」

「そうなのよ。本当、困ったものだわ」


 やれやれと肩をすくめる妹紅に、真次は「無理するなよ?」とだけ言っておく。弾幕ゴッコ中に心臓発作で倒れたなど笑えない。


「私は不死身よ? あの医者も、もう再生力は発揮されてるって言ってたから大丈夫」

「だといいがな。それじゃあ――そろそろ始めますかい」


 真次と妹紅は距離をとり、医者は懐から銃を二丁取り出す。左手には、無強化のおもちゃのオートマチックハンドガン。右手は、札をぺたぺた貼りつけられているリボルバーだ。

 見馴れない道具に、妹紅は眉を寄せた。彼女いたの時代に、銃など存在していない。さらには世間から隠れるように生きてきた妹紅は、その道具が何か正確に認識できない。

 疑問に思っている彼女に弾丸を撃ち込もうと、真次はトリガーを引く。反射的に危険を察知したのか、妹紅が跳ね、すぐ後ろの竹を弾丸が掠める。そのまま真次は彼女が攻撃してこないのをいいことに、連続で弾丸を撃ちまくった。が、一発も当たらない。


「っち、流石に慣れてやがるな!」

「当たり前でしょ!」


 不意を突いたつもりだったが、この程度では当たらないらしい。……予想通りだ。

 最初から彼女を倒せるなんて、真次は微塵も思っていない。一発大きいのを喰らわせられれば上等だと考えている。そのためにも――


「花弾『花火玉』!」


 彼女には、油断していてもらう必要がある。だから、遊びで作った様子見用のスペルカードを早速使用した。

 花火が打ち上がる時の独特の音と共に、リボルバーから特殊弾が発射される。やがて弾丸は弾け、空中に花火のような派手な色彩の弾幕を形成した。

 当然だが、これも妹紅に命中する様子はない。そのまま花火玉を連射するも、至近距離で炸裂したのでさえかわされてしまう。

 反撃の妹紅の弾幕を、できるだけゆっくり動いてかわす。急加速で大きくかわすことも可能だが、それをやってしまうと後に続かない。多少の被弾覚悟で、彼はゆったりと飛んだ。


「煙弾『スモークランチャー』!」


 ダメージを少々受けた所で、二枚目のスペルカードを発動。内容は名前の通りで、スモークグレネードを放つスペルカードだ。永琳戦で一枚目に使ったスペルカードでもある。

 煙の中身は無味無臭。催涙弾にしようかとも考えたが、自分から煙幕に飛び込む機会もあるだろうしやめておいた。


「不死『火の鳥―鳳翼天翔―』!」


 煙越しに妹紅がスペルカードを宣言。煙幕が吹き飛ばされ、大量の弾幕が展開される。

 だが、妙だと思った。なぜなら、その弾幕はよく目を凝らせば真次でもかわせなくはない。自分が相手だから、加減しているのだろう。

 真次はニィと笑って、三枚目のスペルカードを発動する。ここからが本番だ。


「紅弾『フレアニンバス』!!」



                 ***



 妹紅から弾幕ゴッコ中の真次を見た評価は、「初心者の割に、よくやる方」であった。

低速でトロトロ飛びながらも、なんとか弾幕を避けれてはいる。真次の飛行方式だと加速が効かないのだろう。だがむしろ、弾幕戦において有効な移動方法でもある。霊夢辺りは最小の動きで弾幕を捌くタイプだ。真次もそうなのかもしれない。最も、その割にはちょくちょく被弾しているが。


(スペカは手加減して正解だったわね)


 下手に最高出力で撃てば、それだけで決着しかねない。それは妹紅の望むところではないし、真次側としても面白くないだろう。これは決闘であると同時に、遊びなのだから。

 ニィと真次が笑い、彼は三枚目のスペルカードを宣言する。


「紅弾『フレアニンバス』!!」


 彼のスペカは、一枚目は花火、二枚目は煙幕であった。恐らく、様子見用のスペルカードだろう。彼が幻想郷入りした時期を考えると、これが本命と思っていい。


(まあ、私なら軽く捌けるでしょうけど)


 彼は左手から高速の小型弾をばら撒きながら、右手でかなり遅い弾を射出される。しかも、あさっての方向に。……これも大したことないのだろうか。小型弾を避けるため、高度を上げていく。もちろん真次に視線を合わせたまま。


(フジワラボルケイノで終わらせようかし――痛っ!? あつつつつ!?)


 完全に油断していた妹紅は――空中で発生していた巨大な爆風に焼かれた。進路上にいつの間にか発生していたらしい。慌てて退避する。


「い、いつの間に!?」

「よく見てないからそうなる!」


所どころに爆風は発生していた。真次に視線を合わせていたから、周りを見てなかったのだ。

爆風が消えると、再び右手から低速弾が発射される。もちろん、左手は休むことなく弾丸を放ち続けている。となると、鍵は右手から発射された弾丸だ。

やがて低速弾は空中で炸裂。先ほども見た爆風を発生させる。しかも、結構な長い間発生し続けるようだ。これに妹紅は突っ込まされたらしい。音などが全くしなかったからわからなかった。


(よく弾の軌道を見ておかないと食らうわね、これ)


 大規模な爆発なのに無音というのは、想像以上に厄介だ。妹紅は気を引き締める。このスペカは慎重に対処しないとまずい。

左手の弾幕は爆風に突っ込ませようと誘導している節がある。もちろん、場合によって直撃狙いと使いわけてはいるの見ると、真次はちゃんと考えて弾幕を張っている。


(なるほど。これがあなたの切り札ね)


 このスペカがあれば、並みの妖怪なら対処できるだろう。炸裂弾は威力も十分だし、空中の相手に行動制限をかけられるのは大きい。

 しかし皮肉にも、これは真次のように最小限の動きをすれば回避できてしまう。炸裂弾が自分に向かって飛んで来た時だけ、大きくかわせばいい。

 これで、真次はほぼ霊力切れだろう。初戦にしてはよくやった方である。決着をつけるため、妹紅はスペルカードを使おうとした。

 その時だった。真次が急激に加速して、至近距離までこちらに近づいてきたのは。


(……え?)


 真次は初めからゆっくり飛んでいたし、こちらに来て一週間と経ってない。

 二枚のスペカは大したことがなく、ちょくちょく被弾もしていた。

 だから――三枚目の火力が高かった時点で、それが切り札で霊力切れだと錯覚した。

 違ったのだ。確かに彼の霊力は厳しい状態かもしれない。が、霊力切れなんて言ってないし、今までゆっくり飛んでいたのは加速しなかっただけだ。

 なら被弾が多かったのは? 低速で飛んでいた弊害? それだけではない。多分、初心者だと思わせ、油断させるためだ。

 やられた――と妹紅が思考を巡らせている間に、真次は先ほどのようにニィと笑い、彼女のスペルカードより早く、彼の四枚目のスペカが発動する。


「豪弾『ファイヤーワークス』!!」


 直後、『フレアニンバス』とは比較にならない強烈な衝撃が、妹紅の身体を襲った。



                 ***



 真次は肩で息をしながら、爆風の先を見据えた。

 豪弾『ファイヤーワークス』は、トリガーを引いた瞬間、銃口から爆風を放つスペルカードだ。強力ではあるのだがその性質上、近距離でしか効果を発揮しない。

 故に、妹紅には油断していてもらう必要があった。こっちがもう限界のように見せかけ、かつ、「高速で移動できない」という芝居をする必要が。

 少々汚いとも思ったが、この手の真剣勝負は油断する方が悪い。元々、本気を出されたら終わりなのだ。なら、本気を出される前に、一気に決着をつけるしか真次に勝ちの目はない。

 爆煙が晴れていく。妹紅は立っているのか? 返ってきたのは――


「蓬莱『凱風快晴―フジヤマヴォルケイノ―』!!」


 元気いっぱい……を通り越して、ちょっと怒り気味の掛け声と、無数の弾幕、弾幕、弾幕――!!


「……なぁにこれぇ?」


 あまりの密度に避ける気も失せ、そのまま真次は被弾。激突した竹が何本か折れ曲がり、地面をゴロゴロと転がる。これが、妹紅の本気なのだろう。

ぐったりと倒れ込んだ真次に、誰かの陰がかかった。


「……まさか、あんな大技隠し持ってるなんてね。炎じゃなかったら、一回リザレクションしないとだめだったかも」

「…………いや、敗因はそこなのか?」

「私は炎の妖術を主体で戦ってるのよ? 炎が効くわけないじゃない」


 確かに、妹紅は炎の弾幕を使ってきていた。その相手に爆風での攻撃は効果が薄いかもしれない。しかし、真次は『爆発』するタイプのスペルカードしか使えないのだ。他に選択肢はない。


「戦う前から詰んでるじゃないですかーやだー!」

「そうかもね。でもあの最後の当てただけ大したものよ。油断はしてたけど……」


よろよろと立ち上がり、妹紅を見る。……所どころ服が破れていて、正直みっともない。やったのはおそらく自分だが。


「あーとりあえずこれ着ろ」


 目を逸らしながら、自分の来ていた上着を差し出す。妹紅は何事かと棒立ちしている。真次の真意が読めてないようだ。


「妹紅? へそとか見えてみっともないから、これ着とけ」

「へ? ……あっ」


 気がついた妹紅は、顔を赤くしてその場でうずくまった。幸い下着などは見えていないものの、外を出歩くには少々恥ずかしい格好ではある。


「そ、その……悪いわね」

「やったの俺だし。当然だろ」


 真次から白衣を受け取り、そのまま羽織る。土汚れが気になるが、あの格好よりはマシだ。


「輝夜とかとやる時は気にしないけど」

「そりゃ同姓だからだろ」

「異性でも……いや、なんでもないわ。もうこっち向いていいわよ」


 話している途中で、妹紅がハッとなった。……何か気がついたのだろうか? だが真次は余所を向いていたので、そのことがわからない。


「んじゃ、俺は永遠亭に帰るわ……っとと」


 帰路につこうとして、ふらついた。……『ファイヤーワークス』で一気に霊力を消費したうえ、妹紅のスペカまで直撃したのだ。体力、霊力ともにギリギリである。その様子を見た少女が苦笑しながら言った。


「その霊力じゃ道中妖怪に襲われたらどうするのよ? もう遅いし……その、私の小屋に泊まりなさい」

「いいのか? 助かるぜー ここから近いのか?」

「割とすぐよ。永遠亭に行くより断然近いわ」


 妹紅が先導し、真次を案内する。

 竹林での戦闘を終えた二人は、妹紅の住む小屋へと向かった。



6月24日 18:41


スペルカード解説のコーナー! 

今回一気に四枚もあるから大変だけど、やっちゃうぞ!!


花弾「花火玉」

真次が遊びで作ったスペルカード。花火を模した特殊弾を発射する。

以外と霊力消費が少なく、その割には弾幕をバラまけるので汎用性が高い。真次の様子見用スペルカード


煙弾「スモークランチャー」

作中で書かれているように、煙幕を張るスペルカード。リボルバーの弾丸がすべてこれになるので、使用中は火力が下がる。


紅弾「フレアニンバス」

空中で炸裂する特殊弾を発射する。爆発はしばらく発生し続け、相手の飛行ルートをある程度制限可能。


豪弾「ファイヤーワークス」

これも作中で書かれている通り、強烈な爆風を銃口を向けている方に放つスペルカード。現状真次の最大火力。ただし、消耗が激しい上、その性質上近距離でしか機能しない。


真次君のスペルカードが初登場でしたが、いかがでしたでしょうか? あと、真次君のスペカの方針ですが、時折ゲームで登場した兵器や攻撃のリスペクト弾幕が混じるような感じで行こうと思います。作者もゲーム好きですし、彼もやってるから、不自然ではないでしょうし。

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