STAGE 1-8 交戦
ふふふ……久々に早め更新できたのDES!
6月23日 15:51
その少女は、普通の人間としては異様な姿をしていた。
服装はボロボロの白いワンピースと普通(?)なのだが、頭にアンテナらしき物が角か触覚のようにくっついていて、背中にはパラボラアンテナを背負っていたからだ。少なくても、「普通の人間」ではない。
「嬢ちゃん、聞こえるか! ちょいと止まりな!!」
衰弱しているのか、ふらふらと飛ぶ彼女の姿は危なっかしく、真次でなくても心配して声をかけるだろう。縄張りにうるさい天狗たちでも、攻撃をためらうかもしれない。
「……? だれ……? お母さんじゃない……」
「いいか嬢ちゃん、既にここは他人の領地なんだ。ふらついてると不法侵入したってことで攻撃されっぞ!」
「人間……? ああ、そうか。やっぱり私、戻ってきたんだ……お仕事できなくてごめんなさい。だけどわかって……あんな暗くて冷たい世界、一人でいるなんて無理だよ……」
真次の警告を無視して、そのまま飛び続ける少女。うわごとのように呟くその声は、なんとか彼にも聞き取れたが、その内容は理解できなかった。
「止まれって! 何が目的かは知らんが――」
「あと、少しなの……! もう少しでお母さんの所に……邪魔を、しないで!!」
叫ぶと同時に、ドス黒い気配が洩れでる。つい真次は後ずさった。
(この感じ……どこかで?)
戸惑う彼に、少女は弾幕を放ってきた。真次は右に急加速でそれを回避。リボルバーを構える。
「……止まるつもりはないんだな?」
少女は答えず、代わりに何か叫びながら弾幕を放ち続ける。こんな相手と戦うのは気が乗らないが、このまま通せば何が起こるかわからない。ここで止めるやる方が、彼女のためにもなると信じ――発砲。
札をつけてから初めて撃った弾丸は、多少弾速が落ちているようにも思えた。少女はおっかなびっくりそれを避け、背後にあった一本の木に着弾。小さな爆発を引き起こし、木の表面に焦げ跡を残した。
(そこまで強くなってねぇ! なんだよ、スペルカードが使えるってだけか!?)
想像より威力がないことに愕然としながらも、回避は怠らない。不幸中の幸いなのが、相手もまだ慣れてないのか、弾幕の濃さも早さも、輝夜やウドンゲに比べれば全然大したことはなかった。
だが、状況は悪い。戦闘しながらスペルカードを作れるような才能は、彼にはなかった。ひたすら通常弾で対応するしかない。
「そっか……これが王様の言っていた……確か、強力なのは宣言しなきゃ使えない……だったよね。観測『サターンリング』」
相手が一枚目のスペルカードを使用。真次の背後に、クリーム色の巨大な星が現れた。
嫌な予感がした真次は、一気に少女に接近。直後、彼のいた場所を無数の氷の粒が襲いかかる。彼は振り向かず、そのまま少女への攻撃を続行。あっさりと一枚目のスペルカードを破ることに成功する。
(こいつ……俺より弾幕戦に慣れてねぇのか? いける!)
真次は距離を詰めたまま、彼女との戦闘を行うことにする。こちらの方が命中率が高いし、相手の攻撃はぬるい。ならば、騒ぎを天狗に聞きつけられるリスクを避けるという意味でも、早期決着が望ましい。
いくら威力が低めだとはいえ、連続で命中させ続ければダメージは蓄積する。元から弱々しく飛んでいた少女は、やがて回避する気力すら削がれたのか、低速でふらつくだけになっている。そこに次々と弾丸を浴びせるのは、真次の心が痛んだ。だから、彼は一旦攻撃を中止して、
「……嬢ちゃん。負けを認めな。これ以上は――」
「いや……絶対に……お母さんの所へ! 刻印『アースプレート』っ!!」
ここで止まれと言ったのだが、少女は最後の力を振り絞って、スペルカードを放つ。しかし正直なところ、一枚目の方がまだ脅威であった。単純な図形や人の形をした弾幕を、真次は軽々とかわしていく。
彼は一気に加速、すれ違いざまに背後を取り、そして一言。
「嬢ちゃん悪りぃ、ちょっと寝ててくれ」
少女の後頭部に、至近距離から一発撃ち込む。
彼女は空中で二、三歩ほど動いた後、
「王様……みんな……どこ……? 私は…………また……ひと……り……」
小さな声で、でも確かにそう呟いて――落下した。
慌てて真次は回り込み、地上で彼女を受け止める。
――華奢な身体の割に、少女はずしりと重かった。機械を背負っているからかもしれない。
「さて、にとりの所に連れてくか」
慣れた手つきで少女を背負い、青年はもう一度、にとりの研究所を目指した。
6月23日 16:17
さて、謎の少女の正体ですが、実は今回の異変で登場するキャラクターの法則からは外れています。そのため、正体を見つけるのが一番難しいかもしれません。まーそのうち公開するのでご安心を。




