STAGE 1-7 迫る通信主
ん。今回は早めに投稿できたかな。これぐらいのペースで普段から書ければいいんですけどね(白目)
6月23日 15:17
「いやー真次! これ面白いね!! ガスでおもちゃの弾丸を発射する仕組みだなんて、よく思いついたものだよ!!」
にとりの研究所に戻ると、満面の笑みでにとりが二人を出迎えた。
大変満足の様子で、真次にリボルバーのエアガンを返すと同時に、一枚の紙と様々な大きさのドライバーが入ったツールキットを手渡した。
「ん? こりゃなんだ?」
「バラした時に、解体のやり方と組み立て方の手順を書いておいたよ。たまに整備してあげたらいいんじゃないかなと思ってさ」
……真次の攻撃方式は、空のエアガンに霊力を込めて、射出するという方式だ。物理的なものではないから、整備が必要かどうかと言われると疑問符がつく。しかし、こういうのは気の持ちようも重要かもと思ったし、何よりにとりが気をきかせてくれたのだ。それを無駄にするのも悪い。
「そりゃどうも。たまにやってやるかな……ほれ、もう片方だ」
「こっちも楽しみだよ! 椛も付き合ってくれてありがとう!!」
「……まぁ、完全に無駄足でもなかったのでいいです」
最後までそっけなかったが、椛の機嫌は最初より良いようだ。とげとげしさが少しだけ抜けている。そのまま去ろうとする椛に、彼は声をかけた。
「んじゃま、機会があれば将棋やろうぜ。向こうの世界の最新鋭戦法、見せてやんよ」
「……ほう」
ほんの少しだが、薄く彼女が笑った。……狼の面影の残る、獰猛さを残した笑みだったが、それはひどく楽しみだと、椛の表情は語っていた。
にとりは目をぱちくりさせて、真次と椛を交互に眺める。
「……いつの間に仲良くなったのさ?」
「将棋の話をちょっとしただけだ。にとりはやるのか?」
「うーん。あんまりそっちはやらないんだよねー普通の将棋だと椛、相当強くて私が勝てないから」
「へぇ。爺さんとどっちが強いか、楽しみだな」
真次も真次で、ニシシと笑う。……後にこの二人は、盤上で激闘を繰り広げることになるのだが、そんな未来をにとりは知らない。
「それじゃ、私はバラさせてもらうよ。真次はどうする?」
「地下室に入れさせてもらっていいか? そこで早苗のとこで貰ったお札を貼りたい」
外で貼って、効果をすぐ試すということもできるだろうが、こういった作業は落ち着ける場所で慎重にやりたい。にとりは了承し、真次を再び地下研究所に招き入れる。
「ところで、お札って何のお札?」
「ああ、なんか『蛙のお札』とか言って弾丸に爆発する効果を追加するお札らしい。守矢神社で強くなりたいと願ったら貰えた」
オートマチック式はにとりに渡しているので、リボルバーの方にお札を全部貼ってしまうことにする。半分残して両方貼ってしまおうかとも思ったが、妖怪には害があるそうなので、片方は触れた方がいいかもしれないと考えたからだ。
回転する部分が正常に動くように、札を張り付けていく真次。さっそくにとりがくれた銃の解体方法の紙が役だった。そのまま貼るより、一度バラして貼った方が数段楽である。
「……お母さん……お母さん……」
「うるせぇなぁ……」
無線機から流れてくる音に集中力を遮られながらも、真次は工程を終え、リボルバー銃を組み立てることに成功する。と、そこで、真次はあることに気がついた。
「……にとり。これさ」
「ん? どしたの?」
「さっきまでは、ノイズがひどくて掠れたようにしか声が聞こえていなかったよな。これ」
「そうだね。でも今ははっきり聞き取れるようにまでなったよ。何が原因で――」
「ここって、木が多い上に、通信を中継するところってないよな?」
「? そうだよ。それがどうかしたの?」
首を捻りながらも解体作業を続けるにとりに、真次はある推測を立てる。
「電波ってのは、障害物が多いと通信状況が悪くなることがある。それと、距離が離れていたりしてもだ」
「へー……あんまり相手がいないから知らなかったよ。そういう原因だったのかー」
「でさ、この通信相手、こっちに接近してきるんじゃないか? 特に通信機はいじってないんだろ?」
「おお! じゃあ会えるかもしれないね!!」
機械仲間が増えるかも、と喜ぶにとりだが、青年はそうも楽観していられなかった。
「にとり、ここに近づくってことはどういうことだ?」
「え?」
「一つヒントだ。俺への対応を思い出せ」
うーんと唸っていたにとりだが……やがてはっとなる。
「あっ……『妖怪の山の縄張りに、思いっきり侵入しちゃう』!」
「正解」
……通信機を使用していることと、にとりが『見たことないタイプの電波』と証言していることから、この通信の主は部外者である可能性が高い。となれば、ここに接近してしまうのは非常に危険だ。せっかく椛を呼びだして真次のことを穏便に済ませたのに、最悪妖怪の山の警備部隊と一戦交えることにもなりかねない。
「あーでも、これの解体したいしどうしよう!?」
「……俺が交渉してみる。戦闘になったらなったで、こいつの試し撃ちもできるしな」
「……悪いね、お願いするよ。出来れば、ここに連れて来てくれると嬉しいな」
「善処するぜ」
もしかしたら、真次と同じ外来人の可能性もある。ならば、自分が説明もろもろをした方がいいかもしれないという結論を、瞬時に出した真次は、札の貼られたリボルバー銃片手に、にとりの研究所を飛び出す。すると――
「お母さん……ここに居るの……?」
河の下流。真次でも視認できる距離に、悲壮感を漂わせて飛ぶ少女がそこにいた。
6月23日 15:50
さぁ、そろそろ盛り上げていきたいところです。謎の少女の正体は!? まて、次回!