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STAGE 1-6 負の念

大変ながらくお待たせしました! 申し訳ねぇ!!

6月23日 13:00



 神様に案内された神社内部は、予想以上に近代的であった。向こうの世界から来たと言っていたから、そう驚くほどでもないのかもしれないが。

 お茶とおにぎりを人数分、早苗が持ってくる。あらかじめ神様が用意したのか、あるいはとりあえず作り置きしてあったのかは不明だが、真次は手をつけない。話を聞くのが先だ。二柱と正座で正面から向き合っていると、蛙の神様が先に切り出した。


「……真次君。君が持ちこんだ妖怪の肉片は――呪われてるんだけど、呪われてない。より正確に言うならば、呪いの対象が正しくないけど、強い負の念が込められているせいで、悪影響が出てしまっているんだ」


 真次にはいまいちピンと来なかった。この辺りは専門外のせいもある。しかし、永琳に報告するのを考えると、聞き流すこともできない。なので、わかる範囲でメモをとることにした。


「確か、『妖怪は念の込められた攻撃に弱い』だったな」

「妖怪だけではなく、我々もそうだ。そもそも幻想郷の住人は、肉体ではなく精神が本体の者が多い。故に、精神を攻撃するのが効果的な訳だ」

「神奈子の言うとおりだね。だから、これは私たちでも危ない」


 八雲 藍や 藤原 妹紅が負傷していたことから、予測はできなくはなかったが、これは神々ですら持てあます呪いのようだ。厳密に言えば、呪いに込められた負の念だそうだが。


「……ちょっと待って下さい。あなた方なら、並みの呪いや念なら跳ね飛ばせるのでは?」


 おにぎりを口にしながら、椛が問う。


「並みなら、ね。」

「わかったことは、予想以上に少なかった。まずこの呪いは、対象が妖怪でないということ。呪いに込められた念は異常なほどであったということ、そしてこれは、幻想郷の住人にとって脅威になるということだ」


 蛙の神様は俯いて、しめ縄の神様は顔を渋くして答えた。真次も椛の問いに続く。


「どんな念が、どれほど深くだったんだ?」

「――『幻想郷に対する怨み』が、これ以上ないほど。そしてそれだけじゃなく、『ありとあらゆる怨み』まで込められている」

「永いこと世界を見てきたけど、こんな極大の念は見たことがない。まるで、複数の人間が、同時に念を込めたみたいだよ。でもそれだと、少しずつ念にブレみたいなものが出るんだ。人間の意識の集合体みたいなものだから、個人で少しずつ違うからね。けど、個人がこんな念を生み出せるとも思えない」

「……矛盾してる訳だ。故に、この呪いを作った奴がどんな奴かの予想もできてないってことか?」

「結構入れてくれたのに悪いね」


 蛙の神様は、小さく苦笑い。神にもわからないこと、不可能なこともあるということか。


「かわりと言ってはなんだが、一つ質問だ。……呪いを作ったそいつ、このままおとなしくしてると思うか?」

「「あり得ない」」


 神々は即答した。真次にとっても、その回答は予想通りである。


「だよな……そんだけ強烈な念があって、呪いをばら撒いて……そんな奴が、おとなしくしているはずがない」

「間違いなくそいつは異変を引き起こすだろうね。今までで一番血生臭い異変になるかもしれない」

「天狗たちにも警戒を呼び掛けておこう。椛、その役を頼めるか?」


 握り飯を食べ終えた椛が、こくりと頷く。


「文様の新聞でも、そいつのことは書かれていましたので、すんなり幹部たちも納得すると思います。そういう意味では、あなたの判断はよかったのですね、真次」

「名前は伏せるが、もうすでに名のある人物が二人やられて入院中だったからな。永琳たちが騒いでたから、こいつは深刻な事態なんだろうと察した訳だ」


 ようやく一息つけそうなので、真次もおにぎりに手をつける。……具は梅おかかであった。意外と家庭で作るのは面倒な具材である。


「真次さん、その相手の特徴とかってわかります?」


 早苗に問われ、真次は姿形、使ってきた弾幕、そして妹紅の証言などを織り交ぜながらそいつのことを告げる。

 特に、真次に瓜二つの姿になれることを話すと、しめ縄の神様の表情が曇った。


「擬態能力かもしれない。だとしたら厄介だ。最悪、敵か味方かわからなくなる。真次が遭遇した時の狼も、何かの擬態かもしれないな」

「鎖を纏った狼ねぇ……そんなのいたか?」

「鎖は何かの象徴かもしれないよ? あくまで『擬態』なわけだし、そのままコピーしているってことじゃないかも」


 その後も、対策やら正体やら推測を続けたが、いかんせん情報が少な過ぎる。結局のところ、目的も正体も、わからずじまいであった。しかし何かのヒントぐらいはあるかもしれないと思い、要約したものを真次はメモに書き残す。そうして長話している内に時間は過ぎ――太陽が真上から遠ざかった当たりで、椛がそっと話しかける。

 

「真次、往復の時間も考えるとそろそろ……」

「おっと、そうだった。ちょっとにとりの研究所に用事があるんだ。そろそろお(いとま)してもいいか?」


 二柱と早苗は頷き、椛と真次は、その場を後にする。

 後に幻想郷で語り継がれる大異変の一つ――『黒霊異変』

 その始まりの時は、すぐそこまで迫っていた。


6月23日 14:34


はい。この作品内での異変の名前ですが、かなりネーミングに手間取りました。実はこの名前でもいいかかなり迷って時間食ってたり……今回の話は色々ヒント撒いてるので、話が進んだ後読みに来ると面白いかも。でも……気をつけてくださいね?(意味深)

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