STAGE 1-5 二つのお札
ちょっと忙しくなってきたので、更新が遅くなります。一か月に一度は更新したいなぁと思っていますので、そのつもりで見てくれると嬉しいです。
6月23日 12:36
「お、オイィ!? こっちは至って真剣に願い事を言った訳なんだが!? それで大爆笑は酷いんじゃないですかね!?」
「い、いやゴメンゴメン。ずいぶん普通と言うか俗っぽいというか、そんなもんだからさ……あーそうか。こっちに来たばかりだったね?」
「まだ来て一週間経ってないな。ようやく弾幕を撃てるようになったばっかで、スペカは使えないという状態でさ……」
事情を真次が話すと、再び椛は真次のことを見つめる。……先ほどとは違い、少々呆れた様子で。
「よくそれで妖怪の山を突っ切ろうと思ったものです。運が悪かったら死んでますよ?」
「あー……そうなのか。じゃあ何だ、なんだかんだで、今日は俺ツイてるのか」
「……あなたに私の運を吸われている気がします」
「そんな能力持ってねぇぞ!?」
真次の能力は「悪意を切り離す程度の能力」である。残念ながら、幸運とは全く関係がない。
と、しめ縄のつけた神様の方が、一つ咳払いをしたのをきっかけに、二人は話をやめた。
「一応、理由を聞こうか」
「自衛ぐらい出来るようにしたいってのと……早ければ明日、妹紅との弾幕戦があるからだな。せめてスペカぐらいは使えるようにしときてぇってのが本音だ」
彼女の名前を聞いた途端、二柱と椛はきょとんとした。
「……付け焼刃でどうにかなる相手ではないぞ? 彼女は」
「俺だって、勝てるなんて思ってねぇよ。それでもさ、せめて善戦はしたいじゃないか」
「うん。その心構えはいいんじゃない? そういうことなら、君の強化は早苗に協力してもらって、あたしらは呪いを調べようか。早苗ー!」
背の低い神様が誰かの名を呼ぶと、先ほどすれ違った巫女がやってきた。どうやらこの巫女さんが、真次の強化を担当してくれるらしい。
二柱が大雑把に事情を説明すると、巫女さんは張り切って胸を叩いて引き受けた。
そして、真次は自身の現状とスタイルを、理解している範囲で丁寧に説明する。……道具を使うというのは珍しいことではないようだが、おもちゃの銃を媒体にしているのは彼ぐらいだそうだ。
「実物の銃を撃ったイメージがないとダメですからねー真次さんはどこで?」
「アメリカの射的場でだ。付き合いでちょっとな。でもやっぱり……『命を奪う道具』は肌にあわねぇな。ゲームとかだと問題ないんだが」
「初めから命を奪うことに抵抗がなかったら、それはそれで問題のような気も……人間として、という意味ですが」
そうこう話している内に、今の真次を把握した早苗は一つ手を叩いて、彼に話す。
「なら、守矢神社のお札を銃に貼ればいいんですよ! そうすれば『お札を貼った武器』になるので、妖怪に対して優位に立てますし、お札の効果も発射する弾丸に付与出来ます!」
早苗の提案してきた方法は、真次にとっても魅力的であった。なぜなら、時間もかからないし、手軽だからである。しかし……
「それは実にいい案なんだが……お札貼ったら、妖怪は迂闊に触れなくなるよな?」
「まー直接妖怪に投げつけるお札よりは、付与するお札は触ってもダメージは少ないですが無害ではないですね」
「……にとりと約束しちまったからなぁ。今この場で貼るのはなしの方向で。貼りつけるのって、素人でも大丈夫か?」
今手元にある銃は、にとりが解体を楽しみにしているオートマチック型の銃だ。これにお札を貼ってしまうと、にとりが心行くまで解体出来なくなる可能性がある。
「いけますよ。割と適当でも大丈夫なので」
「なら、貼るのは後で自分でやるわ」
「二種類あるんですけど、どっちのお札にします? 『蛇のお札』と、『蛙のお札』」
別々の札を取り出して、早苗は彼に尋ねる。
真次は初め、蛇の札にしようとした。そちらの方が攻撃的なイメージを持っていたからである。しかし、よくよく考えてみると、それなら『どちらがいいか』とは聞かない。蛙は蛙で、攻撃できる性能のはずだ。
しばらく考え込んだ末――
「じゃあ、あえて蛙で」
彼の出した結論は、蛙の札であった。どんな性能か、見てみたいというのが本音である。
両方貰って、別々の銃に貼るという方法もあるにはあったが、片方は妖怪にも触れたほうが、何かと便利かもしれないと思いやめておいた。
「はい。じゃあ、忘れずに後で貼っておいてくださいね!」
「さんきゅーな! これでスペカ使えるのか?」
「多分、爆発するタイプの弾丸ならいけると思いますよ」
「「……爆発?」」
早苗の言葉を、椛と真次はくり返す。どうやら蛙のお札は、爆発を起こすお札だったらしい。どこをどうすればそうなるのか、全く見当もつかないが、破壊力はありそうだ。
「……グレネード弾とか撃てたりするのか?」
「ばっちりです!」
「ちなみに、蛇だったらどんな特性だったのでしょう?」
「相手を追尾します!」
……それはそれで魅力的な能力だったが、今さら取り消すのも難だと思い、素直に彼女から『蛙のお札』を頂いた。後は銃に貼りつけるだけでいいらしい。
「えっと、君。確か真次君だっけ? とんでもないものを持ちこんでくれたね」
しげしげと札を眺めていた真次に、蛙の帽子をかぶった神様が話しかける。
「何かわかったか? あれを出来れば治療したいんだが……」
「それは難しいかな。呪いの大本を叩かないと……立ち話もあれだから、神社の中で昼ごはんでも食べながらしようじゃない。早苗と天狗もおいで。これは確かに、幻想郷のルールを壊しかねない。神奈子もびっくりしてたからね」
深刻な口調で語るその神の様子を見て、早苗と椛までどこか緊張した面持ちになる。それは真次にも伝わり、彼は表情を引き締め、神社の内部へと四人は向かった。
6月23日 12:57
今回出てきたお札は、聖蓮船だっけ? あれのAタイプの早苗さんと、Bタイプの早苗さんの装備をイメージしたお札です。Aが蛇のお札、Bが蛙のお札ですね。