STAGE 1-4 参拝 守矢神社
PV五万行きました! ありがとうございます!!
6月23日 12:23
椛に案内され、真次と椛は天狗の縄張りの中を突っ切り、無事に守矢神社前へと到着した。
ちなみに椛と真次の会話だが、ほとんど真次が話して終わりであった。と言うのも、椛は急に呼び出された上、面倒事を頼まれてしまったのだ。機嫌が悪くならない訳がない。そのため、終始彼女は無愛想だったのだが、一つだけ興味を示した話題があった。将棋のことである。
「向こうの世界では、大将棋は流行ってないのですか?」
「……ないな。将棋の方が普及してる」
「残念です。ところで真次さんは……」
「ああ、普通の将棋なら出来るぞ? ジイさんに鍛えられたからなHAHAHA」
ジイさん。とは言ったものの、本物の祖父ではない。入院患者の一人で、ややボケが進行してしまった老人だったのだが、真次を孫と勘違いし、来るたびに将棋をするようになっていた。
真次は真次で人がいいものだから、それに付き合っている内、いつの間にか実力がついてしまったのである。
「ふむ……時間ができたら、久々に指してみるのもいいかもしれませんね」
「お茶でも啜りながらやりてぇな。どっかの縁側とかでさ」
「……随分と渋い感性をお持ちで。ですが、嫌いじゃありません」
うんうんと青年は頷いて、ようやく鉄仮面から表情を変えた椛を眺めた。
境内に入り、二人は地上へと降りる。
「……この用事が終わるまで、椛は待機してなきゃいかん訳だが、それは理解してるか?」
「えっ?」
「だってこの後、俺はにとりの所に戻らなきゃならない。そんときも天狗の縄張りを突っ切る訳なんだが?」
「……本格的に、今日は厄日です」
「まぁ、そう気を落とすなよ。そっちにとっても、損じゃない話かもしれないぜ?」
「十中八九、関係がないような気がします」
砂利と石が敷き詰められた境内を歩き、神社へと向かう。
途中、ちょうど鳥居をくぐる辺りだろうか、ちょうどそこに、緑色の髪をした巫女がいた。
「椛さんと……あっ! その格好!! 文々。新聞の外来人さんですか!?」
「結構影響力あるんだなあの新聞。その通り。外来の医者、西本 真次だ。参拝つーかお願い事に近いんだが、この先の賽銭箱でいいのか?」
「はい! そのままですよ!! にしても椛さんも隅に置けませんねぇ~」
「お前は何を言ってるんだ?」
「あなたは何を言ってるんです?」
こんな時に限って、意見が一致する椛と真次。残念ながらまだ、二人はそういう関係ではない。
「二人の恋愛成就のお願いではないのですか?」
「誰がこんな人間と」
「今日会ったばっかだっつーの。ずいぶんノリの軽い巫女さんだな。現代風というか」
「わかります~? 私も数年前に、幻想郷へとやってきたんですよ~」
冷めた反応の二人に、彼女は冷やかすのをやめた。彼女もどうやら、元は外来人らしい。
「あとで時間があったら、そちらのこともゆっくり伺いたいです。現代はどうなったか、ちょっと気になりますから」
「……あんまり多くは話せないぞ? 医者やってたもんだから、忙しいことが多くてな」
会話もほどほどに、二人は彼女の元を去っていく。歩いてすぐに、本殿があった。
(ここに賽銭を放り込めばいいんだな)
とりあえず、永琳から貰った額の半分と少しを取り出す。……隣でそれを見ていた椛は、目を丸くした。
「そんなにたくさん……一体何を願うつもりですか?」
「願うというよりは、依頼に近いな。内容としては、下手したらこの世界の存続に関わるかもしれん。だから、ケチな真似はできないのさ。……ここの作法わかるか?」
椛に習い、礼と拍を決められた通りに行い、頭の中で依頼の旨を浮かべる。ほどなくして、異様な――神々しいとはこういうことを言うのだろう――気配が辺りを包む。恐らく、ここの神様が出てきたのだろう。
「ふむ……それがお主の依頼か。引き受けた」
淡々とした口調だったのだが、威圧されたような感じがする。仮にも神様と呼ばれるだけの存在ではあるなと、青年は思った。しかしそれでも、彼は態度を崩さない。
「これが、調査依頼の対象物だ。凍結させて保存してある。内容は言うまでもないだろう。出来るだけ早めに終わらせてくれると助かる」
あまりにも普通過ぎる態度に、椛は焦り、神様は困惑した。故に彼女は、青年に問う。
「……恐くないのかお主?」
「頼みごとする相手に、ビクビクしてたら逆に失礼だと思うんだが……」
青年は頭を掻きながら答える。本当にそっけない様子で。
その様子を見ていたもう一柱は、笑い声を上げながら現れる。
「あはははは! 何と言うか、大物なのか馬鹿なのか、よくわからない人間だね、神奈子」
「全くだ。神というものを理解していないと見える。外来人故に仕方なしか」
初めに現れた神は渋い表情で、もう一人は――見た目が子供じみているせいもあって、表情から何かを読みとることは出来なかった。
と、二人の神を眺めていると、唐突に真次は思い出すことがあった。こちらは、ちゃんとした願い事である。慌てて彼は、ごそごそと懐に手を突っ込んだ。
「どうした?」
「い、いや、なんだ。もう一つ願いがあってだな――そっちの分の賽銭を取り出そうかと」
「こんだけ貰ってるし、よっぽど無茶なお願いでない限り聞いてあげるよ?」
「至って単純な願いだ。先生……強く……なりたいです……」
土下座しながら、彼は二柱に願う。それを見た彼女たちはお互い顔を見合わせて――
その場で神とは思えぬ、腹の底からの笑い声を響かせたのであった。
6月23日 12:35
ちょっとした解説を入れると、なんで最後大爆笑したかと言いますと。コイツは大物か? と一瞬思った人物があんまりにも俗っぽいこと言うもんだから、そのギャップでです。きっと幻想郷じゃあ、強くなりたいって願望持ってる人間は珍しくないと思うんだ。妖怪もかもしれないけど。




