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STAGE 1-3 椛の災難

お待たせしましたっ! 最新話だよ!!

6月23日 11:40



「すげー! イヌミミだ! 尻尾だ!」

「……!? 誰ですかこの人間!?」


 いきなり真次は、いろんな角度から少女を観察し始めた。当の彼女は困惑している。


「真次、なんで興奮しているのかは分かんないけどさ、落ち着いて」

「おっと、悪ぃ悪ぃ。初対面なのにちと失礼だったかな?」

「ちょっとどころではなく、かなり失礼だと思います!」


 呼び出された上に、初対面の人間にじろじろと見られた彼女は、露骨に機嫌を悪くした。一方の真次は上機嫌である


「いやぁ、文の羽も印象的だったが、やっぱりケモミミと尻尾ってなるといよいよ異世界じみてるよな! にとりの光学迷彩もびっくりしたが」

「あなたは何を言って……」

「椛、文々。新聞は読んだ? この人はそこに載ってた、『外来の魔法使い』だよ」


 何が何だかわからない彼女に、にとりは助け舟を出した。……どうやらこの少女は、椛という名前らしい。


「なるほど、それで珍しがってたのですか。それで? その人間とにとりさんが私に何の用です?」


 やや棘のある口調で、椛は話す。それを察したのか真次は、にとりに耳打ちした。


「……なあ、そんなにまずかったか? 俺の態度」

「椛は天狗の中でもまじめな方だからね。哨戒任務中だったのもあって、機嫌悪くしたみたいだね……」

「ほう、ならそれを利用させてもらうとしよう」


 人の悪い笑み……と言うより、いたずらを仕掛ける子供のような笑みを真次は浮かべ、改めて椛と真次は向かい合う。


「文々。新聞は読んだんだよな? その上で話させてもらうが、大丈夫か?」

「まぁ、全部読みましたから問題ありませんが……確か、西本 真次 と言う名前でしたね。あなたは」

「その通り。外来の医者だ。現在俺は、守矢神社に行きたい。だが、ここから正規ルートに戻るより、天狗の縄張りを突っ切った方が早いとにとりは言っている。そこで――」

「椛が一緒に同行してあげれば、客人として通るでしょ? だから、椛を呼んだんだ」


 真次の説明の途中で、にとりが補足した。しかし、椛の顔は渋い。


「哨戒任務中なのですが……余計なことを押し付けないでくださいにとりさん」


 いかにも面倒だと言わんばかりに、少女はげんなりとした口調で話す。

 ところが、真次はこの答えを想定していたのか、すぐにこう言った。


「ふむ、面倒に思うのはわかるが、俺を放置する方が余計に面倒なことになると思うぜ?」

「どういう意味です?」

「縄張りなんだからよそ者にうろつかれるのは面白くないわけだよな。そして、椛が拒否したところで、俺がここで最短ルートを諦めないとは限らない。となると、椛はその可能性を知ってたのに放置したことになるぞ?」

「む……それは……まぁ……」


 椛は反論が出来なかった。確かにここで立ち去れば、真次は取り残されるが、そこで彼が強行突破を選んだ場合、以前巫女が乗り込んだ時と同じような騒ぎになってしまうかもしれない。そして、あとで尋問か何かでこのやりとりを真次が話せば、椛が責任を取らされかねない状態になってしまう。


「それに哨戒任務といったな? 異常がないように見張る任務のことだと思うが――ここから守矢神社付近のルートを見はるついでたと思えばいいんじゃないか? おまけで話し相手もついてくると考えればいい。普通に監視するより、暇しないと思うんだが」

「あなたが、魅力的な話ができるとは思えませんが?」

「医者は患者と話合わせるためにいろいろ知識あったりするんだぜ? それに、俺のいた世界の話に全く興味がないと?」


 そこまで真次が言うと、椛は一つ、ため息をついた。


「呼び出しを無視しなかった時点で、あなたの見はりは確定ですか」

「そういうこった。面倒ならさっさとやろうぜ。俺も寄り道で時間喰ったし、早めに守矢神社に行きてぇ。よろしく頼むぜ~椛ちゃん」

「ちゃんづけはやめてください。呼び捨てでいいですから」


 げんなりとしながら、椛が諦めたようにぼそぼそと言った。

 その場を去ろうとする真次だったが、最後にちらりと振り返る。


「そんじゃにとり、リボルバー壊すなよ」

「わかってるって! 椛も、守矢神社からここまでの帰りも一緒に居てあげてね!」

「……今日は厄日です。あとで雛さんに祓って貰いましょう」


 二人はにとりの秘密基地を出て、守矢神社へと向かう。

 その中で通信機だけが、耳障りなノイズと、ときおり聞こえる女性の啜り泣きのような声だけが響いていた……



6月23日 11:47


これで無事、真次君は守矢神社に行けるようになりました。

思ったより時間かかりましたが、これから例の呪いの正体を探ります。

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