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STAGE 1-1 妖怪の山の手前で

思ったより長くなってしまった。

それと、PV4万、ユニーク1万ありがとうございます!

6月23日 10:36



「こりゃやべぇ……」


 再び出現した妖精を見て、慌てて身を隠しながら真次は呟いた。

 かれこれ一時間以上が経過しているが、一向に守矢神社は見えてこない。

 それもそのはず。異変のせいで妖精は活性化し、次々と真次に襲いかかってくる。空を飛べば目立ってしまうからか、しょっちゅう妖精に絡まれた。初めはその度に撃墜していたのだが、このままでは霊力切れしかねないと、物陰に隠れられる地上へと逃げたのである。

それで、身を隠しながら蛇行していたら――大体の向きぐらいしか、わからなくなってしまった。

向こうの世界と違って、しょっちゅう標識が置いてある訳ではない。しかも、似たような木々は生い茂る地上は、人を迷わせるには十分だ。幸い真次は、最後は田舎の病院に勤めていたおかげで、方向ぐらいはなんとかわかる。だから、おおよその方向だけ合わせて、現在は妖怪の山に向かっているところだ。


(これ、冗談抜きでマズイよな……)


 間違いなく、真次は規定のルートを外れている。となると、天狗を刺激してしまうのは避けられない。最初に会った巡視している天狗が、話の通じる相手であることを祈るしかなさそうだ。


「!!」

「だああ! 急に物陰から出てくんじゃねぇ!!」


 ばったり木陰から出てきた妖精に向け、右手に握っていたリボルバーを向け、発砲。実弾並みの早さを誇る霊弾は、精確に相手を捉え撃墜した。


(ゲーセン通いしてたおかげか、ほぼ命中するな……)


 外の世界の、ガンシューティング・ゲームも真次は嗜んでいた。実際の銃もアメリカで撃ったことがある。それで標準(エイム)が鍛えられたのかもしれない。こうした急な飛び出しにも、素早く狙った場所に銃口を向けることができた。意外と彼と銃による攻撃の噛み合わせも、相性がいいらしい。真次としては、このスタイルをできれば貫いていきたいとさえ思い始めている。

 鬱葱とした森を歩いていくと、流水の音が聞こえてきた。よく見ると正面の視界がやや開けている。警戒しながら近付くと、川が流れていた。


「ふむ……方向もあってるな……」


 上流はちょうど、妖怪の山方面である。これを辿っていけば山までは入れるだろう。最も、守矢神社への到着が、いつになるかはわからないが。

 小石だらけで足場が悪いので、ここからはほんの少しだけ浮いて移動することにした。ふわふわと浮いたまま、真次は上流を目指していく。


「いやぁ……ホント、空飛べるって便利だな」


 このまま上流に行けば、もっと嫌な地形になるだろう。むき出しの岩場や滝だってあるかもしれない。それらを楽に飛び越えていけるのは、普通に歩いていくのに比べ遥かに早い。

 と、その時であった。真次が妙な感覚に見舞われたのは。

 普段の直感ではない。なんというか、誰かからの視線を感じる。

 しかし、辺りを見渡しても誰もいない。上空も雲ひとつない空が広がっていて、時折妖精の影が見えるぐらいで、こちらを注視している人物などいなさそうである。

 森林のどこかから見ているのかもと考えたが、それでは視界が悪過ぎる。妖怪の中に、極端に視力がいいのがいる可能性も捨てきれないが、なんとなく違う気がする。もっとこう、身近なところから見られてる気がするのだ。


「……神経が過敏になってるだけか?」


 ポツンとひとりごとを洩らしてみるも、何の反応もない。しかし、明らかに何かの気配を感じた真次は――なんとなく何も見えない場所へと、左手の拳銃を向けてみる。すると……


「ひゅい!? 撃たないで! 撃たないで!!」


 明らかに動揺した声が、河原に響いた。何かがいるようだが、敵対する気はなさそうだ。が、念には念を、とりあえず銃を向けたまま真次は話す。


「そうしてほしかったら、姿を見えるようにしてくれ。見えないままこそこそのぞき見なんざ、趣味が悪いぞ?」

「ああ、うん。ちょっと待ってね」


 そうして待っていると、なにもない空間からいきなり青髪の少女が現れた。能力か何かだろうか?


「にしても、すごいね~なんでわかったの?」

「なんつーか、素人でもわかるぐらい気配ダダ洩れだったからだな」

「あー……そっちの方は練習してないからね私。博麗の巫女だけじゃなく、普通の人にもばれちゃうのか……でも、気配まで遮断する迷彩は難しいな~」


 出てきて早々、唸る謎の少女。銃を向けられた当初は慌ててたのに、すっかり考え事に夢中で水上をふらふらと歩きまわる。……警戒する気も失せた真次は、ゆっくりと銃を下ろした。


「で、なんで俺のこと見てたんだ?」

「盟友である人間が、傷つく所は見たくないと思って」

「盟友? 誰と誰が?」

「人間と河童だよ!」


 真次は目をぱちくりとさせた。ここに人間は一人しかいないので、自動的に彼女は河童ということになる。


「お前河童なのかよ!? ずいぶんイメージと違うな!」

「そう? みんなこんなもんだよ」

「ん? でも河童なら姿消せるのっておかしいよな? そんな特性なかったはずだぞ」

「ああこれ? 自作の光学迷彩だよ~びっくりした?」

「オーバーテクノロジーじゃねぇか! しかも作れるのかよ!?」


 さらりととんでもないことを言いだす河童に、驚愕する真次。


「私自慢の発明品だからね。他にものびーるアームとか色々あるよ」

「他にもあるのか……で、話を本筋に戻すが、俺が痛い目に遭うってどういうことだ?」

「ああ、そのことなんだけど、このまま行くと、天狗の縄張りに思いっきり突っ込んじゃうと思って。これ以上進むのなら、襲撃して追い払おうかなぁって」

「いや、普通に話せばええやん」

「話が通じないかもしれないじゃん」


 大真面目で話す河童の少女。幻想郷は弾幕ゴッコによる解決が主流と輝夜から聞いていたが、ここまでとは思わなかった。話しあいでのトラブル解消は少ないらしい。


「……まぁ、俺はドンパチやる気はないから安心しな。少なくても戦闘にはならん」

「えっ、じゃあ引き返してくれるの?」

「そういうわけにもいかん。実は守矢神社に用があってきたんだが……空を飛ぶのが妖精どものせいで煩わしくなったから、地上から行こうとして迷った」

「あー……そっか。まいったね。こっからなら正規の道に戻るより、真っ直ぐ守矢神社に行った方が近いよ。でも私は手が離せないからな~……」

「理由を聞いてもいいか?」


 真次が尋ねると、少女は気まずそうに答えた。


「……すっごく私用で悪いんだけどさ、実は私の所で組み立てた通信機があって。それが今までにない電波を拾ったんだよね。それが気になって仕方ないんだ」

「通信機? そんなもの作ってどうすんだ。相手がいないだろう?」


 真次が聞き返す。少なくても、真次の携帯電話ではない。それは現世において来てしまっている。


「いやぁ、興味本位で作ってみちゃった。いくつか壊れたのを組み合わせて作ったんだ。で、えっと……」

「西本 真次だ。真次でいい」

「あ、そういや私も名乗ってなかったね。私はにとり、河城 にとりだよ」


 そこで、にとりが首を傾げた。


「あれ? なんで通信機のことわかったの? 村の人だったらわからないよね?」

「そりゃ、外から来たからな。通信機ぐらいわかる」

「あっ! もしかして今朝、文々。新聞に載ってた『外来の魔法使い』!?」


 思わずこけそうになる真次。どうやらこちらのあだ名が印象に残ってしまったらしい。話さなきゃよかったと後悔しつつ、真次は誤りを訂正する。


「俺は普通の人間だ。魔法使いなんかじゃない」

「そう書いてあったね。なんでも、そんなあだ名ができるぐらい、すごい医者なんだって?」

「勝手についたあだ名だ。俺は気に入ってない」

「ふーん……でもあだ名ないよりいいじゃない。きっと認められてたんだよ」


 そうなのだろうかと、真次は首を傾げる。むしろ自分を煙たく思っていた人間の方が多かった気がするのだが……そのことを告げてもややこしくなるだけだと判断。話を元に戻すことにする。


「まぁ、そのことは置いといて、通信機のことだが俺も気になるな。電波出せる道具なんて、外の世界の道具ぐらいだろうし」

「そうなんだよね~仲間内で通信機使っているのもいなかったし、間違いなく新しい電波なんだ。真次ってそういうの詳しい?」

「専門にしてた人間には劣るが、普通に使う分にはわかるかもしれねぇな」

「それならさ、ちょっと私の研究所に寄っていかない? そこまでなら一緒に案内できるし」


 ありがたい提案ではあるのだが、真次は少々迷った。なぜなら、途中まではいいものの、そこから先は問題が発生するからである。


「研究所まで一緒に行くのはいいが、そっから先はどうするんだ? 許可のない人間がうろついちゃまずいだろ?」

「私の知り合いの白狼天狗がいるから、その子に案内させるよ。それならいいでしょ?」


 それなら問題ないと、真次は納得する。思わぬところに渡り船と、真次は喜んで、にとり案内で彼女の研究所へと向かった。



6月23日 10:52


 という訳で、前作では出番のなかったにとり登場。真次が光学迷彩を見破れたのは、直観力ではなく、にとりの側が気配を消せてないからです。原作では魔理沙にも見破られてますしね。

 

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2019/12/01 17:09 名も無き最強のbot
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